月明かりが照らすのは
レイロはオオカミ型の獣人、オンキに向かって剣を振り下ろした。レイロの狙いはオンキの首。それに向かって剣を振り下ろしたため、ムラサメはえげつないと思いながら目を背けていた。オンキの悲鳴を聞き、終わりが気になったムラサメは恐る恐る視線をオンキに向けた。その光景を見て、ムラサメは驚いた。
「は……ははは。危なかったぜぇ……」
ムラサメが見たのは、体が倍以上に膨らんだオンキの姿だった。剣を振り下ろしたレイロも、体形が変わったオンキを見て驚いていた。
「体が膨らんだだと……まさか、それがお前のスキルか?」
「残念、不正解だ。俺のスキルは<キャッチイヤー>って名前だ。好きな音、聞きたい音だけを聞き分けることができるスキルだ」
「では、どうして体が……」
「俺はオオカミの獣人でも、少し特殊な体質を持っているんだよ! 月明かりが強い日は、こうやって体がでかくなっちまうんだよ!」
そう言いながら、オンキはレイロに向かって右の拳を放った。レイロは剣を使って防御しようとしたが、オンキの拳は予想以上の破壊力を持っており、レイロの剣を粉砕しながらレイロの腹に拳を鎮めた。
「ウガァッ!」
「レイロさん!」
部下たちはオンキを睨み、一斉に飛びかかった。
「ハッ、雑魚共が! 格の違いってのを教えてやるぜ!」
と言って、オンキは魔力を開放した。その瞬間、オンキの姿は消えた。
「なっ! 姿が消えた!」
「逃げたのか?」
戸惑う部下たちに向かって、レイロは叫んだ。
「逃げろ! あいつはただ速く走っているだけだ! このまま立っていると、攻撃の目標にされるぞ!」
レイロの叫びを聞き、部下たちは逃げようとしたが、遅かった。オンキはさらに鋭くなった両手の爪で、レイロの部下たちの体をバラバラに切り裂いた。
「な……ああ……」
頼りになる部下たちが、バラバラ死体になって宙に浮かぶ光景を見て、レイロは唖然としていた。そんな中、オンキはにやりと笑ってこう言った。
「ハハッ! 使えない雑魚を部下に持つと、上司は大変だねぇ」
「この外道が!」
レイロは叫びながら立ち上がり、魔力を開放した。だが、オンキは笑いながらリムジンに向かって走った。
「バーカ! プッツンした雑魚の大将を相手にするかっつーの! 俺の狙いはドンナ王女の命だけだ!」
「クソッ、待ちやがれ!」
走り出したオンキを見て、ムラサメは急いでリムジンに向かって走り出した。
リムジンの扉を無理矢理壊し、オンキは車内に入った。
強い魔力を感じる。ドンナ王女の周りに強いのが何人かいるな。それと……離れた所に見知った弱い魔力を感じるねぇ。
そう思いながら、オンキは歩き始めた。彼が最初に向かったのは、ムラサメたちに倒されて拘束されているハッタンとオレムとその部下の元。
「しつれーするぜー」
そう言いながら、オンキはハッタンたちが閉じ込められている簡易的な部屋の扉を開けた。手足を縛られ、口をふさがれているハッタンたちは、オンキの姿を見て歓喜の声を上げた。
「情けねぇ。それが俺たちアバンドルアの戦士の姿かよ」
と、オンキはそう言いながら呆れたように頭をかき、ハッタンたちに近付いた。早く助けてくれと言いたそうなハッタンたちが動いたが、その様子を見てオンキは笑った。
「思い出した。情けないお前たちに、ボスから伝言があったぜ。まともに仕事ができねー奴は生きる価値がない。くたばっちまえってな!」
オンキはそう言って、ハッタンの脳天に向かって爪を突き刺した。オレムとその部下たちは悲鳴を上げたが、その悲鳴を聞いてオンキは笑みを浮かべた。
「そんな風に騒ぐなって。今すぐにこいつと同じ場所に送ってやっからよぉ……」
騒ぐオレムたちを見て、オンキは牙をむいて飛びかかった。
リミスはハッタンたちの悲鳴を聞き、何かが起きていると察した。
「ソワン、プレイ、王女の護衛を任せるわ」
リミスの言葉を聞いたソワンは驚いたが、プレイはソワンの口を塞いで代わりに答えた。
「了解。リミス、気を付けてね」
「うん」
プレイの言葉を聞き、リミスは去って行った。ソワンは急いでその後を追いかけようとしたが、プレイは後ろからソワンの胸を揉みまくり、動きを止めた。
「あぁ……何するのよプレイ⁉ もしかして、ムラサメのスケベが移ったの⁉」
「周りを見なさい。中にいるはずのムラサメとレイロさんたちがいない。何かが起きているわ」
「確かに」
その時、ムラサメが車内に入ってきた。ムラサメはソワンとプレイ、ドンナが無事であることを確認し、安堵の息を吐いた。
「はぁ……無事でよかった」
「何かが起きたわね。簡単でいいから状況を教えて」
「アバンドルアの団員がこの森にいやがった」
「そいつの仕業ね。今、リミスがそいつを相手にするって言って奥に行ったわ」
「すれ違ったか。俺がリミスの後を追うから、王女の護衛は任せた!」
と言って、ムラサメは急いで走って行った。ソワンはムラサメとリミスが二人っきりになることを不安に思ったが、今は個人的な感情よりも、ドンナを守ることを優先しなければと思い、両頬を軽く叩いた。
「王女、私たちが守ります」
「とにかく、ムラサメとリミスが戻ってくるまで待機していましょう」
「は……はい」
異常事態が起き、ドンナは不安な顔をして答えた。
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