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業と転生と金さんと

調子に乗って書いてたら予定字数になったので投稿しちゃいます。


 結局メルルが天幕の入り口に陣取ってしまい、外に出ることも出来ずに体を拭いて就寝となった、シルビアが甲斐甲斐しく背中とかを拭いてくれようとしていたのだが、慣れていないのか背中がヒリヒリして痛い、そして自分も隠すことなくその場で拭いていたので大慌てで後ろを向いたが、生活習慣の違いってのは怖いものだが、もしかして男と思われてないって可能性もある・・・・


 翌朝目覚めると入り口にメルルは居なくなっていたので、これ幸いとシルビアを起こさないようにそっと外に出る、辺りはまだ薄暗く日が昇る前の紫雲が空を覆い、夏前の熱気を含む風が吹いていた。


 いつもの柔軟と体操をしてから今だ続いているバリケード前の攻防を覗きに行く、流石に指揮官は交代していたが未だに蟻が外に出てきているのか、場の雰囲気は張り詰めている。 状況開始からすでに20時間ぐらい経過しているはずだが、よくもこんなに緊張を維持できるものだ。


 だが流石に疲弊が酷すぎる、こんな状態でお昼かそれ以降まで持つのだろうか、とりあえず当初予定通り弓兵台のところに行って櫓を上り、弓をつがえている冒険者に話しかける。


「私は魔法使いです、交代しましょう状況はどうですか?」

「ん、ああ、助かるよ・・・まだ1時間に2,3匹出てくる、初顔だがやり方はわかるか?」

「いえ、教えてください」

「敵が出てくる気配がしたら指揮官が号令してくれる、そうしたらいつでも撃てる状態にしておけ、次の号令で出てくる、号令の間はせいぜい3秒程度だがお前の詠唱は間に合うのか?」

「大丈夫です3秒もあれば3発は起動できます」

「そ、そうか、年の割りに優秀だな・・・敵が出てきたら1団体出てくるまで引き付けて、盾が足止めしてくれるので撃て、俺達遠距離が終わり次第槍が、盾の囲いから外れそうなのは剣が盾の範囲に追い立てる、最悪それを突破しそうなのが居れば狙撃しろ」

「わかりました」

「あと、脱出者が出た場合は盾が囲い込んだヤツ以外は撃つな、連携外だと誤射の危険性があるからな、後は交代してもらいたい時は手を上げて交代を言えば次のやつが出てくれる」

「わかりました、では休んでください」

「ああ、後は任せるぞ、無理せずにな」


 そう言って弓を担いで櫓を降りて、覚束ない足取りで休憩用のテントへ入っていった。


「狙撃か、状況的に打ち下ろしのような感じかな、そういえば円月輪とかは出した状態でどれだけ持つんだろう、試したことがなかったけど5分は持つことは確かだな、とりあえず1個作って時間を計ってみるかな」


 20cmほどの円月輪を作って待機させる、このサイズならあと3つは作れるのでこれでまずは試してみよう、魔力操作で移動させて待機も試しては見たいが、命が掛かった防衛線でやることじゃないと思い自重する。




 それから号令が掛かることも無く30分ほどが過ぎた、それでいくつか分かったことがある、まずは円月輪だが魔力操作をしていなくても魔力の糸のような繋がりがあり、維持するための魔力が消費されているみたいだ、だが、通常の回復速度で相殺されているみたいで1個維持してる分には減るどころかMPは回復しきってしまったので、あれから3つ作りだして維持しているが、まだ回復速度がゆっくりとなっただけで回復し続けている。


 ただし、魔力操作で移動させて待機させると移動距離に応じて維持コストが増えるようで、1個作り出した状態で20mぐらい離れたところで維持した場合で回復速度と維持コストが釣り合って回復が止まった、維持したまま瞑想スキルがつかえないのでこれが限界だろう。


 魔力操作を止めて手元で4つ重ねて待機させてからしばらくして状況が変わった、指揮官が立ち上がりにらむように洞窟を凝視している。


「来るぞ! 数が多い! 待機してるヤツも警戒しろ! 遠距離隊は見え次第迎え撃て! 盾はその位置で抑えろ、待機してる盾は左右に散って間をカバーしろ!」


 指揮官の怒号と共に緊張が高まる、円月輪を入り口の上空で待機させて集中する、試そうとしていたことのもう1つを試す時がきた、深呼吸をして円月輪を凝視して魔力を活性化させる、繋がっている魔力の糸を意識して太くする、そして円月輪に魔力を送り込む。


「来るぞ!」


 指揮官の号令で盾役が一歩だけ前に出る、弓者が番えていた弓を引いて狙いをつける、そして、黒蟻キラーアントが扉より姿を現す、次々と出てくる黒蟻に弓が迎え撃つ、そして私は円月輪に充填した魔力で攻撃を行う。


「いけ! 円月輪散弾 射出!」


 分割のスキルで分けて小さくした円月輪を真下に向けて射出するが、分割の元となった円月輪には魔力糸が繋がっているので更に魔力をつぎ込んでサイズを維持して、分割した円月輪を射出し続ける、手のひらサイズになった円月輪が一斉に黒蟻に向かって放たれる、その数は1回16発


 その雨のような攻撃を受けて出てきた3匹の黒蟻は一撃で細切れになった、続いて出てきた4匹の黒蟻も2撃目が迎え撃ち即座に細切れになる。

 その後ろから更に2匹でてきたが、魔力が尽きたので上に待機させていた4つの円月輪を打ち下ろしてから、交代を告げて急いで櫓を降りて弓者に場所を譲る。


「すみません魔力が尽きました交代お願いします」

「あ、ああ、分かった・・・」


 交代の弓者は疲労のためかまだ顔色が優れなかったが、こちらを警戒するかの様に窺いつつ櫓を上って行った。


 とりあえず次の戦闘に備えて櫓の下で目を瞑り深呼吸をして瞑想を開始する、なにか妙に周りがざわついていて瞑想に集中できないのだが、戦場なのでこんなものと思い慣れようと更に意識を集中させて瞑想を続ける。


 突然揺さぶられて、目を開けるとメルルが怖い顔をしてこっちを見ていた。


「なんで貴方がこんなところに居るんですか! 大人しくしてるように言いましたよね? 怒られるのは私なんですよ!?」


 そしてまたもや肩に担がれてテントに連れて行かれる、後ろを振り向くとやはり生暖かい視線が送られている、なぜだろう良いことをして怒られるとか意味が分からない、頭の中はまたもやドナドナが流れている。


「あー、交代の盾は現状維持、今までの奴らは状況を片付けて交代だ、気を緩めるなよ! 急げ!」


 指揮官の呆れたような投げやりな言葉で再び行動が再開されている。




 しばらくして、この世界にも正座って合ったんだなーと、痺れる足をさすりながら横になっている。


 テントに戻るとシルビアはよだれを垂らしながら私の寝ていた毛布に抱きついて寝ていた、そして、今に至るまでひたすら説教を受けていた、途中から愚痴が多くなり最後には自分の婚期についての話になり、自分の話しで自滅して肩を落としてテントを出て行った。


 捨て台詞のように「次、テントを無断で出た場合にはお嫁に貰ってもらう」と言っていたが、なぜだかちょっと嬉しそうな顔をしていたのは何なんだろう・・・


「7歳児相手に何言ってるんだろう、もしかしてショタの人だったのかな・・・」





 結局お昼前には討伐に出ていた冒険者が救援に来てくれた、時を同じくして巣穴を塞ぎに行ったトト達も戻り、掃討作戦を行うことになったらしい、3階よりも地下に行ったパーティーは無事だったが2,3階で餌食になったパーティーが大半だったそうだ。


 トト達はテレポートを使うこと無く戻ってきてペンダントを売るか非常用アイテムとして取っておくかで揉めているところを、ギルマスに横槍を入れられ没収されたそうだ。


 エディ達は仲間の欠損部位を治すために有り金叩いたらしく、装備の新調をギルドに借金をして行って結果大赤字になったそうだ。


 そして私はというと、今ギルドの地下に併設されている牢屋で不貞寝している。

 なんでもテントにて待機はギルド命令だったらしく、ギルド命令違反ということで調書を取るまで牢屋待機となった。 なんか当てこすりな罰則を食らった気分だが。


 放り込まれる前にゴネまくってシルビアを奴隷商から買い受けることだけは済ませたが、シルビアは何もしていないのでギルドの宿舎に泊まっている、当然ギルド専用なのでギルド登録もついでに済ませて置いた。


 あれから3日が過ぎてようやく事態が収束したのか、牢屋から出されギルドの会議室に連れて来られている。


 メンバーは相変わらず扉守護のようにメルルが立っていて、目の前の椅子に座っているのがウィルキン・エルディエット・フランと、40代後半のオッサンが1人だ、見た感じだとクンフーモンクってヤツだろう、アンディの扮する僧侶のように着グルミのようなぶ厚い筋肉に司祭服を着た目つきの怖いスキンへットだ、司祭服着てなかったら誰も近寄らないだろう、というか着てても近寄りたくない、筋肉で何かを断たれそうだ。 命とか


「さて、この3日じっくり反省したじゃろうから説教は無しでいこう、現状としてはお前さんはこの町に居るととてもまずい存在になった」

「7歳児が全身に金貨を巻いて裏路地を歩いているレベルの危険度だろう」

「私なら確実に拉致るわね、というかうちの子にならない?」

「ゲフンッ、それはさておきじゃ、お前さんは力を示しすぎた、このペンダントに付いてもお前さんが作ったということはあの場でわかったことじゃが、ワシらも何日か前からこのペンダントの出所に付いても探りを入れさせておったのじゃ、これだけのエンチャントじゃからいずれにせよお前さんにたどり着いたじゃろうがな・・・」

「話し合ったんだが、裏工作しても裏目にでそうなんで、率直に聞くことにしたんだ、エイジアはどこから来て何をしようとしているんだ?」


 どうやら7歳児だからというレベルを超えて異常と判断されてしまったらしい、本来ならばあのぐらいの魔法なら20レベル前には打てるようになるはずだが、この世界の魔法レベルはそんなにも低いのだろうか?

 エンチャントにしてもあれで高レベルと言われても、一番重いコストのブレイブでも5SPで習得できる物だから、10Lvぐらいの付与術士なら問題なく作れるはずだ。


 神聖魔法を10SPで系統を覚えて、ブレイブまでの魔法を全部覚えたとしても60SPぐらい、付与魔法系統が20SPぐらいで一通りの付与魔法が使えるようになる、つまりよほどの回り道をしなければ10Lv前後の付与術士ならば作れる、寄り道しても20Lvになれば片手間で作れる範囲だ。


 やはり牢屋で考えていたことが現実味を帯びてくる、シルビアのステータスを見たときに思った違和感だが、もしあの時仮定したことが事実ならば、恐ろしく思い違いをしていたことになる。


 それは、NPCにはSPを使ってスキルやステータスの上昇能力などの恩恵を取ることができないのではないかということだ、シルビアはキャラクター作成時のSPまでもが未使用で残されていた、奴隷でだれもその使用方法を教えなかったためかとも思ったが、この反応を見る限り使用する方法が無いのかもしれない。


 ただひたすらの戦闘を行い、学習による鍛錬を行って、自力でのスキル獲得をしているのかもしれない。


 それならば確かに私は異常だろう、ちょっと強いどころの騒ぎじゃない、というか人間として見ていないかもしれない。


「ちょっと待て、私も1つだけ確認したいことがあるんだ、「リンカーネイション」 聞き覚えがないか?」


 今まで黙っていた司祭が唐突に言葉を挟む。


 「リンカーネイション」とは神聖魔法の最後のほうで覚える転生魔法だ、特殊な薬品と聖剣を用いて行う儀式魔法で使えば記憶と能力を魂に刻んで、輪廻転生することができる。

 最終あたりの魔法だから失伝していると思えば、なかなか覚えているやつが居るもんだ。


「その様子だとご存知のようですね、前世の御名前をお聞かせいただけませんでしょうか?」


 突然立ち上がり、私の前に跪くと言葉を改めてこちらを窺ってくる。

 見事な勘違いだ、だが、チャンスでもある、この勘違いに乗らない手はない、あの魔法の必要媒体は当時では法王庁にしか保管されていない特殊なものばかり、つまりはそれを使って転生できるのは、法王庁の高位者かそれに順ずるレベルの王侯貴族だ、当然だが当時の王侯貴族と言えるものは大半がプレイヤーで、自分の国を興したり、国の王子としてキャラクターを作ったりしたため化物揃いだったのは確かだ。


「なんの話しですか? リンカーネイションなんて覚えがないですけど?」


 しれっと惚けて言ってみる、だが、跪いているのは止めない、あくまで転生したが素性を明かす気は無いという演出をしなくてはならない、内心ドキドキだがかしずかれて当然であるといった感じで、ゆったりと座りなおして足を組んでおく。


「惚けられては困ります、死に掛けた人を完全回復させて手足まで再生させる治癒魔法、空間を転移する古代魔法、それらをエンチャントする付与魔法、こんなことができるものは現代には居りません、どれか1つを成しえるだけでも人生の大半を掛けるほどのことです、どうか、どうか私たちをお助けください古代の英雄よ」

「人には事を成すのに掛かる時間が違うのは当然でしょう、だから私がそれらを成したとしてもその範疇です、ですが、何かお困りならば手を差し伸べるのも私の使命のような気がします」


 そう言って右手を握手するつもりで差し出すが、何を勘違いしたのか筋肉司祭は手を恭しく奉げるように掴み口付けをしてくる。

 気色悪くて殴りたくなるが不審な態度を取ることができなくて我慢すると、司祭は何かに気づきその場で平伏する。


「その御手の御紋、伝承にあるあのお方の再来、もしや貴女様は・・・・」




 ここで1つ言っておかなくては成らないことがある、私はプレイヤーとして他にもキャラクターを作ってこの世界で冒険をしている、そして、あるキャラクターは巫女として各地を巡礼しては人々を癒し、冒険の最後には法王庁にて最初の女性法王になったのだ、そのキャラの右手には戦神の紋章がある神の使徒という設定だった、遠山の金さんごっこをするための設定で、裁きを申し渡すときに見せびらかしたために有名になった逸話があるのだが、よもやまさかこんな設定が未だに自分に降りかかってくるだなんて、何の因果だろう、ちょっとそこの筋肉司祭にカルマを断ってもらわねば成らない。


 だが、この小芝居は途中で止めるわけにはいかない、なんとかしてうやむやにしよう。


「顔をお上げなさい、私が誰であろうとも貴方が仕え平伏するのは至高神だけのはずですよ」

「やはりそのお言葉、貴女様は・・・いえ、何でもありません貴方がそうおっしゃるのであれば何かしらの意味がおありなのでしょう、私は貴方にしたがいます、何なりとご下命ください」


 呆然と成り行きを見守っていたウィルキンたちがようやく復帰した。


「ちょ、ちょっとまってくれ、なんなんだいったい、エイジアが何だというんだ?」

「リンカーネイションってあれよね、もしかして相当な人なの? 本当に?」

「なんなんじゃ、そのりんかーねーしょんってのは、どういうもんなんじゃ?」


「そのことに付いては後で話す、今は私を信じて任せてくれ」


 筋肉司祭はまくし立てる3人を手で遮ると立ち上がり元の席に戻る。


「とりあえず、エイジア様がこの町にい続けるのは危険なのです、居る必要がございましたら可能な限り神殿は支援をいたしますが、特に用が無いのであれば、ほとぼりを冷ます意味で、一度王都の学院へ行かれてはいかがかと存じます」

「学院というと、学校教育があるのですか?」

「はい、王都には王立学院があり、さまざまの学問を教えております、武術・魔術・学術を学び、紳士淑女の品位を高めるために王侯貴族から市井のものまで、分け隔てなく学べるように全寮制となっていて、身分の垣根を払い貴賎無く触れ合えるようになっております」


 なんか明らかに無理な設定の学校があるようだが、どうしよう、確かに7才で冒険者として生計を立てるよりは、もうちょっと年を重ねてからのほうが色々とやりやすいのは確かだし、とそこまで考えて思い出す、シルビアを放って学校行ってどうするんだ、自分がよりもまずはシルビアのことを考えてやらないといけないじゃないか。


「お申し出はありがたいのですが、私には仲間が居ますので、その子を置いていくわけには行きません、この町に居られないのであれば、シルビアを連れて別の町に行って暮らそうと思います」

「それなら、シルビアも一緒に連れて行ったらどうかしら? たしかに貴賎は無いって言ってるけど、貴族であれば身の回りを任せるために従者を連れて行けたはずよ、従者も従者としての教育をそこで受けることが出来るはずだから、一石二鳥じゃない?」

「貴族としての地位はワシ等が用意しよう、こう見えてもダンジョン踏破して王から叙勲されて士爵としてこの領地を任されているんじゃ、まぁ階級じゃと最下級じゃが一代限りとは言えいちおう貴族扱いじゃ、文句はでやせんじゃろ」





 色々と便宜を図ってくれることになり、結局は押し切られて王都の学院へと行くことになった、立場としてはウィルキン達のパーティーでの養子と言うことになるらしい。


 シルビアに奴隷という立場から解放してここに残るか、残る場合には1人立ちできるまで身元引受人としてウィルキン達が面倒を見る、それか従者として一緒に来て従者としての教育を受けることになるか、どちらかを選ぶように言うと迷うことなく従者になる道を選んだ、2択しかない選択肢で本当に申し訳がないのだが、いつか違う道を選んだとしても暖かく送り出してあげようと誓うのだった。






お読みいただきありがとうございます。


当初予定どおり次回は7日になると思います。

書けたらその都度載せますが・・・

では、お休みなさい。


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