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森の異変




 ちょっと早い時間だったのか酒場は年若い冒険者が4、5人食事をしていただけで空いていた、私も夕飯を食べるためにカウンターに座って定食を注文する。


「そういえばサマンサさん、狩りに行ってたんだけどお肉が思ったより取れたんで使いませんか?」

「んー、良いのかい? 売れば多少なりともお金になるだろう?」

「かまいませんよ、狩りはレベル上げに行ってるだけで、本職はアイテム造りですのでその御代で生活できますから」

「そうなのかい、まぁくれるって言うならありがたいんで貰うけどね」

「肉は厨房の中にもって行けばいいですよね?」


 給仕で手が離せないサマンサさんに声を掛けて厨房に入り込むと、中には厳つい大柄な羆が居た・・・・ちょっとだけ呆然としていたが良く見ると毛深いだけの人間のようだ、大柄で厳ついのは変わらないのだが、そして熊がこっちを見てナンダ? と言った目を向けてくる。


「宿でお世話になってるエイジアです、狩りで肉を取ってきたのでお裾分けに来ましたどこへ置いておきましょう?」

「ん、ソコヘ」


 ボソっと呟くように言って目と顎で奥の調理台を指し示し途中だった料理に視線と意識が向いたので、そっと調理台に移動して台の上にストレージから猪を取り出して置いておく。 ちょっと驚いた顔が見たかったんだが、まぁ、厳つい顔に驚かし返されそうなので、そおっと厨房をでてカウンターに向かう。




 しばらくしてガランと言う何か鉄のようなものが落ちた音が厨房から聞こえてきて、思わずニヤリとする。


「いたずら成功」


 その後は何事も無く定食が出てきて美味しい夕飯を食べて部屋に戻って、昨日の続きのコイン製造に移る。


 新しい魔法「サーチ」「リフレッシング」「ブレイブ」の3種類、新たにコインの製造する。


 消費魔力減少と魔力回復効果の瞑想を覚えたのと、魔力容量が増えたことによって都合70枚を作ったが昨日よりも短い時間で造り終えた。


 今日も銭湯に行けなかったので不満は残るが、とりあえず清浄を掛けて明日に備えて寝よう、もしかしたら明日の売り上げで40金貨溜まるかもしれない、シルビアが帰ってきたら迎えに行ってあげられそうだ・・・・


 まだ溜まっても居ないのだが、遅くても2日もあれば目標額に達するのでシルビアの驚いた顔を想像してニマニマと笑いながら眠りに付いた。




 あまり眠れてなかったのだが翌朝はいつもどおりの時間に起きられた、階下へ下りて井戸端で準備体操をしようとしてたら、サマンサさんが凄い勢いで走ってくる。


「あのお肉は一体どうしたんだい? あんなものもって無かったのに、それにあんなのただで貰うわけにはいかないよ! もう本当になんなんだい」

「あー、すみません混乱させちゃいましたね、先日薬草採取に行ったときにワイルドボアを倒したんですが、肉の処分先に困りまして・・・私はアイテムボックス持ちなんですが肉を下手なところで取り出すことも出来なくて、ずっと持ってたんですがお世話になってる宿屋に提供しようかとおもいまして、なので気にせずお店で使ってください」

「そ、そうなのかい、まぁ、そのねぇ、信用してくれるのは嬉しいんだけど、アイテムボックスなんて人に知られないようにしないとダメだよ? よそで出さなかったのなら気をつけているんだろうけど、私たちだって知り合って間もないのに信用しすぎだよ用心しなさい」


 サマンサさんは目を白黒させながら、それでもやはり私の事を心配してくれてるのかお小言をくれる、そんなサマンサさんだから信用できると思ったのだが素直に謝っておこう。


「すみませんでした、ありがとうございます、でも信用してますよ」

「ふぅ、まったくもぉ、本当に7才には思えないね・・・・まぁ、こちらこそありがとうだよ、ありがたく使わせてもらうよ」


 そう言ってあきれたように手を振って掃除の続きへ戻っていく。 それを見送って日課の体操とジョギングに戻る。




 朝食を食べてから露店を出しに行こうとすると、後ろからガッシリと肩を掴まれて振り向かされる、そこには厳つい羆・・・もとい宿屋の主人エリックさんが立っていた。


「ん、これ昼飯だ、もってけ」


 そう言って手に包みを持たせてくれるとさっさと厨房へ戻っていった。 昨日のお肉のお礼なんだろうか、戻る背中にありがとうございますと礼を言っておく。





 所変わって昨日の果物屋の横で露店の準備をしている、当然ながら路地裏を通り偽装で着替えを終え、ストレージから椅子やテーブルなどを出しておいてある。


「おはようございます、今日も横で失礼します」

「おう、おはよう、今日もがんばろう」


 隣と軽く挨拶を交わして、昨日よりも種類の増えた護符を並べカンバスに値段を付け加えていく。


 清浄護符5ch 25銅貨 10枚 (白地に青、魔女の箒)

 防御護符5ch 25銀貨 10枚  (白地に黒、十字軍の盾)

回復護符弱5ch 25銀貨 10枚 (白地に薄緑、十字架)

回復護符中1ch 1大銀貨 10枚 (白地に緑、茨と十字架)

 回復護符中5ch 5大銀貨 10枚 (白地に深緑、茨と十字架)

 戦闘強化護符5ch 25銀貨 5枚 (白地に赤、火花の模様)

 状態回復護符5ch 5大銀貨 10枚 (白地に金、太陽の模様)

 索敵護符5ch 5大銀貨 5枚 (白地に紫、蜘蛛の巣模様)


 露店の用意を終えて、いざ! と思って声を出そうとすると先に声を掛けられた。


「もう準備は良いのかい? 仲間を連れて買いに来たんだけど」


 見ると昨日の女戦士さん、そしてお仲間と思える同年代ごろの軽戦士、ドワーフの戦士、魔法使風のエルフのお姉さん、弓を背負った猫族のお姉さんの5人が立っていた。


「ここが昨日言ってた護符屋だよ、効果も見ただろう、間違いなしだから買っておいて損はないよ」

「へぇ、ここがかにゃ、にゃんだか普通の装飾品屋にゃかんじだにゃ」

「ふむ、細工の腕はまだまだじゃな、だがセンスが良いなこの盾の絵はなかなかじゃ、これからも贔屓にするから腕をあげるんじゃぞ」

「本当に綺麗ね、それにかなりの魔力を感じるわ中でもこの蜘蛛のコインは凄い魔力よ、これ1枚作るのにどれだけの魔力を込めているのか、信じられないわ」

「まぁ、とりあえず人数分全種をくれよ、あと見たことが無いのがあるけど、これはお試しさせてもらえるのか?」


 凄い自己主張の強いパーティーらしく一斉に話し掛けられる、最後の1人がこのパーティーのリーダーらしい軽戦士さんだ。


「はい、構いませんよ、とりあえず効果を説明しますね、まずはこの中回復のコインは昨日売り出したのが1chのオート回復機構でしたが、それを5chにしたものです、次に索敵護符は蜘蛛の巣のコインで半径30m以内の敵性生物を認識できます、エルフのお姉さんに分かりやすく言うと古代魔法サーチの30m版ですよ、あとは状態回復の太陽のコインこれは神聖魔法のリフレッシングです、最後にこの火花のコインは神聖魔法のブレイブです、詠唱はサーチ・リフレッシング・ブレイブです、呼称の後にオープンで起動します」


 そう言って3枚のコインを渡す、エルフさんはこのコインの真価に気づいたのかコインをまじまじと見ている。


「おし、それじゃ試させて貰うよ「サーチオープン」・・・って何にもおきないんだが」

「それはそうよ、サーチの魔法は敵性生物の感知だから、30m範囲だと町の中だから敵性のあるものが居る分けないでしょ」


 エルフさんがリーダーに突っ込みを入れる、当然解っていたので助け舟を出す。


「まぁ、そうなんですけどね、でも方法はあるんですよ、例えばですが、私が攻撃をしようと意識すれば・・・」

「お、本当だ、目の前に薄暗い地図のようなものがでて黄色と赤い光点が表示されてる、この黄色が俺で赤がお前か・・・良く出来てるな」

「良く出来てるんじゃなくて、サーチの魔法を貴方が使ってる状態なのよ」


 再びエルフさんが解ってないと言わんばかりに言う。


「これって付与魔法よね、それもブレイブなんて結構高位の神聖魔法に拡大化した古代魔法まで付与できるなんてあなた相当な術者ね、そんな護符をこんな安値で売って良いの?」

「構いませんよ、ちょっと入用があってお金を貯めてる最中なんですよ、なので作り置きが無くなったら商売をもうちょっと考えますんで」

「まぁ良いじゃないか、良いものを安く売ってくれるならそれに越したことはないさ、とりあえずお試しはこれで良いよ、あとは実践で試させてもらうから」


 そして全種類5セットが早々と売れて、残り半分の在庫でスタートとなった。





「さてと、売り物も無くなったんで営業終了してギルドにでも行きますか」


 今日もお昼には完売してしまい、することも無いのでギルドへと向かう、しかし、途中から気配感知で付けて来ている人が2人ほど居るのを感知する、道を曲がってもやはり気配が付いてくるので撒く算段をつける、次の路地に入ったら偽装を変更しよう年齢は元に戻して髪の色を金髪にして、手持ちの机とかはストレージに格納して、何食わぬ顔で路地を戻るこれを一瞬で行わないといけない、こういったスリルはちょっとどきどきして楽しい感じだ。


 そして次の路地を曲がり気配感知で人目が無いことを確認しつつ一息に行動を行う、そして振り返って元来た道へ戻ると、商人風の目つきの鋭い男と道の反対側で買い物をしている女性が路地の方へと歩いて来るのが分かる、二人とも変装をしているつもりなのだろうが最初から疑って見ているので簡単に分かる、物腰や目つきが一般人とは思えない。


 上手く撒けたので小走りにギルドへ向かう、念のために雑貨屋へ入って再度偽装を行い銀髪に戻し年齢を12歳に変更して、適当な日用品を手早く買って外にでる。

 路地を適当に曲がりつつ曲がるたびに年齢を戻していって、ぐるっと大回りしてギルドへと到着する。


 私の2Lvな気配感知じゃ分からないやつが居る可能性を考えての行動だが、これでもまだ撒けないのなら今の技量じゃ諦めるしかない。




 今日も今日とて討伐依頼を見てみるが、お昼過ぎに来たって碌なものは残っておらず昨日と同じ状態だ。

 とりあえずギルドカウンターへ行って昨日と今日の売り上げを貯金してギルドカードを確認すると42金貨と端数、思い立ってから何日もたってないのに40金貨達成してしまった。


「これで迎えにいける、あとは連絡が来るの待ちだけど今日か明日には戻るのか、早く帰ってこないかな・・・」




 今日はお弁当も持っているので、昨日の森まで寄り道せずに向かう。


「そういえば昨日はゴブリンしか見かけなかったけど、ウッドモスはサーチに引っかからなかったな、やっぱり草食で襲ってこないから敵性として認識されないんだろうか・・・」


 森林に着いたところで30mサーチを展開するのだが、30m範囲には敵性が無いのでそのまま森の中に入っていく、そして、昨日作ってしまった広場の辺りまで来たところで、前方に4匹ほどの敵性を感知する。


「ゴブリンかな、4匹なら丁度良いから実験台になってもらおう」


 昨日は森林破壊をしてしまったので前から考えていた魔法を試してみることにする、魔力弾を手の平に出して錬成で形状を変化させていく、球体を平らにして外周をギザギザに尖らせる、つまりは丸ノコだ。


 集中すること数分で形状が丸ノコになったので魔導学で4つに分割して、1個当たりを小さくして魔力操作で高速回転を行う。


「ふぅ、上手くできたけど、この円盤部分の内側をなくしてリング状態にしたらもうちょっと消費魔力が減るかな?」


 再度形状を変化させて真ん中の部分を無くしてリング状にする、そして、この形状を見て思いついたことを試すために更に形状変化を掛ける。


「ん、やっぱり出来たチェーンソー・・・このまま振り回せるかな・・・」


 思いついたままに横にあった木に振り下ろすと、ギュリイイイイという甲高い音と共にすんなりと振り下ろせてしまい木が倒れていった。


「おー、あんまり抵抗なく切れちゃったけど、どんだけ高速回転してるんだろう・・・」


 その音を聞きつけたのか前方にあった4匹の敵性生物のうち3匹がこっちへ向かってくる、そして残りの一匹が反対方向に移動して圏外に消えていった。


「やっぱりだ、4匹のうち1匹が伝達なのかどっかへ消えていった、集落なのか別集団が居るのか分からないけど組織だって動いているのは間違いないな、とりあえず目の前の3匹を駆除しよう」


 先ほどの手順で魔力を形成して4つに分割して高速回転を行う、この工程をさらに2度行い合計12個の5cmほどの輪を作り出す。


「10m、9、8、7・・・見えた、今だ! 円月輪魔力弾!」


 12個の輪が一気にゴブリン目掛けて飛んで行き、途中にあった木々にも触れるがチュインという音と共に貫通してゴブリンにも当たるが、やはりそのまま貫通して輪は見えなくなった。


「おー、これもまた良い威力だわ、ただ、手に有るうちは操作できるけど投げたあとはそのまま飛んでいくだけだから、使うところを気をつけないと敵も味方も一緒くただよね・・・」


 今後の課題を残しつつゴブリンの剥ぎ取りに近づくのだが、結構先の方にまで輪が貫通した跡があるので、本当に気をつけなくてはと冷や汗をかく。


 いつも通り錬成で剥ぎ取りを行いMPを回復するのだが、今のでだいぶ減っていたのか3匹分のマテリアルでは完全に回復しきらずその場で瞑想を行う。


 ステータスを開いて回復具合を見ると魔力容量がまた上がっている、こないだからの上昇を観察していたのだが、一度枯渇してから回復すると5ほどだが容量が増えているみたいだ、後はやはりだが魔導学にスキルが2つ増えていた。


[円刀 SP4 MP20 切断効果 :魔力を円刀形状にして切断力を高める]

[鎖刃 SP4 MP20 切断効果 効果時間1分 :魔力の小刃を連結させて高速で回転させて切断力を高める]


「んー、誘導弾とかも何とかならないかなー、サーチで場所が解ってるんだから直線状に貫通させて倒すことは出来てもね・・・遮蔽しているものを回避して敵だけを倒すようにしたいんだけど・・・手から離れたら変化できないし・・・、手から離さないで変化させる?」


 イメージは如意棒、これの先端を槍にして魔力を注ぎ込んで伸ばす、魔力は繋がってるからイメージ次第で軌道を変更することができるはず。


 中腰になって魔力を両手の平に集めて槍を形成して構え、そしてこのまま伸ばす。

最初はゆっくりとそして木をよけて曲げる、その速度を上げて行き今度は鋭角に曲げる、上下左右にも曲げて、最後に木に穂先を突き立ててみる。


「ふぅ、ちょ、ちょっと凄い魔力を持っていかれたけど、出来なくは無いみたいだな」


 再度ステータスを覗くと今の魔力操作でMPが残り50を切っていた、そして新たなスキルが追加されていた。


[魔力操作 SP4 MP20 :魔力を自在に操作する、1m延長させるごとに10MP消費する]


「スキル化したけどなんか記述が思ったのと違うんだけど、これって誘導できたりするのかな・・・」


 とりあえず予備のマテリアルを消費してMPを回復させて魔力弾を作り出す、記述通りなら伸ばすようにしなくてもこれを動かせるはずと、イメージを込めて念じる。


 最初はゆっくりとだったが自在に動かせるようになった、意識が魔力弾と接続されているのか、速度もイメージ次第で速くも出来る、そして射程というか魔力弾を移動させた距離が記述の延長のようで動かすごとにじわじわとMPが減っていくが、魔力消費減少が掛かっているため記述の数値ほどには減らないようだ。


 そんな実験をしていたのだが気配感知で何かが近づいてくるのが分かる、実験に集中しすぎていてサーチが切れていたことに気づかなかったため、かなり近い位置まで接近されてしまった。


 急いでサーチ30mを掛けると20m周囲4方向から6匹ずつにすでに囲まれていて、どっちにも逃げ場が無い、手持ちのマテリアルを消化してMPを回復させてサーチに更にMPをつぎ込み60mまで範囲を広げると、前方6匹の向こうに5匹ほどの敵が居ることが分かる。


 前方と右方向は町から遠くなるので、後ろか左方向に突破を仕掛けるしかないと思い、左方向に向かって走りながら円月輪魔力弾を2個生成して再度サーチを確認する、ぶっつけ本番だが予想が正しければ出来るはずだ。


 敵まであと10mほどに迫ったあたりで、サーチした方向に向かって魔力弾を魔力操作で飛ばして集中する、そして10m進んだところで魔導学の分割を発動させて円月輪をその地点で分割拡散させる、分割の数は20合計40個の1cm弱の円月輪がその場で四方に散弾したはず、威力が減っても切断の効果が残っている以上鎧を着けていないゴブリンなら致命傷になるはずだ。


 サーチを確認すると進行方向の6匹がサーチから消えているが、立ち止まって集中してたために後続が間を詰めて来ている、後方10mの位置に12匹その後ろ10mに5匹が近づいてくる。


 とにかく回復しないとあと2戦は無理なのでAPを全部使ってMPを回復させながら、倒した6匹の所へ走り出す。

 そして多少回復したMPをつぎ込み円月輪を3つ作り出して、サーチした後方へ向けて魔力操作で投げそのまま走る、目測が付かないので2つ数えてから分割拡散させるとサーチから敵影が8つ減って、残り4匹とその後方の5匹になるそして4匹のうち2匹がその場で動かなくなるので、どこかしらに当たって動けなくなったのだろう。


 なんとか倒した6匹の場所にたどり着くとボロボロだが革鎧を着込んだゴブリンが6匹倒れていた、ボロボロだったため上手く防御が出来なかったのと、頭部に当たったことが幸いして6匹は死んでいたが、ショートソードやメイス、槍などの武器を持っていた。


 今は調べてる余裕がないので、近くのゴブリンを2匹、分解吸収してMPを回復させ木の陰に入って遮蔽を取り後方を確認する。

 後続の敵は2匹5m先、そしてその後方10mに5匹の敵影、動けなくなっていた2匹は死んだのか反応が消えている。


向かってきたゴブリンもやはり革鎧を着込んでいて、手には刃こぼれが酷いロングソードを持って奇声を上げながらこっちに突進してくる。

 APは使い切ってしまったので「狙う」ことが出来ないが、視認できているので螺旋魔力弾を2つ生成して魔力操作で眉間を打ち抜き、横に転がっている残り4匹も分解吸収してMPを回復させる。


 少し時間が空いたためAPが多少回復している、深呼吸をして心を落ち着けたところでサーチを確認するが、5匹が10mのあたりまで近づいて来ている、歩いてるぐらいの速度で接近しているようなのだが、ゴブリンじゃないのだろうか?

 サーチで敵性として表示されている以上敵なのは間違いないので、近くの大きめの木で遮蔽を取って円月輪を4つ作り出して魔力操作で左右に1個ずつ囲い込むように移動させて待機させる。


 漸く見えたゴブリンのうち3匹は先ほどと同じ革鎧を来たやつだが、その後ろの2匹は明らかに格が違った、1匹は鎧こそ着ていないがローブを着て杖を持っている、もう1匹はプレートメイルを着て手にはロングソードを持ち、通常のゴブリンの倍ぐらいある体格をしていた。


「知る者」を起動して観察するのだがモンスター学を持っていないので、おおよその強さが分かるだけでHP/MPも表示されない、ゲーム知識で考えるにたぶんだがメイジゴブリンとジェネラルゴブリンだろう。


 3匹の戦士ゴブリンが周囲を警戒しながらゆっくりと進んでいる、そして少し間を開けてメイジゴブリンとジェネラルゴブリンが続いている。


 迷っていても先制されるだけなので木の陰から円月輪を投げつけ、ゴブリン達の間で分割拡散を仕掛ける。


 前衛のゴブリンは咄嗟に円月輪を切りつけるが逆に剣を切断されて後方で円月輪が炸裂する、メイジゴブリンは予想していたのか自分と隣のジェネラルゴブリンに障壁を張って、円月輪の拡散攻撃を相殺するが、戦士ゴブリンは反応したが故に拡散した方向を向いていたので頭部に致命傷を受けて倒れる。


「ギィィ、ギュゴォォォォォ!!」


 ジェネラルゴブリンが雄叫びを上げてこっちに突進してくるので、木の陰から出て螺旋魔力弾を2つ放ち左手でナイフを構える。


 螺旋魔力弾の1発は回避されるがもう1発が、ジェネラルの左肩を貫通して左腕ごと吹き飛ばす、しかし、ジェネラルは苦痛に顔を歪めながらも更に激昂してロングソードを叩きつけるように振り下ろしてくる。


 その瞬間APを使って精神を加速させる、加速した思考判断力が世界の動きを緩慢な動きに変える、緩やかな世界で魔力操作を行いジェネラルの後方で何かの魔法詠唱をしているメイジゴブリンを狙撃する、障壁を張るだろうが螺旋は貫通効果だ、障壁を抜いてダメージを通すだろう、そして左右に待機させていた円月輪も操作しておく。


 それだけやると精神加速が終わり通常の時間が戻る、APを使って防御行動の受け流しを試みる左手に構えたナイフでロングソードに合わせるようにぶつけて受け流し、その衝撃で体をずらして回避をする。 しかし、ジェネラルの攻撃力が想像よりも高く完全には受け流すことができず、衝撃で左手がしびれてナイフを取り落とし転倒してしまう。


 ジェネラルは転倒した私を見て勝機を悟り、醜い顔を歪めて笑いロングソードを大きく振りかぶる。


「グッギャッギャッギャッ、グギィ!」


 私は思わずニヤリと笑いジェネラルに言う。


「お前、何か勘違いしてないか?」


 そう、元々戦士の攻撃なんて回避できないので、魔法使いにとっての転倒は回避行動が取れないだけで、立ってようが寝転んでようが戦士と接敵している状況では大差が無いのだ。

 つまり、敵が油断して大上段に構えるそんな隙を待っていた。


 後方から飛んできた円月輪がジェネラルの胴体を切断して寝転んでいる私の上を通過して行く、そして、倒れ掛かってくるジェネラルを、鎖刃を作り出して魔力操作で鞭の様に操り右腕と首を刈り取る。


 起き上がってメイジゴブリンを確認すると、胴体に風穴を開けて首が切断された死体が転がっていた。





 夕方になって町にもどり、ずた袋にメイジゴブリンとジェネラルゴブリンの上半身を詰めて引きずりギルドへ入っていく。

 いつものメルルの笑顔を受けて、こちらもにこやかに笑い返し討伐部位の換金をお願いする。


「24匹分と魔核が6つで78銀貨になります、それにしてもEランクになって間もないのに1日で24匹も倒すなんて凄いわね、本当に将来有望だわ、マスターじゃないけど今のうちに唾付けておきたいぐらい」


 思いがけないほどの討伐数に興奮したのかお茶目な冗談も披露してくれたが、このあとの報告を考えると憂鬱になる。


「あと、できればギルドマスターに面会をしたいのですが・・・」


 私の浮かない顔を見て何かを感じてくれたのか、奥の個室へ案内してくれる。

 ずた袋を引きずって個室に入り倒れるようにソファーに座る。

 最初に倒した6匹は討伐部位とか魔核のことも考えずに吸収してしまったが、実際には32匹の討伐で、うち2匹が上位固体だと知れたら要らぬ騒ぎになると思って個室に移動したが、やっぱり全部分解してしまって無かったことにしたい。


「まぁ、そういうわけに行かないか・・・町が襲われたらまずいしな・・・」


 しばらくしてお茶を持ってきてくれたメルルとエルディエットが入ってくる。


「まぁ、ボウヤ、私をご指名とはお目が高いわね、それで、今日は何のお話かしら?」

「えっと、ハイテンションなところすみませんが、疲れてるので手短にすませますね」


 そう言ってずた袋の紐を解いて中を見せると、エルディエットの態度が変わる、一昨日見たちゃんとしたギルドマスターの顔だ。


「これはどこで?」

「昨日の討伐と同じ場所ですが、今回は6匹ずつに四方から囲まれて、その後ろにコレらが居ました、なんとか倒したのですが、明らかに組織だって動いてるのを感じたので報告に来ました」

「ああ、聞いているよ、北西の森に入ったところでゴブリンに襲われたって言ってたな、しかし、Eランクが過信しすぎじゃないか? 昨日10匹に襲われた所にまた行くなんてのは自殺行為だ、そういうことが無いように初心者講習を行って引き際を教えたはずだが?」


 想定と違って静かに怒っているギルドマスターを前に、さすがに考えが足りなかったかという気持ちが出てくる。


「初心者講習でもそうだったが、確かにお前は強いよ、7才だなんて到底思えないほどの強さだ、だがそれでもだ、まだ7才なんだ、そんな生き急ぐようなことをしてどうするんだ、倒せたから良いようなものの死ぬことだって有り得たはずだ」


 普段の態度はどうであれ、私の身を案じて怒ってくれているのが分かる、確かに危険なところではあったが、逃げるという考えはあの瞬間には選択肢に無かったのは確かだ。

 退路は確保しつつ殲滅する気で居た、もしあれがゴブリンロードでも出てきていたら死んでいたのは私だったろう。


「すみませんでした、考えが足りませんでした」

 

「ふぅ、まぁいい、反省しているようだし、確かに倒せるだけの確信があったから戦ったのだと思う、さて、ここからは個人じゃなくギルドマスターとして話をさせてもらうぞ」


 そして、出てきたゴブリンの装備や戦闘の質、行われた戦闘の経緯を詳しく話す。

ただ、分解吸収に付いては話さずに、MP回復薬を大量に持っていたことにしてある。

さすがに錬金術に関しては話すべきではないだろう。


「と言うわけです、さすがに討伐報酬を貰っても割に合わない戦いだったのでこれ以上はやりたくないですね」

「まぁ、ソロで戦うような量じゃないしな、こないだの講習会のメンバーでも良いからパーティーを組んだらどうだ? なんだったら適当なのを見繕ってやるぞ」

「まぁ、追々考えますよ、それに明日になったら1人パートナーが来るんですよ、奴隷の子なんですけど、あまり良い待遇じゃないみたいで私が引き取るんです」

「そうか、まぁ奴隷ってのは何だけど、一人じゃないってのは良いもんだぞ、パーティーで苦楽を共にして血よりも濃い絆が生まれるんだ」

「はい、なので、明日が待ち遠しくて」


 そう言って営業スマイルじゃない本当の笑顔を浮かべる。




お読みいただきありがとうございます。

27日ごろに投稿予定です、宜しくお願いします。


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