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カンショー!  作者: 安城要
79/267

モデル

今日は。

七海と早希だけの美術準備室ぶしつ

あと三十分待って誰も来なければ帰ろうかー、と頷き合った後、それぞれ適当に絵の本なんかを眺めていた二人の、早希の方が突然顔を上げて七海を見た。

「ねえ、サキちゃん」

「ん、どした?」

「今までで、一番沢山絵に描かれたモデルってだれだろ?」

は?

瞬きして早希を見つめた後、七海は目だけで天井を見上げた。

そして直ぐに早希を向き直って頷く。

「やっぱ、キリストさんじゃねえか?だって聖書って世界一売れた本じゃなかったっけ?」

「本の売れ行きと絵に描かれるのとは違うだろ?その説でいくなら、中国で一番人気のモデルは毛沢東かよ」

「中国で一番売れているのは毛沢東語録じゃなくってMANGAだろ?」

「単体の本とジャンルを混同するなよ。それとそういう話してんじゃねえよ」

「んじゃあ一番描かれたモデルは両〇勘〇か?二百巻も出てるんだからすごい量だろ?」

「だからそこ離れろって。んじゃあ・・そう!こうしよう。世界的に名を知られてる程度の“画家”が描いてるのでだ。あと、ルネサンス以降に限定して、だ。これならどうだ?」

これならどうだ、って言われても、と七海は腕を組んだ。

「普通に考えれば、やっぱキリストさんとマリアさんが二強じゃねえか。やっぱ宗教関係者は強いよな」

「けどプロテスタントは偶像崇拝しないんだろ?ルネサンス以降となると宗教改革までどんなに長く見積もっても200年程度じゃんか。そこで分離して、あとはカソリック教会側しか宗教画を描いて行ってないわけじゃないか。その段で行けば、プロテスタントの国ではそれ以降、キリストさんとマリアさんがほとんど描かれず、その分別のモデルが人気で描かれまくったんじゃねえか?」

「描かれまくって、ってのはどうかとは思うよ」

ほかのモデルか、と腕を組んだままの七海が首を捻った。

「一応、一位二位はキリさんマリさんは間違いないと思うけど、三位はやっぱビィーナスさんかなあ。エロ画描くときには、とりあえずビィーナスさんてことにしてたんだろ?」

「エロ画言うなよ」

う~ん、と二人は腕を組んだ。

「同時代の日本なら簡単なんだがな。間違いなく富士山だろ?」

「自然の風景をモデルと呼ぶか?」

うむむ、と腕を組んだまま二人は同時に首を捻った。

「こういう時は実在の人間は不利だよな。いくらナルシストでドンドン自分の肖像画を描かせたような人でも人間の一生には限りがあるから限度ってものがあるしなあ」

「そだね。歴史上の偉人を描くにしてもそもそも特定のだれかを描く絵を注文しまくってくれる人なんてそうそうはいないだろうし。当時は注文受けてから描いてたんだろ?」

「画題にも流行り廃りがあったはあったらしいけどね、一時にがーっと描かれても長続きしなかったろうしなあ」

突然部室の扉が開いた。

「悪いとは思いましたが」

ニヤリと笑いながら賢人が戸口に姿を現わした。

「話は全て廊下で聞かせていただきました」

二つのため息が美術準備室に響き渡った。

「出たよ」

「適当に時間潰したしもう帰ろうと思っていたのに」

はっはっはっ、と扉を閉めながら部室に入った賢人が机の上に鞄を置いて二人を順に見た。

「面白そうな話ですねぇ」

「いえ、全然面白くはありません」

「てか、私ら今から帰るところなんで」

まあまあと二人の肩を押すようにして元の椅子に座らせた賢人は自らも空いた椅子に腰かけると、にっこりと二人を見た。

「先ほどのお話ですが、第1位に心当たりがあります」

え、と七海は瞬きしながら賢人見つめた。

「1位、キリさんかマリさんじゃないんですか?」

「違うと思います。おそらく1位は」

1位は?

「自分、です」

は?

賢人はしたり顔で嬉しそうに二人に向かって両手を広げて見せた。

「自画像ですよ」

どうです、と言わんばかりのドヤ顔の賢人をしばらくほけっと眺めた二人は、顔を見合わせて頷くと、ちょっと失礼しますと賢人に背を向け、部屋の隅で壁の方を向いてしゃがむと顔を寄せた。

(つまんねえ男だな、そういうことを言ってるんじゃねえよ、空気読めよ)

(あれってあれか?何が一番旨いか美味しい食い物の話で盛り上がってる時に、料理は塩加減次第で美味くも不味くもなるので一番おいしい食べ物は塩です、とかほざくおばはんの真似か?)

「あのう、聞こえてるんですけど?」

はい、と二人は同時に振り返った。

「むしろ聞こえるように言っているのですが?」

「それが何か?」




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