友達
私は今砂漠に居る、凄く暑く息苦しい体も上手く動かず水も無く砂地に倒れている、もう此処で死ぬのかと諦めた、なぜこうなったのかを思い返すが何も覚えていない・・・・
「うぅぅ、暑いぃぃ」
目を開けると何か柔らかい、そして獣臭い匂いに包まれて目が覚めた、後頭部をがっちりと掴まれ息苦しい、身をよじりなんとかそこから抜け出して起き上がると、そこは先ほどの救護テントだった。
横を見ればシルビアが横たわり、何かを探すかのように手をさまよわせて寝ていた、どうやらシルビアに抱き枕にされていたようだ。
「おや、起きられたのですね、体の調子はどうですか?」
先ほどシルビアに治癒魔法を掛けてくれていた神官だ、問われてようやく自分の体の調子を探るとかなり倦怠感がある、たぶんだがステータスを削ってシルビアにつぎ込んだからであろう、おかげでシルビアが死なないですんだのだから、そして私も無事に生きているのだから御の字といった所だろう。
「はい、なんとか大丈夫です、魔力が枯渇して気絶しただけですので問題ありません」
「そ、そうですか、いやはや、凄まじい魔力でしたね、あれだけの魔力は始めて見ましたがどのような治癒魔法を使われたのですか? 司祭様が使う治癒魔法を見たことがありますが、それを越えていたように思えたのですが・・・」
「え・・・いや、あ、ああ、そうですね、私も神聖魔法と・・・内緒ですが奇跡魔法を使えるのですよ」
回りを見渡して人気が無いことを確認して、声を潜めて奇跡魔法が使えることを言う、錬金術が使えると言うよりも、奇跡魔法が使えると言ったほうが穏便に済むのでは無いかという考えだ、系統として失われたと書物にはあったが、神聖魔法にいくつか統合されたとも書いてあった、これでなんとかごまかせないだろうか・・・
「おお、それはすばらしい! そのお年で奇跡魔法を使えるのですか、どちらの神殿で修行を積まれたのですか?」
「あ、いえ、父から教わりましたので神殿に仕えたことはないのです」
「そうでしたか、それは素晴らしいお父上ですね、どちらかの神殿にお勤めだったのですか?」
なんだろう、妙に掘り下げて聞いてくるが、なにか素性を調べようとしている感じがする、奇跡魔法が使えるのはそこまでなのだろうか・・・
「すみません、家を出たのであまり家の事は・・・」
事情があって家を出たので話したくありませんと、顔に悲しみを浮かべて俯く。
「す、すみません、立ち入ったことを聞いてしまって、あれだけの治癒魔法が使える方のお父上ならさぞや高名な方だと思い、お名前をお聞きしたかっただけなのです」
「いえ、お気になさらずに、申し遅れましたがエイジア・アーガスと申します、シルビアを助けてくださりありがとうございます」
座ったままでなんだが、頭を下げて名を告げつつシルビアの治療の礼をする。
「それこそお気になさらずに、神官の務めとして当然のことをしたまでです・・・ですが、その必要もあまり無かったのかもしれませんけどね・・・私はアズゴートと申します」
神官は自分の治癒魔法で治せなかったのを、子供が治してしまったことを思い、苦笑いをしている。
「いえ、私もまだ奇跡の御技が使えるとは思わなかったのです、父から習ってはいたのですが成功したことは無かったので、シルビアが死ぬと思ったら必死になってしまって・・・」
言い訳がましいがアズゴートのプライドをへし折ってしまったと思い、しどろもどろに言い繕っておく、効果のほどが見えないが。
「まぁ、なんにせよあれだけの治癒魔法です、かなりの代償を支払われたのでしょう、しばらくは安静にしていてください、では、私は他の方の治療にもどりますので」
「ありがとうございました」
アズゴートは暇を告げると別の患者の治療に向かっていった。
さてと一息ついてシルビアを見ると、なぜか前よりも血色がよくなっているのか、ほっぺたに赤みが差していて、つやつやと輝いているかのようだ。
ステータスを呼び出してどれだけ消費してしまったのか見てみる。
名前 :エイジア・アーガス
種族 :亜人 (魔血族)
性別 :男
年齢 :7才
出身 :エルダーフォレスト
属性 :聖
レベル:12
ジョブ:学生 (魔道学・神聖魔法)
ジョブ:錬金術師
HP :23
MP :268
体力 :9
強さ :14
器用 :12
知能 :46
精神 :22
神気 :78
魅力 :42
スキル ▲
名前 :シルビア
種族 :獣人族
性別 :女
年齢 :12才
属性 :炎
レベル:3
ジョブ:奴隷
HP :43
MP :134
体力 :30
強さ :40
器用 :23
知能 :22
精神 :12
神気 :26
魅力 :16
スキル
奴隷作法1Lv
語学(共通語)
頑健3Lv
毒耐性3Lv
錬金術(簡易)
気配感知1Lv
危険感知1Lv
残SP44
自分のステータスの後ろにシルビアのステータスが表示されていた、なにが原因か思い当たることが多くてどれだか分からないが、魔核の分譲が原因な気がする。
「うぁ・・・能力値が軒並み減ってる、というか体力9ってなに、生まれたての子供なの? MPも100近く減ってる、なんか不自然にMP容量が増え続けてると思ったら、魔核が大きくなってたのかな、だから削って与えたからシルビアのMPが増えてるのか・・・」
そして、スキルに頑健と毒耐性を見つけて奴隷商には置いておけないのを再確認した、SPを消費してスキルを習得する以外に手に入れる方法は、そのスキルを師匠に習うか実地で鍛えるしかない、つまり毒耐性や頑健が付くほどに酷い扱いを受け続けていたと言う事だ、ただ、手足を失っても生きていられたのは頑健が有ったからだとは思うが、どうしても奴隷商が許せなく感じる、物理的な仕返ししか今は思いつかないが必ず報いを受けさせようと心に誓う。
深呼吸して気を取り直し最後の項目を見る残SP44だ、もしかしたらキャラシートが見えていて残SPが見えるということは、スキルをSPで習得できるのかもしれない。
ルールブックを呼び出してから思いとどまる、他人のスキルを勝手にどうこうとして良いわけがない、この子が自分で未来を決めるべきことなのに、私がこの子の進む道を勝手に選択して良いわけが無い、NPCだからとかはもう関係ないだろう、ちゃんとこの世界のNPCは人生を生きている1人の人間だ。
「うん、起きてから話しをしてそれから一緒に考えたらいいか・・・」
シルビアを起こさないようにそっと立ち上がろうとしてふら付く、能力値が軒並み下がっているのが原因だろう、特に体力がひどい2Lv分のポイントを振ってなかったのでとりあえず体力・強さ・器用に振り分けてから、体がを慣らすために柔軟と体操を行う。
体が温まったところでテントの外にでて見るともう夕暮れを迎えていたが、ダンジョンの前は先ほどと変わらずに人だかりと、指揮官の怒号が響いているが声が掠れていて昼ほどの勢いが無い、さすがにあれからずっと戦っていたならばとうに疲弊して倒れていて不思議はないだろう。
やれることがあるだろうと思い人だかりの方へ歩いていくと、肩を叩かれて呼び止められる。
「なぁ、お前だろう、うちのロノアを助けてくれたってのは」
振り向くとお昼に見た冒険者の、たしか名前はエディだったはず。
「はい、そうですが、ロノアさんは大丈夫でしたか? 私はあの後気絶してしまって覚えてないのですが」
「そうか、本当にありがとう、お前のおかげでロノアは怪我も大したものがなくて治療を受けて今あっちで戦ってる、本当は休ませてやりたいんだが、あれも依頼の一環として報酬がでるんでな・・・他の奴らが大怪我しちまったんで手足を戻すのにお布施というか治療費を稼がにゃならんのよ」
そう言ってバリケードの方を指差して、不安を抑えたような顔で笑った。
「礼は改めてさせてもらう、本当にありがとうな」
そう言って足早にバリケードに戻っていった、そこでようやく冷静になった頭がその言葉と前に言っていた言葉を繋げて考えられるようになった。
「あれ? 生命維持ができるところまで直せば、明後日には司祭が戻ってくるから高位の治癒魔法で手足戻してもらえたんじゃ・・・というか、私がレベル上げして治癒魔法覚えれば直せるんじゃ・・・」
余計な考えが頭をよぎったと頭を振って忘れることにした。 とりあえず防衛に参加してレベル上げしようと思いついたことを振り払うようにバリケードの方へ走っていく。
バリケード前は酷い状態で疲労しきった冒険者達があちらこちらに座り込んで休んでいた。
近くの人に話しを聞くと、ダンジョンに入った冒険者で生死が確認できていないグループがまだ10は居るそうで、1階層で死んでいたのは遺体が回収されたらしい。
今居る冒険者でランクの高いC以上のパーティーが何度か中に入っては、蟻の巣穴に繋がる隠し扉を塞ぎに行っているが、2階層目からは兵隊蟻が何匹か居るようでいまだに3階層目の巣穴入り口にたどり着けないで居るそうだ。
そして、先ほどランクBのパーティーが町から駆けつけてくれたらしく、目的地に行くための事前説明を受けているところだそうだ。
その冒険者が指差すパーティーを見ると、驚いたことに見知った顔を発見する。 昨日朝一番に露店に来た冒険者だった。
ウィルキンから説明を受けている冒険者達に近づき話しを立ち聞きする。
「・・・・・・じゃから、巣穴に繋がる扉が閉まらない場合には状況しだいで扉周辺の壁や天井を崩してでも塞いで欲しいのじゃ、もちろん崩落の危険もあるので命にかかわる話しじゃ、冒険者じゃから強制権が発令されてない今、引き受けんでも構わない話しなのじゃが、無理を承知で頼むやってはくれまいか?」
「頭を上げろよマスター、命の危険なら解ってやってるんだ、キラーアントの巣穴があるところに入ろうってのに覚悟もなく来るわけ無いだろう」
「そうですよ、最悪トトを盾に私だけでも逃げますから気にしないでください」
「おう、そうじゃな、誇り高きドワーフ族が頭を下げるもんじゃないぞ」
「気にするほどのことじゃないわ、さっさと行って虫を潰して巣穴を塞き止めれば良いんでしょ、私のような高貴な妖精には泥臭い仕事だけど簡単よ」
「まぁ、私だけでも逃げ切ってみせるにゃ、心配するにゃよ」
相変わらず一斉に話しかける自己主張の強いパーティーのようだ、これからキラーアントの蔓延るダンジョンに入るというのに気負った感じもなく自然体だ。
せめて何か出来ることは無いかと考え、手持ちの装備やアイテムを考え思いつく、すでにダンジョン内部の説明は終わっていたらしく、ダンジョンに向かって歩き出すのを見て、隠れて作る余裕はなさそうだと判断する。
首から提げていたネックレスから魔力が切れたコインを手に持って、目を閉じて深呼吸する、魔力の活性化と循環をして一気に魔力をコインにつぎ込む。
「魔方陣展開、魔力変換、テレポート集中詠唱開始・・・・エンチャント」
手袋の魔方陣に魔力を通して魔方陣を活性化し、魔方陣を通して魔力を変換してコインに注ぎ込み、テレポートを封入するために精神を集中させて詠唱する、発動一歩手前でエンチャントの魔力で包み込みコインに封入する。
傍から見ると物理的な風を伴う魔力の奔流が少年の周りに渦巻き、握り締めた手を包み込むように魔方陣が光り輝いて浮かび、覆っていた魔力が魔方陣を通して握りしめた手に向けて収束するかの様に光共に魔力が流れ込み消えた。
唖然として周りがその光景を見ているが、当の本人は魔力を活性化集中発動まで、ずっと目を瞑っているのでまったく理解していない、自分がどれだけ目立ったことをしているのかを。
「ちょっと待ってください、これを持っていってください、役に立つとは思いますので」
目を開けて行ってしまおうとする冒険者を呼びとめようと声を掛けるが、何故かこっちを向いて固まっている。
「気を引き締めろ! 余所見をしてると死ぬぞ! 集中しろ!」
指揮官のオッサンの怒号でようやく時が戻ったかのように周りが動き出す、そしてトトと呼ばれていた軽戦士がこっちに歩いてくる。
「なにか信じられないものを見たような気がするのだが、君は一体?」
「? なんだか分かりませんけど、これを持っていってください、役に立つはずです」
回りを見るが、遠巻きにこっちを見てなにやら話しているのが見えるが、不思議そうなものが無いのでとにかくと思い作ったコインをトトに渡す、そして、エルフさんの方を見て手招きする。
引きつった笑顔を浮かべてエルフさんがこっちに来て、何? といった顔で見てくる。
「いや、これの説明をこの人にしても理解してもらえるか分からなかったので、貴女なら分かると思いまして、お呼びしちゃいました」
「そう、それでこれは何?」
そう言ってトトの手のひらの中の物を見て、こっちを見る目が不審者を見る目になっている。
「えっと、そう、新製品ですよ、ダンジョン用と言いますか、まぁ、此処だけの話し悪用されると困るので、もう作るつもりは無いので内緒にして欲しいんですが・・・」
「分かったわ、内緒にするから早く言って、あまり時間がないのは解ってるでしょ」
「古代魔法のテレポートはご存知ですか?」
とたんに驚愕の顔で一歩あとずさるエルフさん、やっぱり失伝した魔法だったかなと思うが命には変えられないだろう、説明を続ける。
「その様子だとご存知のようですね、1回だけですが6人までなら地上に戻ってこれるだけの効果を発揮してくれます、発動するときは発声前に場所を思い浮かべてください、ただし距離は100kmまでですので、それ以上遠くかそれ以上の人数を運ぶときは自身の魔力を追加で消費してください、質問ありますか?」
「か、確認だけどこれを作ったのは貴方よね? この魔法が使えるってことなのね?」
「そういうことになりますね、なので内緒にしておいてくださいね、目を付けられて拉致されたりするのはイヤなので」
「あー、そりゃ手遅れかもしれないな、良く解ってないが凄いことをしたってのは周りを見ても分かるんだが、俺からの助言としては、次何か作るときは目を開けてどんな風になってるか見たほうがいいぞ、目立ってるから・・・」
トトは呆れたように手を広げて、周りを見渡してこっちに助言をしてくれる。
「えっと、あれ、私は魔法を使うとき目を閉じてますか? あれ・・・」
自分の行っている動作を反芻しつつ、作成をするときはイメージを正確に脳裏に描くために目を瞑ったままでやっていることにようやく気がつき、なるほどと言った顔をした。
「分かりました、次はその様にしてみます、ではがんばってください」
言い終わるやいなや、唐突に襟首が掴まれて持ち上げられる、横を見るとウィルキンが怖い顔でにらんでいた。
「話しは終わったな、お前さんはこっちにくるんじゃ、ちぃぃっと話があるでの」
肩に担ぎ上げられ会議に使っていた天幕の方へと連れて行かれる、頭だけ振り返りトトの方をみると、生暖かい目でみんなが手を振っているのが見えた。 脳裏にドナドナが流れてくるのはなぜだろう・・・
私は今ぐったりと倒れている、あれから軽く1時間は経っただろう、ずっと説教を受けていたのだが途中で目を覚ましたシルビアが飛び込んできて、訳も解っていないだろうに一緒に謝ってくれたので、説教はそこで終了となり食事をして寝ろと言われて開放された。
ただし、しばらくはギルドの監視下に居てもらい、討伐に向かったほかのギルドマスターが戻りしだい今後に付いて話をすると言うことになった、というか、強制的に同意させられた。
「旦那様、ごはんを貰ってきました、食べてください」
シルビアがそう言って、スープボウルを二つとパンを二つ持って天幕に戻ってきた。
「旦那様って私の事かな?」
「はい、神官さんから聞きました、命を助けてもらったそうで、私は旦那様にご恩をお返ししたいです」
なんだろう、望んでいたはずなのに旦那様と言われても嬉しくは無い、むしろ罪悪感を感じるのだ、だからこそ思うこの子を奴隷から開放しよう。
「私の名前はエイジア・アーガスだ、エイジアと呼んでくれ、できたら友達になってほしい」
「んー? わかりましたエイジア様、お友達に成らせていただきます、何なりとご命令ください」
・・・解ってないだろう? きっと解ってないだろう。
「えっと、友達は友達に命令とかしたりしないからな? あと、様は要らないからな」
「わかりましたエイジア様! あれ?えっと、エイジアさん? エイジア殿? んー? 」
ピンと立っていた耳が次第にしおれるようにヘチャっと倒れ、腕組みをしながらなんと呼べば良いかで悩んでいるようだ。
「エイジア良いんだよ、それよりスープが冷めるから早く食べよう」
「わかりました、エイジア様!」
耳をピンと立てて、狼種に近いふっさふさの尻尾を振りながらパンにかぶりつく、食事と聞いてその前の言葉が頭から飛んで行ったようだ、なんとなく最初から解ってはいたのだが、ちょっとだけ馬・・・もとい、教養が足りないのだろう生まれのせいだ、奴隷商が悪い必ず報いを受けさせよう。
食事も終わり外を見てみると篝火が焚かれ、まだ警戒をしているようだ、魔法でなら役にたてると思いテントを出ようとしたら、メルルが入ってきて止められた。
「どこに行くのかな? 一応貴方は監視下に居てもらう約束だけど」
「いや、大変そうだから私も攻撃魔法が使えるように成ったので、お役にたてるかなとおもいまして・・・」
「ギルドマスターから「何もさせるな、目立たせるな」と厳命されてるので、明日の朝になったら町に護送させてもらいますので、それまでここに居てくださいね」
「え、いや、犯罪者じゃないんだから、そこまでしなくても? それに回復魔法も使えるので怪我人も治せますよ?」
食い下がるのだが、すでに解っていたのかメルルは首を振る。
「最悪、明日までに何かあればご助力を願うかもしれませんが、今はとにかく目立たせるなとのことなので、大人しく寝て体力を回復させてください、それに北の討伐部隊に伝令を送った返事が来て、ゴブリンの根城が見つかったので今夜夜襲を掛けて、早ければ明日のお昼には町に戻れるそうなので、向うは連戦になるでしょうが、お昼にはギルドの主戦力が来てくれます」
お読みいただきありがとうございます。
仕事場で2人も相次いで辞められたので、休みがどうなるかわかりませんが
次回は7日までに投稿いたします。




