魔法使い視点5
魔法使い視点です。
眼を覚ますと牢屋であった為、私は昨日の出来事を思い出した。
逃げ出す為に牢屋を壊そうと、魔法を唱えるが、まったく発動しない。
何度試しても結果は変わらない。
「どう、して。」
魔法とは、すなわち世界への要求。
対象に呼びかけ、魔力を対価にどのようにしたいかを指示する。
相手を炎で焼きたければ、『炎よ、我が敵を焼き払え』と、個人により差異はあれど、詠唱はこのようになる。
先程から炎だけでなく、苦手な水や石にも呼びかけているが、呼び掛けに応じる気配が無い。
呆然としていると、牢屋の扉が開き、あの男が入ってくる。
「よう、ガキ。元気そうだな。」
ニヤニヤと不快な顔をしている男に向かって、私は叫ぶようにして言い放った。
「炎よ、我が敵を焼き払え!」
しかし、炎が現れることなく、男はニヤニヤと気持ちの悪い笑みを浮かべている。
「無駄なんだよ。『奴隷の首輪』を嵌められた時点で魔法を使う事は出来ねぇからな。」
そう言うと、男は近づいて私を殴る。
魔法が使えない私と男では力が違い、容易に殴り飛ばされる。
「おい、運び出せ。」
男が誰かに命じると、いつの間にかいた男たちに身体を担がれて、外にあった場所に入れられた。
先程殴られた痛みで身体は動かず、どこに運ばれているかも分からない。
どれだけの距離を馬車が走ったか不明であるが、止まった為、目的地へ着いたのだろう。
「降りろ。」
見たことの無い男が馬車の扉を開けて命じる。
身体は動かない。
傍に控えていた男たちに担がれて馬車から下ろされる。
連れられた場所はやはり牢屋。
違う点あるとすれば、昨日の場所に比べて綺麗ということだ。
「明日、貴様のオークションがある。それまでに良い飼い主に買われる様に祈っていろ。それがお前にできる最後のチャンスだ。」
オークション。
私は奴隷として売られるのだ。
裏で人が売られる事は知っていたが、自分に関係の無い事だと、自分は売られる事も買うことも無い。関わることも無いと、他人事のように。
冒険者になると決めた時は、いつどこで死んでも構わないと考えていた。
しかし、こんな結果になるなんて予想していなかった。
それがたまらなく悔しい。
涙を我慢することができずに溢れだす。
だから祈ってしまった。こんな世界など、壊れてしまえと。
最近魔法使いが主役に思えてきました。




