覚えられない子はメモを取る
こんばんは、シルビアです。
今日はまさかのお寝坊さんでした。 転移魔法が無ければ確実に遅刻だったはずですが、何食わぬ顔をして待ち合わせ場所に行き、朝の挨拶をしているエイジア様は中々の図太さです。
馬車に乗り込み出発しましたが、エイジア様はロンダさんと商売の話しをし始めましたが、馬車の料金ってまだ払ってないですよね? 出発するときにお支払いって話しだったはずなんですが、夕べに支払っておいたのでしょうか……
馬車で揺られているとなんでこんなに眠くなるんでしょう。 お昼ごはんも食べてゴトゴトと荷馬車が揺られていると目蓋が重くなるんですよね、これは幌で景色が見えないのが悪いんです、きっと! ということなので、エイジア様が難しい話しをしているのを横目にちょっとだけ目を閉じて大人しくしてましょう。 お話の邪魔しちゃいけませんしね?
馬車移動も2日目になり、夕べ摘んでおいた薬草をすり潰すようにと言われました。
魔力循環ですり鉢と薬草に魔力を通すように言われましたが、なんで薬草まで魔力循環をするのでしょう? これも特訓なのでしょうか、とりあえず魔力循環で魔力を薬草まで通して、ん、なかなか難しいですがなんとかなりました。 後はこの状態ですり潰すのですね……くぅん、かなり辛いです。 魔力を流し込んでるのですが、油断するとすぐに散り散りになってしまいます。なんとかして魔力を留めてめて置かないとドンドンMPが無くなっていってます。
はっ、これは魔力を武器とかに留めて貯める特訓なのですね! がんばります!
さて、気絶しているシルビアに魔力を送り込んで、MPを回復させてから叩き起こす。
「おーい、起きろー、寝るとイタズラされるぞー」
ぷにぷにのほっぺたを痛くない程度につまみ、横に伸ばしてイタズラをする。
「ふに、はひひへへふんでふか、ひゃめへひゅたさい」
「おはよー、気絶しちゃダメじゃないか、MPが無くなる前に止めるとかしないと、戦闘中だったら死んじゃうんだよ?」
「はーい」
摘まれたほっぺたを撫でながら、もう一度すり鉢に向かって魔力を送り込みはじめる。
さて、これで出来上がったものは、私が作ったものとどれだけ差がでるだろう? 私の魔核を移植したせいで簡易版とはいえ錬金術を覚えてしまっているから、一般人としてカウントできないのだが……そういえば、この簡易版の錬金術だと何がどこまで出来るんだろう?
前に手足を錬成できたから、傷口を塞ぐとかは問題なくできるとは思うんだが、やり方を教えてないから何ができるかなんて解らないか……やることが沢山あるな、というかなんかやる事を端から忘れているような気が……いや、忘れているんだろうな、メモ取ってやる事リストを作っておこう。
いまさらながらに記憶力が悪いことを反省し、紙にやる事をメモしていく。
・レベル上げしたい
・シルビアの装備を作る
・薬の製造をする。
・シルビアの簡易錬金術を調べて錬金術を教える。
・精霊魔法を覚える。
・今後のスキルやステータスの方向性を決める。(自分とシルビアの)
とりあえず今思いつくのはこのぐらいだろうか、思い出したらメモをしていこう。
レベル上げはやれる時にやるとして、装備作成だが、まだ必要分の結晶が貯まってないので保留だ。 こんなことなら日ごろから結晶を貯めておけばよかったと、小学生レベルの後悔をするが、まぁ、今後の課題としようメモメモ……
・結晶は暇なときに造って貯めておく。
薬の製造は、自分の使う分は自分で作って補充するって所でいいかな、錬金術があるからMP回復薬は必要ないし、部位欠損が直せるレベルの再生薬とかが作れると良いんだけど、ルールブックに載っている完全回復薬がそれに該当すると思うのだが、私の薬学レベルでは製法がわからないので、薬学のレベルを上げるかレシピを手に入れるしかないので、これもまた保留だ。
シルビアの錬金術は、ここで問診と実験することじゃないので寮に帰ってからとして、精霊魔法は学校の授業でSPを使わずに覚えたいんだが、無理ならSPを払って覚えよう。
後は、今後の方針に付いてだが……
「なぁ、シルビアは今後どんな感じで戦いたいとか、何か作ってみたいとか希望はあるか?」
「はぁ、んー、エイジア様みたいに魔法をバーンと使ってみたいですし、剣も使ってみたいです。 後は美味しいご飯を作れるようになりたいです」
どうやらシルビアは夢一杯のようだが、希望を聞くと魔法戦士になるしかない。 まぁ、レベル上限がいくつかわからないが、30までは確実にあるとするとSP的には問題はない。
どっちにしても、レベル上げが最優先ということになるのだろうか、私的には平穏無事に15才まで学園で生活できれば御の字なので、何が何でもレベル上げをしないといけないとは思っていないのだ。
「そうか、それじゃ、魔法を使う特訓としてその薬草をすり潰す作業をしっかりとやらないとな?」
「はい、でもこれ凄いMP食うんですけど、MPが回復するのを待ってやってたら一日掛かりになりそうなんですが……」
「今シルビアのMPは139だから、30分もあれば回復するだろ? まぁ瞑想スキルが無いから効率が良いとはいえないけど、目を瞑って大人しくしてればそれぐらいで回復するんだから、まぁ2、3時間もあれば楽につくれるんじゃないか?」
「ふぇ? そんなに早く回復しないですよ? MP全部使い切ったら2、3時間ぐらい掛かりますよ、寝ればもうちょっと早く回復するってシュリさん達が言ってましたよ」
はて、そんな回復量じゃ戦闘なんてやってられないとは思うのだが、シュリ達が言っていたのならば確かめる必要がある。
とりあえず、シルビアのステータスを開いてMP量をみてみる。
名前 :シルビア
レベル:6
HP :186
MP :87/139
「ちょっと手を休めて目を閉じて安静にしててくれ」
「はーい」
懐中時計を取り出して回復速度を量ってみたのだが、驚くほどに回復速度が遅い。 一瞬ステータスがリアルタイムに更新されないのかと疑ったほどだ。 そして解ったのだが、おおよそ1分で1MPの回復量のようだ。
人間の能力限界で計算して120MPがMAXだとすると、完全回復まで2時間掛かるって事になる。
プレイヤーとNPCの差なのだろうか、プレイヤーの回復量はルールブックに平常で10秒1MPと明記されているし、NPCもそれに準じていると思ったのだが違うのだろうか、確かにプレイヤー=超人という設定ではあるのだが、NPCの回復量に付いてまではルールブックには書かれていない、これがゲームが現実になってしまったために起こったことなのだろうか、プレイヤー(超人)>NPC(一般人)という図式で、明記されていなくてもプレイヤーよりも能力などが劣るものとして、辻褄あわせが成されているのかもしれない。
しかし、この回復速度だとMP量がどれほど合っても、商売にできるほどMPポーションが量産できないということになってしまう。
製造方法を買い取ってもらっても、これでは大した金額にはならないということになるのだが……あ、同乗者代金払ってない、ポーション売ってそのお金で払う予定だったのに、あの夜にこの売り買いの話しが出てすっかり忘れてた……
「しまったなぁ、ロンダさんは覚えて居るだろうけど、この話しがあるから言ってこなかったのかな……」
とりあえず、話しをしないとと思って仕切り布を捲って御者台に顔を出す。
「あのー、ロンダさん、この旅の費用を払うの忘れてたんですが……」
「ん、ああ、そうでしたね、私もすっかり忘れてましたよ」
ロンダさんは一瞬驚いたような顔をしたが、すぐに表情を戻すとにこやかに忘れてたと言っているが、本当に忘れていたのか私が忘れていたことを驚いたのかは解らなかった。
「それで、申し訳ないのですが、このポーションを商業ギルドに売って御代を稼ごうと思ってたので、現金を用意できていないのですが……」
「なるほど、それでしたら、そのポーション現物での支払いでもかまいませんが、どうしましょう? ギルドに売ってその後でお支払いでもかまいませんよ」
「そうですか、でしたら現物払いでお願いします。 借金があるって言うのは性に合いませんので……ところで、15本で足りますか?」
「そうですね、回復量で考えて販売価格は1本3大銀貨と言ったところでしょうか、買取価格は劣化していない状態なので、半値の15銀貨で10本分でどうでしょうか?」
「じゃ、それでお願いします」
新種だから相場もなにもあったものじゃないので、旅費さえなんとかなれば良いかと思い承諾する。 実際、製造に掛かるコストが正確に分かっていないので、回復量で相場と照らし合わせた結果の金額なので、最低でもこのぐらいではないかという金額であった。
「あと、できましたら、残りの5本も売っていただきたいのですが、いかがでしょうか?」
「かまいませんよ、あと、売るときはしばらくの間はロンダさんにご相談させていただいてもよろしいですか?」
「はい、ぜひお願いします」
まぁ、当たり前の話だろう、私がポーションを路銀稼ぎに売るのは、これから販売を考えているロンダさんには困ったことだろう。 なので当面はロンダさんに売ることにしよう。
2、3軽く話しをして荷台のほうへもどると、すり鉢を抱えて寝ているシルビアが居た。
そして、三日目の夜の野営でのことだった。 食事も終えてのんびりと談話していると不意に護衛で来ているユーリが回りを気にし始めた。 次いで他の護衛やロンダさんも会話を続けながらも、周囲を気にし始めたところで漸く私も、この街道で盗賊が出ることを思い出した。 この3日があまりにも穏やかだったため、つい先日盗賊にこの街道で襲われたことを失念していたのだ。
「さて! そろそろ遅い時間ですしエイジア様は荷馬車でお休みください。 私達は火の始末をしてから寝ますので、先にどうぞ」
私に聞かせるには少しだけ大きな声で、にこやかに膝をひとつ叩いて立ち上がり、他の人たちには荷馬車の点検をするように声を掛ける。
「それじゃ、私達は先に休ませてもらいますねー」
子供らしくみえるように、いつもよりも幼い感じの声をだしてシルビアの手を引いて馬車に乗り込み、カーテンを閉めて中にはいる。
「それじゃ、エイジア様、おやすみなさいですぅー……むにゃむにゃ」
1人空気を読まない子が居ました。 とりあえず目を覚まさせるために、シルビアのほっぺたを摘み言い聞かせる。
「シルビア、どうやら敵が来ているみたいなので、静かにしてなさい」
「ふぇ、ほっへは、ひはいれふ」
ようやく理解したのか、すんすんと鼻を鳴らして様子をうかがっているシルビアを横目に、偽装を使いサーチの魔法を使用する。
「サーチ発動、拡大5」
自分と敵性の位置を表示する。 北側に30m先に2体。 うん、相変わらずだが人なのか魔物なのか動物なのかすら分からないが、害意があることは確かなので用意だけはしておきたい。
「シルビア、一応手甲とか装備だけはしておいて、敵は2匹だから護衛の人でなんとでもなるとおもうけど、人……盗賊だったら偵察だろうから、こっちを制圧できる数を揃えてくると思うし」
「はい、何時でも戦えます」
さて、手持ちのスペックで奇襲に対応するには、正攻法ではなかなか厳しい、もちろん護衛を当てにして放置しても良いのだが、自分や知り合いの命を掛け金にそんな博打は打てないので、ゲーム時代には突っ込みを入れなかったルールの粗をつついたものを使ってみよう。 本当はこんなことになる前に実験をしておけばよかったのだが、準備不足と不用意が標準装備な私には、ぶっつけ本番が王道です。
付与魔法で作る魔法を込めたカードには、付与術士であれば発動に条件を付けて発動できるようになる。 これは他者に渡したり、他者の武器に付与を行った魔法を発動させるキーワードや特定条件を指定するためにあるルールで、HP回復のカードは装備者のHPが一定以下になったら発動するなどの指定ができる。 つまり、内容物の魔法の特性を条件付けにできるということだ。 HPに関わる魔法なら対象のHPの増減を条件に、サーチであればサーチ範囲に敵性生物が入り込んだら発動する、ということを条件にすることができるはずなのだ。 この条件ならばほぼ発動は可能だろうと思うのだが、これに敵性生物の対象数を指定できるかどうか実験してみたいが、今回は止めておこう。
「カードエンチャント発動、拡大サーチ20m、条件:敵性生物が範囲に入ったら発動」
「カードエンチャント発動、拡大サーチ30m、条件:敵性生物が範囲に入ったら発動」
2枚製造すると、手に持った瞬間1枚が輝いて魔法を発動させた。そして、先ほどの30m北に居た2体を再表示する。
「よし、成功だ。 20mまで近づかれてからだと意味があるのか分からないけど、奇襲を受けるよりはマシだろう」
お読みいただきありがとうございます。
かなり間開きましたが、次はなるべく早く書きます。
ごめんなさい




