ぶへぁ
やってしまったものは仕方ない。
そう割りきって歩き出す。
驚いていた戦士は、直ぐに警戒し、石を持つ手に力を込める。
「安心しろ。殺すつもりならここに連れてきたりしない。そこで寝てるバカを起こすだけだ。」
そう言って、いまだ意識を戻さないバカに向かって進んでいく。
そして、アイテムボックスから水の入った容器を出して、水を顔にかける。
「オラ、さっさと起きろ。クソボケメガネ。」
「う。」
うめき声の様に声をもらすが、なかなか眼を覚まさない。
ムカついたので、容器の口を鼻に付けて、鼻から水を流し込む。
「ぶへぁ!」
奇声と共に眼を覚ましたバカは、肩で息をしながら呼吸を整えようとしている。
ある程度呼吸が整ったことで、周りを見る余裕ができたのだろう。戦士を見つけて安心している。
だが、俺を視界にとらえると、一気に青ざめる。
「眼が覚めたか。」
俺が話しかけると、戦士のように驚いている。
「で、ここに何のようだ? クソボケメガネ。」
そう言ってやると、これでもかというくらいに眼を見開く。
「まさか、ラッシュさん、ですか?」
「あぁ。あの戦争で、魔将が一角、暴風のセインを討ったときに呪われた。」
その一言に二人が息を飲む音が聞こえる。
魔将。その存在を知らない者はこの世にいないだろう。
魔王が産み出した魔人。その中でも、炎・水・風・土の四属性において最強と呼ばれる魔人。
第二次魔王戦争の時に、灼熱のイグスが討たれて以来、魔将は討たれたことはなかったが、今回の戦争で暴風のセインが討たれたことで、人側が優勢になり、辛くも勝利を得ることができた。
「で、ここに来た用件は何だ。」
「それは。」
言葉を濁して迷った末、アイテムボックスから一枚の紙を取り出して渡してくる。
「これが私がここに来た理由です。」
中身を確認すると、汚い字でこう書かれていた。
『ゲメナへ
この紙を読んでいる頃には、私は北へ向かっているだろう。
あの戦争から4年が経ち、王都の復興もほとんど終わっている。だからこそ、貴族たちが痺れを切らして権力を振るいだすと思う。だから貴族の天敵であるラッシュを捕まえて来てほしい。あいつはルーガスの西の森にいるから。よろしく。
グレン』
読み終えた俺は、その紙を破り捨てた。




