トレーニング
こんにちはシルビアです。今日はエイジア様とお買い物でした。途中串焼きも買ってもらって気分はさいこーです。
魔道具屋には色んな物が合ってとても面白そうでしたが、壊したら大変なので大人しくしていました。途中で神殿の話しでエイジア様がちょっと怖い雰囲気になったのですが、知らないことがあったからって怒らなくても良いと思うんですけど……あれ、なんで私知ってたんだろう?
ここの冒険者ギルドはとても大きくてキョロキョロしてしまいました。エイジア様はお小遣い貰いにって言ってましたが、どうやら依頼を受けるようです。カエル退治か薬草摘みを選んで良いって言われましたが、カエルは酷い匂いの沼にいてぬらぬらとして、突然飛び掛ってくるのでだいっきらいです。
薬草摘みの依頼を受けてましたけど結構遠いみたいです、あれ……明日は学校の研究部の見学依頼してませんでしたっけ? あれ?
まぁいいか、むつかしいことはお腹が減るのでエイジア様にお任せで。
「よし、それじゃ夕飯の時間までランニングだ!」
いつものランニング用の軽装に着替えて表に出る。 普段からストレージに食料と水は入れてあるのでとりあえず必要なものは揃っている。
「はい、えっと、今から向かうのですか? 明日は学校で見学をするって言ってませんでしたか?」
「大丈夫だ、それまでには戻るから」
不思議そうなシルビアを連れて北門から外へ出る、出る際にはもちろん身分証明が必要なのでギルドカードを提示しておく。
門から出てすぐのところでシルビアに、鉄製の籠手と脛当を出して装備させる。 今から一緒にランニングをするわけだが、体力差がありすぎるのでパワーウェイト代わりに装備してもらっている。
まぁ、それでもまだ一緒に走ってもトレーニングにならないようなので、ボクサーがよくやっているシャドーを見よう見まねでやってみせて、意味合いを伝えてみたら気に入ったのか、私と走るときはウェイトを着けてシャドーをしながら一緒に走っている。
「シッシッシ、フッ、シャッ」
ジャブでガードを上げさせてボディへ一発、ガードが下がったところに右フックが顎を狙う。 そんなコンビネーションを放ちながらステップを踏んでいる。
「よし、それじゃこの街道を北西に向かってランニングだ。私がばてるまでだが……」
「はいっ、おやっさん」
変な知識を植えつけてしまったのか、ランニングの際には私の事をおやっさんと呼ぶようになってしまった。 シルビアの瞳に燃える炎が見えた気がするが、華麗にスルーする。
王都の北西側は麦の生産をやっているようで、綺麗に区画整理された麦畑になっていて、喉かな風景が続いている。そんな街道を1時間置きに休憩を挟みつつ走っていたが、段々と走っている時間の方が短くなって来る、というかすでに歩いている。
「よし、シルビア、今日はここまでだ。 整理運動をして帰るぞ」
「おやっさん、まだまだオレはやれるぜっ」
まだまだ元気一杯のシルビアはその場でシャドーをしつつ、こっちをチラチラ見ている。まだ散歩が足りないようだが、すでに私の足はぷるぷる震えている、間違いなく明日は筋肉痛だ。
「良いから帰るよ、ほら捕まって」
「はーい」
耳と尻尾をしゅんとさせて大人しく手に捕まる。そして、自分達の部屋の中をイメージして魔法を発動させる。
「テレポート」
次の瞬間には寮の部屋に転移していた。シルビアは突然景色が変わったことに驚いたのか、戦闘の構えになって回りを警戒している。
そういえば、テレポートを見せるのは初めてかもしれない、よく考えたら最初のテレポートの時は気絶していて、その瞬間を見せていなかったのを思い出した。
「あー、シルビア、ここは私達の部屋だ。テレポートで移動したんだ」
「はっ? はぁ……」
まだ納得が行かないのかキョロキョロしつつ、なにやら鼻をひくつかせて匂いを嗅いでようやく警戒を解いたが、納得できないと行った顔でこっちを見ている。
「古代魔法にはテレポートって言う魔法が合って、行ったことが合って明確にイメージできる空間に移動することが出来るんだよ」
「そんな魔法があるのですか、凄いですっ」
目をぱちくりさせながら尻尾をピンと立てて、私驚いてますと表現している。
狙ってやってたらあざといのだが、ちょっとだけ天然が入ってるので実際驚いているのだろう。
「この年でそんな魔法が使えると知られると、面倒が起きそうなんで内緒だからね」
「はいっ、誰にも言いません」
それにしても体力が無さ過ぎる、この30日ほど頑張ってトレーニングをしていたのだが、体力がほとんど戻っていない、まぁレベルアップで割り振るのが手っ取り早いのだが、狩りをするにしても問題がある。
すぐに反撃が来ない遠距離から魔法を打って倒す私の戦い方と、白兵戦で倒すシルビアでは戦闘スタイルが違いすぎる。
シルビアを前衛にして戦うにしても、敵がこっちに来たら攻撃を回避できなくて私が死んでしまう。1、2回ぐらいなら根性で回避か防御したとしても敵に囲まれたら終了だ。 ゴブリン程度なら何とでもなるとしても、これから山間に入れば強いモンスターも出てくるだろう。 前衛をもう1、2人雇うか、私が戦闘系のスキルを覚えるかだが……どうするか決めかねている。できれば戦闘なんてしないで生産やっていたいのだが、生産スキルを覚えるのもやはりSPで覚えるのが手っ取り早い、となると戦闘は避けて通れない、痛いのは嫌でゴザル。
そもそも魔法には射程距離があって、この世界の魔法は中盤から200m、終盤には2kmとかふざけた射程距離がある。 (まぁ2kmのは広範囲殲滅魔法なので、使う場所が限られている。戦争か問答無用の殲滅にしか使えない魔法だ) パーティー戦での魔法使いは後衛に位置しているとして、中衛、前衛で敵までの距離は20mと離れていない。 200mの射程距離から一方的に攻撃できる優位性をかなぐり捨てて戦うのだ。 まぁ、守ってもらわないと死ねる後衛が、パーティーである優位性を分からないわけではないのだが、悩ましい問題だ。
まぁ、そんな訳で囲まれたら即時逃げる予定なので、テレポートの護符を用意してある。 まだ王都が見えるところまでしか進んでないので、この辺の街道でモンスターが出るとは思えないが、明日からは気をつけて進もう、シルビアにも後で伝えておかないといけないな。
「さて、シャワー浴びて食堂でご飯食べよう、今日は色々あって疲れたから早く寝たいね」
「はい、ご飯食べに行きましょう」
早速ご飯を食べに食堂へ行こうとするシルビアを止める。
「シルビア、ここの食堂とかは臭いと使わせて貰えないんだよ、だからお風呂で綺麗にしておかないと、ご飯を食べさせてもらえないよ?」
「ひっ、そ、そうなんですか……体洗うですよ」
シルビアはシャワーが苦手のようだ。 川とかは喜んで入るし、体を拭いたりはするのだが、一度宿に付いていたシャワーで頭から丸洗いしてやったら、耳に水が入ったらしく激しく身震いして水切りしていた。それ以降シャワーを使いたがらない、川では普通に泳ぐのにシャワーの水が顔に掛かるのは嫌がるのは何故なんだろう?
「ほらシルビア、タオル耳栓して、頭洗ってあげるから」
「はーい……」
タオルで作った耳栓をさせて頭を洗ってあげる。これをすると嫌々でもなんとか丸洗いすることができる。
主従の関係ってなんだろうという、びみょーなことを思うが役得もあるので、シルビアの可愛さに免じて許そう。
うん、ちゃんとした食生活をしているのでずいぶん丸みを帯びてきた。このまま頑張って成長して美味しく実っておくれ、そして、私の体も頑張って成長して……
体の洗いっこも終わり食堂で夕飯を食べて、今後の予定を話し合ってからベットにもぐりこむ、隣に自分の部屋があるのになぜか、私のベットに一緒に潜り込んでくるが、尻尾と耳をモフれるので勘弁しておこう。
翌朝、いつもの時間に起きて、悲鳴を上げまくる体を無理やり起こして、ちょっとだけ回復魔法を掛けてから日課の体操を行う。
筋肉痛に回復魔法を掛けることによって、筋肉が傷つく前の状態にもどってしまうのか、筋繊維が太くなって治るのかどちらになるかは分からないが、トレーニングで回復魔法を使うのはなるべく控えておこうと思っている。
よぼよぼと体操をしている横で、元気に飛び跳ねているシルビアが居る。
毎度の事ながら元気すぎる。その有り余る体力を分けて欲しい、というか返してほしい……
体もほぐれてきたので、就寝前に作っておいたテレポート護符をシルビアに渡しておく、万が一分断されて囲まれた際の保険だ。説明とテストは昨日のうちに済ませてあるので、よほどのことでもない限り大丈夫だろう。
シルビアと手を繋いで、昨日の場所をイメージしてテレポートで転移する。
これを朝と午後で2回やってちょっとずつ山を目指す予定だ。
薬草採取依頼の納期が決まってないので、急ぐ必要は無いのだが、依頼は一人2つまでしか受けることが出来ないので、なるべく早めに終わらせておきたいのも事実だろう。
「よし、今朝はここまで、帰って朝ごはん食べて学校行こう」
「はい、今日の朝ごはんは何でしょうね? 夕べのお魚も美味しかったので楽しみです」
テレポートで戻って軽く汗を流してから、朝食を食べて学校へ向かう。
たぶん9時ごろだと思う、最近懐中時計を持ち歩かないようにしているので、大体の時間で生活をしている。回りも時計を持った生活をしていないので郷に従おう、というか懐中時計の価値が高いので鴨葱になりかねないので、封印してしまった。
教員室で許可が取れた研究室を聞いて、早速向かっている。
1日目の午前は魔方陣研究所、午後からは古代魔法研究所、2日目の午前は魔装研究所、午後からは魔力文字研究、三日目の午前は魔導具研究所の予定で予約を入れてもらっている。
~魔方陣研究所~
研究所と書かれた扉をノックすると、中から40代ぐらいの白衣にぼっさぼさの茶髪のオッサンが出てくる。
「やぁ、来たね。待っていたよエイジア君にシルビア君だね、さぁ中に入りたまえ」
研究所の中は学校の教室に、どこの会社だよって感じの書類などが山積みになった机が並んでいて、奥にはかなり大きめの机があり、そこに魔方陣のようなものが書かれた木板がおいてある。 紙では耐久性に問題があるので木板で魔方陣を書いているのだろう。
室内には最初のオッサンを含めて6人の白衣を着た人達が居て、年齢も性別もバラバラだ。一番若そうなのは10代半ば、高齢は最初のオッサンの40代ぐらいだろう、女2男4だ。 まぁ男なんてスルーで良いとして、30代ぐらいの女性二人だろう、だぼだぼの白衣でシルエットは分からないが、83・63・80といったところだ。 驚くべきことにその2人は姉妹というより双子なのか、色々とそっくりだ。 ちょっとウエーブの掛かった金髪を肩まで伸ばし、色白で垂れ目の笑顔がチャーミングな人だ。 ぜひともお近づきになりたい。
「紹介しよう、今日見学に来てくれた。エイジア君とシルビア君だ。 私はここの室長をしているイルデだ。そして、手前に居る若手は君達の先輩になるランドルフ君、高等部3年生だ。 その隣はハーマン、ここの卒業生で35歳独身、さみしーねー…… あっちのオッサンはオルデル、彼もここの卒業生で私の同期だ。最後にエミリーとサミーは双子姉妹で32才、私の妻達だ」
それぞれが自己紹介してくれるが、最後の言葉にがっくりと肩を落とす。 美人双子姉妹を両方妻って爆発したらいい。
「さて、とりあえずこの研究所の趣旨を説明しよう。といっても名前どおりなんで何のひねりも無いんだがね? 魔法には系統別に分かれていて、それぞれに魔方陣があるんだが、魔法には魔方陣があると効果を増すものや、魔方陣がないと発動しない儀式魔法などもある。昔は魔法の系統が今よりももっと多くあったという資料があるのだが、伝える者が少なかったものや、魔物の襲撃で根こそぎ破壊されてしまったものもあり、多くは伝わっていない、だが、遺跡で発掘されたものや現存しているものも含めて、魔方陣が12ほどあるのだよ」
たしかに、古代魔法・属性魔法・神聖魔法・付与魔法・獣魔術・龍魔術・時空魔法・陰陽術・奇跡魔法・死霊魔法・紋章魔術・大魔法・錬金術・魔導剣と魔方陣があるのだけでも14系統ある、魔方陣を施設や衣服などに施して威力をあげたりしていたので、残っていても不思議は無いのだが、魔方陣からのアプローチで失った系統を復活させようと言うのだろうか。
「これらの魔方陣を解析して文献に残っている魔法系統を復活させるのが私達の研究なんだよ、もちろんそれ以外も研究を続けてはいるが、大まかにはこんなところだね」
それから1時間ほど雑談をしつつ、この研究の有用性を説明されて高等部へ上がったら、研究生として部活のような感じで参加してみないかとお誘いも頂いた。
お昼になったのでお礼を言ってお暇して、一旦寮へもどってお昼ごはんを食べている。
寮での食事は特待生なので無料だし、普通に美味しいので外で食べないで戻ってきて食べるようにしている。お財布事情もなかなかに逼迫しているのもあるが……
「よし、お腹も膨れたし、午後の研究所巡りをしてからランニングに行こうか」
「はいー、お散歩大好きですよぉ」
やっぱりトレーニングじゃなく散歩だと思っていたか……
午後の研究所は古代魔法研究所だ、なるべく掘り下げて話しを聞きたいものだが研究所だけに機密とかあるだろうし、どの辺まで聞けるのか楽しみではある。
~古代魔法研究所~
研究室をノックして中に入るとそこにはダンブルドアが……もとい80とも90とも言えそうな老人が白髪の髭を撫でつけながら、革張りの椅子に座ってこちらをにこやかに見ていた。 眼差しは孫でも見ているかのようにとても優しげで、金糸銀糸をふんだんに使った濃紺と純白の襞をもつローブをまとっている。
「ようこそ、古代魔法研究所へ。ワタシはこの研究所の所長ハリッド・モスじゃ、副業で宮廷魔術師もやっておるがのぅ。 さて、今日君達を案内するのはこの高等部2年生のアルノア君だ。君達と年も近いし話題も合うんじゃなかろうかな」
「アルノア・エルシェントだ。君達の事はマーレシア先生より頼まれているので、なにかあれば力になる何時でも相談してくれ」
「「よろしくお願いします」」
高等部2年ということは14歳ぐらいだろうか、黒髪を顎のラインで切りそろえたおかっぱで、どこの将校かと言うような軍服を着ている。胸はさらしを巻いているのか女性としては控えめな胸板だが、WHを見る限りその戦闘力はB判定、今後の成長に期待したい逸材ではなかろうか、あまり長く見ていると身の危険なので一瞬でその判断を下し視線を逸らす、眼力レベルが上がっているのかもしれない。
古代魔法研究は研究所のなかで大手らしく、3箇所に部署が分かれている。
失われた魔法を復元する部署、既存の魔法を効率化する部署、新しい術式を開発して新魔法を作る試みをしている部署、この3つで研究所は構成されているらしく、既存の魔法を効率化する部署にお邪魔させてもらった。それ以外は機密が多いので一般立ち入り禁止だそうだ。
とりあえず現存する魔法の一覧を見せてもらうことができたが、ルールブックに載っている魔法と比較しても4つほどが失われているだけだった。
「カメレオン」姿を消す魔法
「トランス」物体のサイズを10倍から10分の1まで変化させる
「フィールド」効果時間内はどの魔法でも魔方陣を纏った状態となる
「デルタフォース」範囲殺戮魔法の禁呪
この4つが失われている、以外に少ないと思ったがこの研究所が復活させた魔法も多々あるそうだ。そして憶測だがデルタフォースに関しては、復活させなかったんじゃないかと言う気もしている、半径5kmの範囲に三角錐の結界を作り出して、内部に多重爆破の魔法を発動させる殺戮の魔法だからだ。
見学も終わり午後からのトレーニングに行くことにしよう。
朝のトライでは王都が見えないところまで来たので、そろそろモンスターの存在に備えないといけない、といっても逃げる準備だけなのだが……
「ここから先は敵が出るかもしれない、見晴らしが利いて敵が2匹までなら戦うかもしれないが、基本は逃げる予定だ。 逃げる合図をしたら急いで私に捕まるように、囲まれて分断されたら迷わずに護符で転移をするように、身の安全を最優先でいくよ」
「わかりました」
よし、今日もがんばってトレーニングだ。
お読みいただきありがとうございます。
沢山の感想や誤字脱字報告ありがとうございます、時間が取れ次第
修正を掛けていきます。




