深夜の襲撃者
リミスたちがシャワーを浴び、ムラサメとレイロはのんびり会話を楽しむ中、暗闇の中に一つの人影があった。
さて、あれがドンナ王女のリムジンってわけねぇ。
オオカミ型の獣人の男は心の中でそう呟き、音を立てないように素早くリムジンまで走った。
この男はアバンドルアに所属する戦士、オンキ。彼もまた、ハッタンとホッタン、オレムと同じようにムラサメたちがベッロ王国に到着するまでの道のりで、ドンナ暗殺を命じられた外道の一人である。
オンキはリムジンの中の構造を知らない。そのため、自身の聴力を頼りにして調べることにした。
魔力を派手に使えばばれちまう。だけど、俺は悟られないように魔力を使えるんだよねぇ。
そう思いながら、オンキはばれないように魔力を開放し、自身のスキルである<キャッチイヤー>を発動した。オオカミ型の獣人であるオンキは、もともと聴力がいい。何キロも先で落ちたコインの音もしっかりと聞き分ける。そして彼のスキルの<キャッチイヤー>は自分が聞きたい音を確実に聞き分ける能力があるのだ。それにより、中で話をしているムラサメとレイロの位置、そしてリミスたちのシャワーの音を聞き分けることができた。
ムラサメとか言う猫女と、男が一人話をしているのか。シャワーの音が聞こえる。ケッケッケ。女たちは水浴び中か? きれいな体を血まみれにするってのも、興奮するねぇ。
そんなことを想いながら、シャワーの音を頼りに移動を始めた。しかし、レイロの部下がオンキをライトで照らした。
「誰だ、お前は?」
「チッ」
オンキは舌打ちをし、素早く飛び上がってレイロの部下に攻撃を仕掛けた。だが、レイロの部下は剣を手にしてオンキに向かって振り上げ、反撃した。
「うおぅ!」
思わぬ一撃を受けたオンキは、空中でバランスを整えて着地した。斬られた個所は左の頬。そこからは少量の血が流れていた。
「酷いことをするねぇ。ハンサムな俺の顔が台無しになっちゃったよ」
「それじゃー整形のお時間だな」
「私たちがやってやるぞ」
そう言いながら、ムラサメとレイロが現れ、オンキに攻撃を仕掛けた。レイロの斬撃をかわすことに成功したオンキだが、ムラサメが放ったネコノテフックを腹に受けてしまった。
「グォホォッ!」
「俺と同じ獣人か。オオカミみたいな耳をしていやがる」
「オオカミ型の獣人だ。奴らは耳もいいが、それ以上に厄介なのは爪の鋭さ、鋭い牙だ」
レイロの言葉を聞き、オンキは立ち上がって笑みを浮かべた。
「その通りだハンサムさん! ドンナ王女の柔肌をこの歯とこの爪でズタズタに! エロく! 真っ赤な血で染めてやろうと思ったが、その前にお前を血まみれにしてやるぜ!」
オンキは叫びながら、レイロに飛びかかった。
オンキの接近を察したリミスたちは、急いでシャワー室から出て、着替えをしていた。
「早く避難するわよ!」
「こんな時に襲撃してくるなんて」
「敵はいつだって襲ってくるわよ。こういう状況が一番やばいって思ってたし」
慌てるリミスとソワンとは対照的に、プレイはいつもの様子だった。リミスは火の魔力で自身とドンナの髪を乾かしながらプレイの方を見た。
「プレイは敵がいるって知ってたの?」
「知らなかったわよ。いるだろうとは思ってたけど」
「けど、そこまで警戒してなかったわよ」
ソワンの問いに対し、プレイは笑みを作ってこう言った。
「ムラサメとレイロさんたちが動ける状態だったからね。ま、いざとなったら<イノセントワールド>でナグリバチや大量のムカデを出して動きを封じればいいって思ってたのよー」
言葉を返しながら、プレイは大きなあくびをした。リミスはムラサメのことが不安になり、外の方を向いた。
レイロの部下たちは一斉にオンキに攻撃を仕掛けていた。
「おいおい、一対多数は卑怯じゃねーのか?」
「裏ギルドの貴様に言われたくはない!」
「ここで首をはねてやる!」
レイロの部下たちの強くな言葉を聞いたオンキは、笑い始めた。
「雑魚が俺の首をはねるとか、ジョークにしちゃー上出来だ! 満点をくれてやる!」
「それじゃあお前はもっと笑える冗談を言えるのか?」
そう言いながら、ムラサメは地面に着地したオンキは向かって足払いを仕掛けた。オンキはすぐにジャンプして、足払いをかわした。
「悪いが俺は殺しのセンスはあっても冗談のセンスはないんだよねぇ! 周りからは笑い上戸って言われてっけど!」
オンキはムラサメの方を見て、魔力を開放した。激しい強風が舞い、オンキはその風を利用してムラサメに向かって急降下した。
「この爪で、お前の首を貫いてやる!」
「外道の願いは叶えられないもんだぜ」
ムラサメはそう言って、素早い動作で風の刃を放った。
俺と同じ風の魔力か!
迫る風の刃を見て、オンキは急いで横に移動した。風の刃をかわすことに成功したオンキだが、目の前にはオンキを睨むレイロが立っていた。
「隙ありだな」
と言って、レイロはオンキに向かって剣を振り下ろした。次の瞬間、オンキは悲鳴を発し、えげつない光景だと思いながらレイロの部下は目をつぶり、ムラサメは驚いて口を開けていた。
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