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Bランク




 それから三日ほど旅の準備や王都の学院に付いてとか、今後の方針などを話し合いようやく今日出発となった。


「では、ご無事を祈っております」

「くれぐれも自重してね、貴方は自覚なしでやりすぎるようだから・・・」

「まぁ、男は多少の無茶は買ってでもせねばならんのじゃ、がんばるんじゃぞ」

「学院には私の弟子が何人か居りますので、可能な限り便宜を図るように言っておきます、できましたらその者達に指導を施していただけると助かります」

「便宜とかいいですから、くれぐれも変なことは吹き込まないようにお願いします」


 朝早くに幌馬車に乗せられギルマス達が激励を贈ってくれる、王都までは約30日ほどそしてこの旅には護衛が付いている、護衛なのか監視なのかは分からないが・・・


「それじゃ行こうか」

「とっとと出発するにゃ!」

「眠いンで一緒に馬車に乗せてね」

「がっはっはっは、いい旅日和じゃわい」

「ふむ、日が高くなる前に進めるだけ進みたいな」


 自己主張の強いパーティー「火竜の逆鱗」の皆さんだ、パーティーリーダーのトト、スピードファイターで戦技と剣術がメイン、同じく戦技と剣術がメインの女戦士で威力重視のオルディア、ドワーフ族のガインツは戦技と防御法がメイン、エルフ族のリーフィニアは剣術と精霊魔法が、猫族のシュリは弓による射撃と気孔術を使うそうだ。


 出発時はとても静かでトト以外は名乗りもしなかったのに、町が見えなくなったとたんに自己紹介をしてきた、矢継ぎ早に名乗られてシルビアは目を白黒させていたが、一応名前は覚えたようだが、私は人の名前と顔を覚えるのが苦手だ、あっちの世界の職業的には致命的なんだが、苦手なものは苦手なのでしょうがない。 2、3回ぐらい名前を聞き返すかもしれないが、そのうち覚えるので怒らないでほしいものだ。


 自己紹介が終わったと思ったら今度は前に見せてしまったペンダントの話しになったが、全て企業秘密と言ってスルーした、ギルドからも圧力が掛かってるはずなので、それ以上の追求はしてこなかったが、リーフィニアだけはしつこく食い下がってきた。


「深く聞くつもりは無いから、その代わりに呪文を教えて欲しいのよ」

「それって深くどころか核心ですが、言葉を変えてもダメですよ、ペンダントを作りたかったら付与魔法を覚えてください」

「いや、だからあのレベルの付与魔法を教えられる人なんて宮廷にしか居ないって、簡単な付与なら出来る人は居るけど、それだってペンダントに1回分を込めるのがせいぜいだよ、まして神聖魔法に古代魔法なんて何系統も使える人は他に知らないよ」

「そうじゃの、付与魔法を覚えて他の系統もとなると頑張っても2系統ってところじゃのぉ、まして付与もそうじゃが、神聖魔法の中級、古代魔法の上級まで使えるヤツなんてそこらにおったら、とっくに魔物との勢力図が変わっておるじゃろ」

「最近こっちに出てきたばかりで地理は詳しくないんですよ、ギルドで初心者講習を受けて大まかな話しは聞けたんですが、まだまだ知らないことが多すぎて一般的な知識すら田舎者なので知らないことが多いのですよ」

「なんともチグハグな感じだね、魔法を見れば熟練の魔法使いのようでもあるのに、一般常識的なことは見た目どおりの範囲だなんて、どういう教育を受けていたのか興味が湧くね」

「いや、まんまですよ、田舎の閉鎖された空間で父親と共に研究に没頭していて世間ずれしているんですよ、だから時勢や地理も解ってないんです、興味が無いことには知識欲が向かないものでしょう?」

「まぁ、それはそうじゃがな、さて、そろそろ護衛に集中せにゃならんで無駄口はこの辺にしておくかの」


 そう言って荷馬車の側面へと移動していく、今回の旅は幌馬車1台と馬を4頭ギルドから貸し出されているので、順調に進んでいけば3日で次の宿場町にたどり着ける予定だ。


 幌馬車は2頭立てで御者台にトトとシュリ、荷馬車の中に私とシルビアにリーフィニアが居る、そして乗馬でガインツとオルディアが馬車の周囲を警戒してくれている。


 シルビアは朝が早かったせいか、荷物に寄りかかって寝息を立て始めた、美味しいものでも食べているのか、口がもっきゅもっきゅと動いていて幸せそうな寝顔なので起こさないでそのままにしてある。

そしてリーフィニアは諦めきれないみたいで次の作戦を考えているのか腕組みをしてうなっている。


 しかし、30日もすることが無いとなるとかなり退屈だ、魔法の開発や練習をしたいがリーフィニアが居る前でやるのも問題があるかと自重しているのだが、30日も無駄な時間を過ごすのもどうかと思って、1つ提案をしてみることにする。


「リーフィニアさん、相談に乗ってもらえませんか? 応じていただけるのならば、絶対に私から教わったと言わない約束でなら、テレポートの魔法をお教えしても良いですが?」

「え! 本当に!? 分かった何でも言っていくらでも相談に乗るよ!」


 驚いた顔でこっちを窺い本当だと分かるとにじり寄ってくる、何の相談かも聞いてないのに現金なことだ。 30日も無駄な時間を過ごすよりは今のうちに実験や研究もしておきたい。


「貴女のレベルやステータスあと所持しているスキルなどを教えていただきたいんですよ、Bランクの戦闘力ってものに興味がありましてね、どうでしょう多少実験にも付き合っていただけるなら、お教えしてもかまいませんが?」

「え・・・・いや、それは色々とダメでしょ、普通そんなの教えないものだし、冒険者が自分の手の内を明かすだなんてありえないでしょ?」

「その言葉、そのままそっくりお返しできる話しなんですが? だからこそのギブアンドテイクってヤツでしょ、まして私は貴女じゃなくても高レベルの人なら誰でも良いんですよ、そういう依頼をギルドにだしてお金で解決する方法もあるんですよ? 貴女はこの魔法がお金で買えると思うんですか?」

「う・・・・ぬぬぬぬぅ・・・・いや、しかし・・・うーーーー」

「ちなみに、奥の手は隠しておけば良いかとか思わないでくださいね、そんなんじゃ研究にならないですからね、黙っておけばバレないとか思わないでくださいね?」


 なぜ考えていることが分かる!とばかりに驚いた顔をしているが、普通そう考えるものだと思って先に釘を刺しただけなのだが・・・顔に出すぎだろう、本当にBランクなんだろうか、それともBランクってこんなものなのかな?


「ははは、リーファは顔に出やすいからな、ステータスぐらい教えてやれよ、別に敵対するわけじゃないだろう?」

「いや、だからってステータスを教えるってのは抵抗あるんだけど?」

「ステータスを教えたからって不利になるだけじゃないか、そんなんで失われた魔法が教えてもらえるなら安いと思うんだが、まぁ、魔法使いじゃないから本当の価値ってもんは分からないけど、悪い話じゃないと思うぜ?」


 今までの話を聞いていたのかトトから援護射撃が来る、パーティーリーダーだけあって状況判断が的確だ、仲間のステータス開示でパーティーに移動魔法が手に入るなら美味しいに決まってる・・・と考えるのは私が黒いせいだろうか? まぁ、おかげで決意してくれたようだが。


「分かったわ、その代わり私のステータスも誰にも言わないって約束をしてちょうだい、それならこの話しに乗るわ」

「じゃ、商談成立ってことで、ちょっと待っててくださいね呪文を書き写しますから」


 荷物から羊皮紙と特製インクを取り出してテレポートの文言を書き留めていく、そして裏面にテレポートの魔法陣を描いてインクが乾くまで横に置いておく。


「それじゃこれがその魔法です、インクが乾いたらしまってくださいね、ではステータスを開示してもらえますか?」

「分かったわ、なんかステータスを見られるのって緊張するわね」


 そう言って恥ずかしそうにギルドカードを操作してステータスを表示してくれる。


________


名前 :リルド・ディ・リーフィニア・ファルシュミット

 種族 :エルフ

 性別 :女

 年齢 :125才

 出身 :フォールンフォレスト

 属性 :水

 レベル:32

 ジョブ:ワイズマン

            

 HP :74

 MP :248


 体力 :42

 強さ :36

 器用 :48

 知能 :72

 精神 :76

 神気 :50

 魅力 :30


スキル 


戦技

 「パリィ」「スラッシュ」「アクセル」「チャージ」「フルスイング」

剣術

 「流し」「捌き」「飛燕」

属性魔法 水 風

 「アクア」「ウォーター」「ピュフィリティ」「フリーズ」

 「ウィンド」「サイレンス」「ライトニング」

古代魔法

 「リッパー」「プロテクト」「マジックアロー」


語学(共通語・エルフ語)  精霊視  植物鑑定6Lv  気配感知6Lv  危険感知3Lv  礼儀作法5Lv  能力値上昇4Lv  薬学5Lv  無詠唱6Lv 武器習熟4Lv 魔導の血統


________


 あー・・・・突込みどころが多すぎてどうしようって感じだ、まず、ゲームだった頃は20Lvが最大レベルだった、GMの話しだとそれ以上のレベルにも上がれるが20Lvですでに人外だったので、それ以上になると戦闘も長引くしゲーム時間自体が長くなるので最大20Lvでしか遊んだことが無かった。


32Lvとかもう人外どころか神になれる強さになっているはずだが、所持スキルの少なさに唖然とする。


 ちなみにだが一緒に遊んだ奴の作った20Lvキャラが、全力の一撃で万単位のダメージをたたき出したことがある。 上記を見てもらえば分かるがHPなんて狙って作っても1000を越える事も無いのに、どれだけのオーバーキルをすれば気が済むのだろうって威力だ、20Lvで化物なのに32Lvがどれだけ異常かは解ってもらえるだろうか?


ざっくり計算するが32Lvでエルフだと172ポイントの能力値上昇が入る、基礎値とスキルによる上昇に職業特典を合わせて考えると誤差もあるがこの数字になるだろう、SPに至っては335ポイント、持っているスキルをSP消費して覚えたとしても100ポイント以上残っている計算になる。


 そして残SPは表示されていない、シルビアが表示されているのは魔核を分け与えてリンクが成されたためだろう、残SPが知りたいが流石に魔核の分与となるとテレポートなんて比じゃないぐらいにヤバイのでここまでで良いだろう。




 さて、次の実験だがSP残はあると仮定して外部からのスキル習得を促すことができないか、まずはこれをやってみたい、シルビアは私が任意でスキル習得させることが出来ることはわかったのだが、はたして魔核を移植してない人に対してもできるかどうか、これを試してみようというのだ。


 まずは魔核を移植するのではなく、私の活性化した魔力を相手に流し込んで循環させることが出来るかどうかのチャレンジだ、魔核があればこれが可能なのはシルビアで実証されているので不可能では無いはずだ。


「それじゃ実験に付き合ってくださいね、私と手を繋いでもらって手を媒介に魔力を送りますんで、受け入れて自分の中で循環させてみてください」

「それって古代魔法のオーラ? MPの供与だったっけ、効率悪くて使う人いないって話だったけど覚えたの?」

「まぁ、オーラ魔法のようなものですが、魔法としてじゃなく魔力操作の手法の1つとして覚えたのですが、まぁ、とにかく試してみましょう、別になにか悪影響が出るものでもないですし、MP容量を溢れても体外に吐き出されるだけですから」

「そうだよね、まぁ、そのぐらいなら構わないけど」


 リーフィニアは私の手を掴み魔力を探るように目を閉じた、私も手を握り返していつものように深呼吸をして魔力を循環させる、そして握った手を自分の手の延長と思い魔力を流していく、しばらくは反応もなくひたすらに魔力を流し込むだけだったのだが、徐々にだがリーフィニアの手からも魔力がかすかに帰ってくるようになった。


 リーフィニアは瞑想し呼吸が深くゆっくりとなり、一種のトランス状態と言えるようになったみたいだ、そして私が送った魔力がリーフィニアの中を循環して私に魔力が戻ってくる、リーフィニアの顔は穏やかに幸せそうな笑顔を浮かべている。


 手を通して、魔力を通して何かが繋がった気がする、すかさずステータスを念じてみる考えが正しければこの状態ならリーフィニアのステータスを呼び出せるはずだ。


 目の前に3枚のステータス画面が並ぶ、私、シルビア、リーフィニアのステータスが並び、リーフィニアのステータスの一番最後に見せてもらったステータスには書かれて居なかった一文が浮かび上がる。


残SP178


 予想とはちょっと違ったが確かにSPが残っている、本来ならば他人のSPだから勝手するのはマズイんだが、どの道使ってないんだしやれるかどうかの実験として弄らせてもらおう。


 すでに所持している能力値上昇を5Lvにして、精神を20上昇させてからそっと手を離してみる、手を離したとたんリーフィニアのステータス画面だけが消えて私とシルビアのステータスだけが残った、魔力循環が断たれるとステータスもいじれなくなるのだろう。


「目を開けてください、どうですか? 魔力循環は」


 リーフィニアはゆっくりと目を開けたが、寝ぼけているかのように視線をさまよわせて何か満足げな吐息を吐いた。


「ふぅ、凄いね他人の魔力が自分の中に入ってくるって言うのは、なんか上手く言えないんだけど、うん、良い感じだよ、これならまたお願いしたいぐらいだ」


 そう言って自分のギルドカードに目を落とし、MPを確認して怪訝そうな顔をする。


「あれ、なんかMP増えてる、って、あれ、精神値が伸びてる! 凄いよ、一気に20ぐらい上がってる! 何これ今の魔力循環の効果なの?」

「えっと、まぁ、そんなところですかね・・・ところで話しは変わるんですが、スキルポイントって知ってます?」

「んー、なんか昔に聞いたような気がするなぁ、たしか里に居たときに教えられたような気がするんだけど、あの頃はあまり勉強に身が入ってなかったから覚えてないわ、なんなのそのスキルポイントって?」

「前に読んだ書物に「人は経験を積むと経験の素となるモノが体内に蓄積され、それが昇華するとスキルとして発現する」って話しなんですよ、その経験の素がスキルポイントって呼ばれるものだって書いてあったんです」


 今の実験で私の仮定が真実味を帯びたので、嘘では無いが抽象的な言い回しで誤魔化すような話をまぜて論点をずらす。

 あと、私が今見ているステータスは目の前にあるのだが、リーフィニアには見えていないようだ、見えていたら何かしら反応しそうなのだが、目の前を行ったり来たりさせても視線が行かないので見えないと思って良いだろう。 ちなみにだがシルビアには見えるので魔核がリンクしているせいなのだと思う。


「そんなことよりも、魔力循環を続けたら能力は伸びるの? というかどうやるの?」

「んー、伸びるとも伸びないとも言えない状態ですかねぇ、魔力循環を他人にしようにもそもそも魔法使いじゃないかぎり、魔力循環なんてやりかた知らないでしょう? なのでこれが初の実験だったのでこのようなことになってびっくりです」


 私の告白にびっくりした顔でこっちを凝視してくる。


「ちょっとまって、どうなるか分からないのに実験しようとしたの?」

「はい、でもMP供与の延長ですし、別に問題なさそうでしょ?」

「いや、それでも何が起こるかわからないってことだよね?」

「そうとも言いますが、まぁ、能力値が伸びて良かったじゃないですか」


 にっこりと笑いかけると唖然とした顔で、なにか言いたげに口をぱくぱくさせてるが実験に犠牲は付き物だと思う、まぁ、最悪でも魔力過剰で気絶するだけだし、MPなんて普通に考えれば余剰は溜まらずに体外へ吐き出されるものだから、別段危険があるとは思っていなかったのも事実だ。


「ふむふむ、魔力を送り込んだことによって魔力容量が上がったのに引きずられて、精神値が上がったんですかね、もうちょっと続けてみますか?」

「い、いや、遠慮しておくよ、ステータスは見せたしこれで報酬のコレはもらっていいんだよね?」


 そう言ってインクの乾いた羊皮紙を丸めて、誰にも渡さないとばかりに胸元に匿っている。


「はい、一応これで依頼は完了です、できたらもう少し実験に付き合っていただきたいんですが、追加報酬を出しますんでどうですか?」

「いや、もう止めておくよ、能力は地道に伸ばすほうが性に合ってるしね」

「そうですか、気が変わったら何時でも言ってくださいね、そして、トトさん聞いていたように、私の実験にお付き合い願えませんか? 報酬は現物ですが信頼が置ける人にしかお願いできないんでこの機会に調べたいことは調べて置きたいんですよ」


 聞き耳を立てているであろうトトに矛先を向けてみる、戦士相手にもできないかを試しておくのも良いだろう、もしくは気孔術が使えるなら可能性は高くなるのではないかと思っている。


「そうだな、安全ならやってみるのも良いな、次の宿場町に着いてからでいいなら構わないが、現物支給ってのは何をくれるんだ?」

「そうですね、先日のペンダントを好きな魔法を詰めてお渡ししましょう、それでどうですか?」

「そうだな、まぁ、後で報酬は話し合おうか、皆も試したい奴は居るだろうしな」


 そんなやり取りがあり、これからの30日が濃密な時間になるような、そんな旅立ちであった。





 お読みいただきありがとうございます。


 なんとか7日中に投稿できました、もうちょっと早めに投稿しようと思ったのですが・・・


 次は、がんばれれば明日、無理なら14日になると思います。

 ではお休みなさい。


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