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講習会

お待たせいたしました。

 「さてと、宿で夕飯食べて日課の合成しよう。しかし、肉をどうしよう300kg近くあるから取り出したら運べないんだよね、剛力スキルでも取れば持てそうだけど無駄ポイントだよね……」


 独り言を呟きながら宿に入るとサマンサが忙しそうに働いている。酒場は盛況なのか6つあるテーブルにカウンターまで全部埋まっていて、若い冒険者達がにぎやかに酒盛りをしている。

 時間を潰すためにカードを作りをしようと部屋にもどり、魔力弾を使ったので生産前の確認の為にも、キャラクターシートを呼び出して見るとレベルが1つ上がっていた。


 名前 :エイジア・アーガス

 種族 :亜人 (魔血族)

 性別 :男

 年齢 :7才

 出身 :エルダーフォレスト

 属性 :聖

 レベル:4            

 ジョブ:学生 (魔道学・神聖魔法)

 ジョブ:付与術士


 HP :41

 MP :181


 体力 :18

 強さ :24

 器用 :22

 知能 :47

 精神 :32

 神気 :34

 魅力 :42


残 6BP :12SP


 流石に低レベルだとレベルアップが早いなと思いつつ、ステータスに6BPボーナスポイントを振り分け、12SPで何を取ろうか考える。

 魔導学や付与魔法は次に取る予定のスキルがSPの大きいものなので、当然消費するMPも大きいため今は取っても使いこなせない。


「さてどうしよう、古代魔法か属性魔法を1系統取って効率の良い攻撃魔法を覚えるか、神聖魔法の状態異常や大回復を取るかだけど、しばらくソロだし攻撃魔法だよな……」


 ルールブックを出して取れる範囲の魔法一覧を見て、汎用的な古代魔法を取ることにする。取る魔法は2つ、衝撃波を出す魔法と5立方メートル範囲を綺麗にする魔法を取る。

 ステータスは知能と神気を上げて、発動率と魔法威力を高めておく。これで良いかなと目を通して行くと、魔導学に取った覚えの無いスキルが足されている。


[螺旋 SP4 MP20 貫通効果 :魔法を螺旋形状にして貫通力を高める]


 ルールブックにも存在しないものだが、今日の実験の時に形状変化を掛けて魔法を使ったのがスキル化されたのだろうか。


「スキルを作り出したという事なのかな、これってもしかするとルールブックの魔法を取らなくても、ある程度なら作り出して覚えることが出来るってことだよね?」


 思わず声に出して自問自答する。そして魔法の可能性に鼓動が激しくなる。今すぐ実験したいが宿の中でやることじゃないので、今日のところは自重することにした。 

 覚えたばかりの魔法をカード化して、それから下に下りてご飯たべよう。

 さっきまで騒がしかった階下が静かになっている。




 翌日もいつもどおりの時間に起きて、朝の日課を済ませてギルドへ向かう。

 ギルドは依頼を受けに来た冒険者で賑わっていた。普段はこの混雑を避けて遅い目に来ていたのだが、昨日から胸がどきどきして早く森へ行って実験がしたくて思わず早くきてしまった。

 しかし、最近子供の体のせいか、睡眠時間が足りてない気がする。やはり無理をせずに寝れるだけ寝たほうが良いのだろうか……


 人が多くて掲示板が見れないので、酒場へと移動してカウンターに座って空くのを待つことにする。


「ホットミルクをください」


 掃除をしていたウエイトレスさん(普通の)に注文をして、今日の予定を考える。


 ここの制服結構ミニで太ももが眩しいな、胸も強調されてるし美人が多いところを見ると採用基準に「美形」が含まれてそうだ。


 って違う今日の予定だ。えっと、いつもの薬草採取をして、森へ行って適当なモンスターを探して実験をする。終わったらレベルアップ確認をしてギルドで報告して終了かな。


 そういえば今日からEランクか、いつもの薬草採取じゃなく違うの受けられるのか、どんなのがあるんだろう。内容次第では薬草採取を続けるのが無難かな、ポーション作って露店販売でもしてさっさとお金貯めないといけないしね。


 シルビアを買うのに40金貨だとして、あと30金貨ぐらい足りない。

 武器にエンチャントでもして売っても良いんだけど、目を付けられるとこないだみたいに揉め事に巻き込まれそうだし、代理販売か変装でもして売るとかしないとダメかな……

 あれ、変装ってもしかして、偽装でどうにかなるんじゃ?


 すっかりと忘れていた偽装スキルを思い出し、ポカーンとした顔をしていたら、ウエイトレスさんが心配そうな顔をしてホットミルクを置いていく。


「お待たせしました、ホットミルクです」

「あ、はい、ありがとうございます」


 ミルクを飲んでホッと一息つく。驚くことにただ暖めただけじゃなく砂糖を入れて暖めてあるらしくほんのりと甘めで美味しい、ここの料理人は気の利いた細やかな配慮ができる人に違いない。

 ホッコリしているところに、後ろから野太い腕が伸びてきて私の顔をがっしりとホールドする。


「あぁら、朝からミルクだなんてお子ちゃまね、お姉さんのミルクは美味しいかしら?」


 なにか、人生について軽く疲れを感じて思わず口元が緩み、含んでいたミルクがこぼれて野太い腕にジャバっと掛かる。


「ちょ、なんてことするの、汚いわねぇ、私にミルクをぶっ掛けるだなんて、十年早いわよっ」

「うるさい、朝の爽やかなひと時をぶち壊されて気分悪いんだ。用が無いならさっさと仕事にもどってくれ」


 不機嫌を隠すことなく丁寧語もどこかへ行き素で怒鳴る。 そんな私を見て人差し指を立てて揺らす。


「ちっちっち、そんなこと言ってもダーメよ。今日は待ちに待った講習会の日なのよぉ、じっくりしっぽりアタシと親睦を深めましょうね」

「ああっ、忘れてた、講習会だっけか今日って……受講は任意だったよね? また来月受けるから今日はパスで!」

「任意じゃなくて、依頼を受けてれば日付を変更できるってだけなのよ。だから今日受講してね、そうじゃないとDランクへは昇格できなくなるからね」


 Dランクへの昇格には初心者講習会に出てないとダメらしいので、しかたなく諦めて講習会に出ることにした。座学で3時間とお昼を挟んで午後から実技を3時間だそうだ。




 ギルドの奥には300m四方の鍛錬場と2階建ての宿舎があり、その隣に別館でスキル訓練用の施設がある。今日の座学はその別館の1部屋で行われるそうでそちらへ向かう。


 隣の宿舎と同じ程度の大きさの2階建ての建物で、中に入るとホテルのようなエントランスがあり、フロントでギルドカードを提示して申請書を書いて規定料金を払うと中の部屋を借りることができるそうだ。

 昨日のような魔法結界を張った部屋がいくつかと、調剤器具などが完備された部屋など、実験用の機材が別途貸し出ししてもらえるようになっているらしい。


 今日は講習会なのでギルドカードを提示すると1階の講堂へ案内された。 中に入ると大学の講義室のように階段状に机と椅子が設置されていて、そこにはすでに3人ほどがいて銘々好きなところに座っている。

 私も中に入り後ろの方に座り周りを観察する。


 教卓のすぐ前に座っている10代半ばぐらいの女の子2人、茶系ショートカットちゃんはややキツ目の顔立ち、装備は革鎧に鉄片が要所要所に縫い付けられていて武器はブロードソード左に佩いている。

 隣の茶系ボブカットちゃんは丸顔で日本人形みたいなふっくらした感じ、同じ革鎧で胸部のみ鉄片を入れている。武器は右にワンドを挿していて左にショートソードを佩いている。


 左の窓辺に座っている20代前半ぐらいの金髪セミロングさん。金髪から覗く長く尖った耳がチャームポイント。袖口に金糸銀糸の円環魔方陣が縫い付けられた紺のローブを着て、だぼっとしているが傍目からでも分かるふくよかな母性、ぐっじょぶエロフ、内心で親指立ててたら軽く睨まれました。おっぱいガン見しすぎた?

 

 ざっと見渡して一番強そうなのはやはり長寿エロフさんでしょう。続いて教卓前の魔法戦士と横の戦士そして私といった感じですね。


 さて、さっき思いついたので実験してみよう偽装スキルの検証だ。普段は「知る者」で人を鑑定すると魔力反応がでるので、察知系のスキルを持っているとバレる危険性があるのだが、魔力反応を偽装で隠すことが出来ないかと言うことだ。まぁバレても新人だから何をされているか分かるヤツがいるかどうか……エルフさんにはバレるかもだけど、ある意味丁度良い判断材料になると思う。


 まずは偽装で「知る者」の魔力反応、及び自身からでる魔力反応を偽装して隠すように念じてからスキル起動。


 おー、見えたが能力値やスキルまでは見えないが、これだけ見えれば十分だと思う。そして前に座っている二人は全く気づいていない。

 前列の左側/右側

種族  人間/人間

性別   女/女

レベル  7/8

ジョブ 戦士/魔術師

年齢  16/17

属性   火/光

HP  87/56

MP  60/112


 ボブカットちゃんは魔術師だから魔力感知ぐらい持ってそうだけど反応なし。8LvでMP112ってことは知能と精神が60前後あるってことか、人間の能力限界値が60だからかなりがんばってるね。


 問題のエルフさんは発動直後に周りを見渡したので、ドキッとしたのだが、すぐに窓の外を眺め始めたので気づいてる雰囲気が無い。


種族  エルフ

性別  女

レベル 12

ジョブ 魔法戦士

年齢  32

属性  水

HP  82

MP  216


 12Lvとは言えMPが異常に高い、もしかしたら能力の「魔導の血統」を持っているのかもしれない。しかし、魔法戦士というわりには剣を帯びているようには見えないんだけど、暗器スキルでも持っているのだろうか。まさか徒手空拳スキルで殴り魔法とかは無いと思いたい。


 しばらくして教室の扉が開きエルディエットが入ってくる。ギルドマスターって暇なのか? と疑問を感じる。


「おはよう諸君。私はこの冒険者ギルドのマスター、エルディエットだ。今日は新人講習会に来てくれてありがとう。この講習会はギルドに加入したEからFランクまでの新人を対象に、冒険者としての知識を身に付け死亡率を減らす為の物で、君たちの財産となるものだと考えている」

「午前の部は座学にて、国家間の関係や地理について学んでもらう。次に個別でスキル相談を行った上で、スキルの構成について学んでもらう。昼食休憩を挟んで午後からは戦闘訓練となる。各自のスキル強化の指導も行えるので相談してほしい。以上だ、何か質問はあるか?」


 えっと、どちら様で? と言いたいぐらいに普段の態度とかけ離れた男らしい頼れるギルドマスターっぷりだ。どっちが地なのかは分からないが茶化して良い雰囲気じゃないので沈黙する。


「では講義を始める。書き取りをしたいものは紙を取りに来い……では始めさせてもらう」


 全員が紙を取りに行き書き取りをしながら質疑応答があり、有意義な時間が過ぎていった。ギルド資料室にあった本は多少古かったのか、載っていない国家があったりし、街道や風土など地理を書きとめていく。

 2限目は別室に1人ずつ呼び出されスキル相談がなされた。スキル申告は自主性を重んじ秘匿して構わないと言いつつも、このレベル帯で隠すスキルなんて普通は無いがと笑っていた。 スキルの相談はしようが無いので聞いてみたかった事を幾つか質問する。


「ジョブが二つある人が居るって話を聞いたんですが、そんな人が居るんですか?」

「えっと、たしか大昔に結界が崩壊したときにその結界の再構築や魔物の進行を食い止めていたという英雄達が、セカンドジョブを持っていたって話は聞いたことがあるわ、今でも極稀にだけどセカンドジョブを持っていると言う人が居るらしいんだけど、確認する方法がないから眉唾物ね」

「そうですかー、ところで実家にあった書物に錬金術師に付いて書いてあったのですが、錬金術師ってジョブはあるんですか?」

「錬金術師ですってっ、王都の宮廷魔術師の1人が錬金術師だって話しだけどそのジョブは秘匿されていて成り方も、どのようなことが出来るのかも伝わってないんだけど、そんな書物があるの? ぜひ読ませてもらいたいわ」


 身を乗り出して手をガッシリ掴まれた。顔近い息が掛かるのを仰け反ってかわしつつ話もかわそうとする。


「いや、錬金術師は無から武具を作り出せるとか、金を生み出したり人体を蘇生したりできるとかなんとか、そんな眉唾な話しが書いてあっただけですよ。詳しく何ができるとかそういうことが書いてあったわけじゃないんで、そんなジョブが本当にあるのかなー程度に聞いただけなんですよ」

「んー、でも読んで見たいわね、知識は噂話程度のことでも何かのヒントになるものだしね」


 渋ったのだがいつか実家へ帰ったら持ってくると約束させられる。とんだ薮蛇だったが王都に1人居ることが分かった、いつか合ってみたいものだ。




 そしてスキル系統や解っているスキルなどの話しをして、今後どのようにスキルを取っていったら良いかなどジョブ別指導があり。午後からの実技でそれらを実践する予定となり午前は終了した。


 お昼休憩ではギルドの酒場で無料でランチセットが振舞われ、初のギルド酒場食事となった。鳥の焼いたのに酸味のある果実のソースが掛かったものとパンにホワイトシチュー、味付けは濃い目でどれも美味しく、食事をしつつ新人同士で自己紹介をしてスキルについて話あった。


「私は戦士だから戦技を軸に剣術を覚えて火力を重視したいんだ。防御法まで手を出すと厳しいんだが、1,2個ぐらいは覚えたほうが良いのか、気孔術で身体強化を覚えて、攻防両面を鍛えるべきかと言うところだな」

「そうね、私はそれを魔法で補佐しつつ魔法攻撃を主体に、接近戦ではショートソードで身を守れる程度には鍛えようと思ってるわ」


 この2人は教卓前に座っていた少女たちで戦士はジェシカ、魔術師はロアンナ、王都からこの迷宮都市へ移住してきて、この町で実力をつけようとしているそうだ。


「防御法も気孔術も両方使えるようにしたら良いんじゃない? なにも可能性を絞る必要は無いでしょ、パートナーと話し合って良い方を先に取って行けばいいんじゃない?」


 窓際にいた金髪のエルフは本名は長いので、フィールと呼んでと言っていた。森の奥で停滞したような時間の生活に嫌気が差して飛び出して来たそうだ。


「私もですがまだ低レベルなんですし、焦らず着実に技術を身につけて行ったら良いんじゃないですか? まずは目標を持つことをお勧めしますよ」


 そう言ってジェシカを諭すのだが、そろそろ皆も慣れたのか私の年相応らしからぬ発言に驚くことも無く同意を持って頷いてくれる。


「でも本当にエイジア君って7才じゃないよね、遥かに年上に思えるけど、実はエルフの血を引いてて実年齢が上とかじゃないの?」

「そうだね、なんか見た目こんななのに言われてるけど全然腹が立たないんだよね、年上のお兄ちゃんに諭されてる気分だよ」


 2人から尊敬と疑いの眼差しという複雑な視線を向けられながら、ごまかすように照れ笑いをしておく。


「さて、そろそろ実技の時間ですし訓練場へ行きましょう」




 そして午後からは先輩冒険者も交えての訓練となり、個別にスキル指導をしてもらいつつ新人講習会は終了した。


「「「「ありがとうございました」」」」

「また何か分からないことがあれば何時でも聞きに来なさい。鍛錬は訓練場を使えるので先輩冒険者に聞いても良いし、受付で言えば誰か紹介してもらえるので各自励むように。では解散」


 そして銘々宿に帰っていくなかいつもの串焼き屋へ来ている。おっちゃんに10本焼いてもらって、いつものように1本を頬張るのだが、可愛いお腹の虫の音が聞こえない。

 ちょっと早く来すぎたかと思い、日が暮れるまで待っていたのだが、奴隷がそうそう自由に出入りできるわけが無いと諦め、買いすぎた串焼きを商館へ持っていく。


 日2銀貨でポーターとして雇えるなら、買い取るまでの間雇いっぱなしにして迷宮に行かないで済むようにしてしまえば良いんじゃないかと思いつき、その契約をしに来たのだが支配人を呼び出すと不安そうな顔のアルルが応接室に入ってきた。


「坊ちゃん悪いんだけど、シルビアは今日からポーターとして迷宮に行ってるんだよ。2、3日の予定で出て行ってるから、早くても2日後にならないと帰ってこないんだよ」




 お読みいただきありがとうございます。

 次回は20日頃になります。


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