願い
少女の前に姿を表すと、その瞳は絶望に染まっていく。
俺が二日前のゴブリンだと分かったのだろう。
必死で杖を構え、いつでも魔法が放てるように狙いを定めている。
その姿はあまりにも痛々しい。
奴隷の首輪は、付けた者より魔力が高ければ命令にも抵抗できる。
この森まで逃げてきたとするならば、かなりの魔力を持っているのだろう。
見た目はまだ12・3の子供だというのに。
「小娘、杖を俺に向けるということは、殺される覚悟があるんだろうな?」
その言葉を聞いて、瞳に宿っていた絶望が、希望に変わる。
「私は、死ねるの?」
返されたその言葉に、歯を食い縛る。
奴隷として生きるより、人として死にたい。
そう言って死を望んだ者を何人も見てきた。
それは、こんな少女がしていい眼ではない。
無言で少女へと近づき、アイテムボックスから取り出したナイフの切っ先を少女に向ける。
「質問だ。もしも再び人として産まれたら、どうしたい。」
死ねば新たな命となって生まれ変わる。それがこの世界の考え方だ。
「私は、世界を旅してみたい。いろんな人と合って、いろんな物を食べて、いろんな場所を回りたい。」
そう言うと、涙が溢れだす。
「嫌だよ。死にたくないよ。生きたいよ。」
溢れだす思いに耐えきれず、嗚咽混じりに言う。
「なら願え。次の生でその願いが叶うように。」
そう言って、振り上げたナイフを降り下ろした。




