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回復薬


 こんばんは、シルビアです。


 今日はエイジア様に怒られて泣いてしまいました。 罰としてしばらく串焼き禁止になってしまいましたが、盗賊を1人倒したご褒美に串焼きを買ってもらいました……罰になっているのかいないのか分かりませんが、許してもらえたということなのでしょう。 ホッとしたらまた泣いてしまいましたが、エイジア様がとても優しかったので涙が止まりませんでした。 串焼きはしっかり食べましたけどね。


 そういえば、ユーリとか言う冒険者の人と盗賊の話をしていました。 良く分かりませんでしたが、あの3人以外にも盗賊がいるみたいです。 と、いうことは倒したら串焼きがもっと……って、怒られたばかりなのにダメですね。 でも、許可がでたら串焼きのため、エイジア様のためがんばりましょう。





 商業ギルドのホールは冒険者ギルドに比べてとても静かで、騒いだり暴れたりするやつは居ないようだ。 

 今いる人たちも、身なりは清潔を保っており立ち話をしている人は少なく、隣接している酒場で商談を行っているひとが大半だ。

 とりあえず受け付けへ行って、明日のキャラバンに付いて聞いてみることにした。


「すみません、明日出発の商隊でケルベル山脈方面へ行く方は居ませんか?」

「ん、ああ、ケルベル山脈の手前にあるロトンの町へ行く商隊なら裏の荷揚げ場で積荷を移し変えてるよ、何か用があるならそっちへ回って聞いてみな」


 そう言って受付の男は荷揚げ場に繋がっている回廊を指差して教えてくれる。




 回廊を通って裏に回るとそこは、体育館ぐらいの天井の高いスペースがあり、横を流れる運河に停めてある船から荷物を運び込んだりと、まるで市場のようなにぎやかさだ。

 その一画に人足達に積荷の仕分けを指示している人が居たので、そっちで話を聞いてみよう。


「すみません、明日ロトンへ向かう商隊の方と話しがしたいのですが、どちらにいらっしゃるか分かりませんか?」

「ん? 私達だが、子供がこんなところに何のようだ?」

「はじめまして、私達はエウレカ学園の学生で、エイジアと申します。 隣は従者のシルビアです。 実はロトンの先のケルベル山脈麓の村まで行きたいのですが、生憎と馬車が出ていないので、厚かましいとは思ったのですが、便乗させていただけたらと思いまして、お願いに来ました」

「あー、そうか……乗せてやりたくはあるんだが、なにぶん安全とはいえない行程だから子供を乗せていくわけには行かないんだよ」

「一応私達も冒険者として登録もしてありますので、自分の身は自分で守りますのでなんとかお願いできませんでしょうか? もちろん費用も可能なかぎりお支払いをいたしますが……」


 内心お財布の中身を計算してみたのだが、大銀貨が3枚ぐらいしかない、冒険者ギルドで結界の魔力チャージ分を足したとしても大銀貨6枚といったところだ、ロトンまで馬車で4日として2人分の旅費としてはアウトな気がするが、足りなければ薬草でも摘んできてポーションでも作って売ろう。 そのために機材も買ったのだし、機材も日の目をみたいと思っているだろう。


「ルカス、なにかあったのか?」

「あ、親方、この子達が商隊に便乗してロトンまで連れて行って欲しいって言ってるんですよ。 危ないからダメだって言ってるんですけどね」


 後ろから声を掛けられ、親方と呼ばれた人の方を振り向くとそこには、見知った人が立っていた。 そう、この世界で始めて合った人、商人のロンダさんだった。


「ごぶさたしてます」

「おお、これはこれは、エイジア様、いつ王都へいらしたのです?」

「4日ほど前に着きました。 今はエウレカ学園の学生をしています。 こっちは従者のシルビアです、よろしくお願いします」


 分かれてからのことを掻い摘んで話し、現在は学生になってお小遣い稼ぎに冒険者ギルドで依頼を受けたが、その依頼でケルベル山脈へ行かなくてはならない話をして、なんとか便乗できないかお願いしてみる。


「なるほど、そうでしたか、それで、ロトンまで……そうですね、こちらも護衛を雇っての旅なので、今回は商談とさせていただきましょう。 2人分で4日の行程なので金貨1枚でいかがでしょうか? もちろん旅の安全と食住は提供させていただきますが」

「はい、是非……と言いたいところなのですが、金貨1枚となると手持ちが足りないので明日の出発時に支払いでもかまいませんか?」

「はい、かまいませんよ、出発は明日の朝6時ですので遅れずにここへお越しください」


 運が良かった。 ロンダさんがこの商隊のリーダーだったこともだが、たまたまここに来たこともだ。 これでなんとかなりそうだが、明日までに金貨1枚を捻出しなくてはならない。 時間が午後3時ごろか、街道をでて少し行った所に草原があったので、あそこになら薬草になりそうなものがありそうだ。 日暮れまでに摘めるだけ採取して今夜中に調合をしてギルドに売り払ってお金を作るしかない。


 急いで採取に行こう。 ロンダに礼を言って寮まで大急ぎで戻って部屋から草原までテレポートで移動する。


「シルビア、とりあえず大急ぎでこの辺にあるこれと同じ草を摘んでほしい」

「はい、この葉っぱの奴ですね。 くんくん、大丈夫です匂いは覚えました」

「え、いや、においじゃなくて葉っぱの形とかじゃ……」

「くぅん?」


 鼻を鳴らしたような、甘えた声を出して小首を傾げている。 わんこは何でこんなしぐさが可愛いんだろう。


「まぁ、いいか、とりあえず集めてこの籠に入れていって、あとで宿で仕分けて調合しよう」

「はいぃ、とってくるですよ」


 私はいつもの様に能力を使って採取を続ける、そうして日が暮れるまで3時間ほど採取を続けた結果、回復効果を持つ音鳴り草は40本、それとは別に風見草が2つ取れた。 そして、シルビアが取ってきた音鳴り草は8本と蜜花草が32本ほど……はて、音鳴り草を取るように見本を見せたはずなのに、なんで葉の形状も違う草というか花を取ってくるのだろう。 まぁ、とりあえず戻って調合をしよう。


「よし、もう暗くなってきてるから終了しよう。とりあえず商業区でポーション瓶か素材を買って帰ろう」

「はい」


 テレポートで外門付近に飛んで検問を受けて市街に入る。 市街は夕闇に包まれて酒場などから漏れる光と喧騒、町に焚かれている篝火、屋台からは良い匂いが漂い、なぜかお祭りを思わせるような雰囲気になっている。 この王都がどれだけ平和を謳歌しているかが分かる光景だ。だが、町の外では盗賊やモンスターが跋扈している世界、死が身近にあるが故に人々は日常を楽しんでいるのだろうか……

 なんて、そんなことを考えている場合じゃなかった。 大急ぎで素材を揃えてお金を稼がないと、色んな信用を失ってしまう。 ギルドからの信用もそうだが、ロンダさんからの信用も今回のことには掛かってきている。

 ふらふらっと屋台に吸い寄せられているシルビアの手を掴んで、雑貨屋へ向かう、ガラス質のものなら何だって良い、できればポーション瓶が助かるのだけど、資金が3大銀貨しか残ってないので、贅沢は言っていられない。




 学生寮に戻って食事をしてから部屋にもどり、今日の成果を並べて見る。


 音鳴り草 48本

 風見草   2本

 蜜花草  32本

 砂袋   5kg

 ポーション瓶10本

 残金   1大銀貨

以上


 ポーション瓶は1本1銀貨だった。 基本的にポーション瓶は再利用するもので、初期費用として掛かる値段だから、高くても仕方が無いそうだ。 ポーションを買うときはポーション瓶(空)と交換で値引きしてもらえるそうだ。


 さて、まずは回復薬の製造だが、薬師は機材と自身の魔力でこれを生成する。

 製造工程はこんな感じだ。


①音鳴り草を乾燥させる。

②乳鉢で粉にする。

③水に溶かして加熱する。

④灰汁を取ってから冷ます。

⑤漉して瓶に移す。


以上が薬師の作る行程なのだが、この手順で①の乾燥をさせずに生で作ると回復効果は多少上がるが、消費期限が5日前後になるらしい。

 冒険者ギルドの初心者講習で習った話しなのだが、この行程なら薬師じゃなくてもできる程度なので、冒険者の基礎知識として教えてもらえるが、当然回復効果は薬師が作ったものには遠く及ばない。

 そして、薬師ならこの行程で薬草と水に自身の魔力を込めて、効果を高め消費期限を伸ばすことが出来るそうだ


 錬金術で作ると消費期限がおかしなことになるので、買ってきた機材でポーションを作ってみようと思う。 実はまだ買ってきたときのまま木箱に入れて放置している。あれからバタバタしてて、それどころじゃなかったし、旅の間にやれることでも無いとおもってずっと放置していたのだが、ようやく日の目を見る。


 さっきまで、かまって欲しそうに部屋をうろついていたシルビアだが、静かなのでチラ見したら、すでにベットで寝息を立てていた。 今日は色々あって疲れたのだろう、満腹でベットに横になったため睡魔にやられたようだ。

 よし、今のうちだ。 作業で放置し続けると突然いたずらをしてくるので、じゃまされない今のうちに調合をしてしまおう。

 

 まずは機材を並べてと、ポーションは以前に作っているので大体の予想はつく。

 音鳴り草3本で20HP、そこから倍消費で10HPずつ濃縮できるみたいだ。

 なので、5級だと24本消費して50HP回復となる、この辺りから傷口に直接掛けても直せるようになるそうだ。


 まずは、機材と薬草を置いてクリーンを掛ける。 雑菌は敵というか、薬草を水洗いもなにもしていないし、機材はいつのかも分からないものだし、綺麗にしておくのはあたりまえだろう。


 次に薬草の乾燥だが、火魔法を持っていないし、乾燥するまで待っていられないので、錬金で乾燥させてしまう。

 さてここからは魔力を込めていくのか、どれぐらいMPを使ったら良いか分からないのだが、まずは魔力循環で乳鉢と薬草に魔力を通す、そして、乳鉢で粉末になるまで粉に……粉に……して、と、ちょっと休憩、なんか、凄い疲れるんですけど、葉脈が全然粉にならない、そして、こんな作業をしながら魔力循環を通し続けるって、薬師ってどんだけハードなんだ!


 葉脈もようやく粉になったときには、MPがすでに200ぐらい減っていた。 錬金術でならこの段階ですでにポーションになっているだけのMPを使ったことになるが、まだ粉にしただけなんですが……それと気づいたんだが、一回すり鉢とかで荒く粉々にしてから乳鉢で粉にしたらいいんじゃないか、と、言うことを。


 さて、気を取り直して、煮込みましょう。 水を手鍋に入れて粉を入れて火にかける。

 こんな最中にも魔力循環で魔力を送り込む、薬師ってMPどんだけあるんだ? それとも何か間違った方法でやっているんだろうか? まぁ、出来上がったものを鑑定しないと分からないので、とにかくこのままやってみよう。


 そして、作業開始から1時間以上が経過し、ようやく完成したポーションを片手に作業台に突っ伏してしまった。

 MPはすでに枯渇寸前で、326あったMPは22になっている。 作業途中で休憩したのでその時の自然回復分があったはずだから、400MPは使っている計算になる。


______

エリクシールポーション

HP回復30

MP回復50

品質保持期間3ヶ月

CP 3

______



 ……あれ? なんか違うのができてる。

 草を3つ使って20回復が出来る予定だから、6本使った量の効果が出ているのは、良くないが置いといて、MP回復はまずい気がするけど、薬師がやっている行程でやっている以上、問題は無いはずだ。 MPを込めすぎるとこうなるのだろう、たぶん……


 まぁ、MPポーションだってある世界だし、問題ないんじゃないかな、とりあえず時間無いし残りを一気に作ってしまおう。 次はすり鉢で荒砕きしてからね……


 粉にする行程で何度か枯渇して瞑想回復を行うことになったが、とりあえず鍋に並々の量ができたのだが、瓶が10本しかないので瓶作りをしなくてはならないのだ。


 錬金術で一気に作ってしまおう。 砂袋を魔方陣に置いて砂を結合して、この粘土状の物体から不純物を取り除いて形状変化でポーション瓶にしてから、熱変化を掛けてガラス瓶に錬成して冷却する。

 都合32本分のポーション瓶が完成、そして不純物は砂鉄だったらしく、果物ナイフが1本作れる程度だが鉄のインゴットが手に入った。 


 ポーション瓶1本1銀貨なら2大銀貨相当の儲けがでないかな……


______

エリクシールポーション

HP回復30

MP回復30

品質保持期間2ヶ月

CP 2

______


 瓶詰めにしたら15本取れて、鑑定結果はこんな感じだった。 やはり行程でMPを込めすぎたのが原因でMP回復が付与されたようだ。 最初の試しよりもMPを込めて無いせいか程よく劣化している。

 さて、これがいくらで売れるかが問題だろう。 30HP回復だと7級相当なので買取価格3銀貨にはなるはずだ。そして、MP回復が付いているからそれ以上にはなるはず。


 すでに午後10時近くになってはいるのだが、明日の朝にこれを売って1金貨にならないとか、買取に時間が掛かったりした場合は問題なので、今から売りに行くとしよう。

 寝ているシルビアはそのまま寝かせておいて、書置きだけ置いて商業ギルドへ向かうことにする。





 お読みいただきありがとうございます。


 ではまた来週、おやすみなさい。

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