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静かな獣は時に荒く動く


 ムラサメはレイロにドンナの護衛を任せ、外にいるレイロの部下たちに近付いた。


「おーい。敵が近いから車の中に入ってくれ」


 と、ムラサメは小声でこう言った。レイロの部下たちは驚いた表情をしたが、ムラサメは静かにするようにとジェスチャーした。


「俺の予想だけど、敵は威嚇射撃をしてお前たちを混乱させ、その隙にドンナ王女を狙うつもりだ。威嚇射撃が当たるかもしれねーから、車の中に入れ」


「ですが、車に何かが……」


「レイロからこのリムジンは頑丈だって聞いた。さっきの戦いも、爆発を受けてひっくり返ったけど、異常もなく走れただろうが。とにかく入れ」


 ムラサメの言葉を聞き、レイロの部下たちは渋々車の中に入った。レイロは部下たちが車内に入ったことを知って驚いたが、ムラサメが軽い様子で右手を上げた。


「俺が入れって言ったんだ。悪いけど、レイロさんも車の中に戻ってくれ」


「敵が近いからか?」


「そーだ。それと、リミスたちが動くのに邪魔になる」


「え? リミスさんたちがいるんですか?」


 ムラサメの言葉を聞いたドンナが、顔を上げてこう聞いた。ムラサメは頷き、リミスたちがいる方向を見た。


「ええ。後は、リミスたちがやってくれます」




 ソワンはクルアを手にし、片っ端から近くの木を斬り倒していった。リミスは斬られた木に触れ、<フワフワタイム>を使って動かした。


「本当にこんなのが意味あるのかしら?」


「でも、でかい武器を振り回して戦うようなもんだから、攻撃が当たるかもしれないわね」


 話をしながら、リミスとソワンは動いていた。そんな中、リミスが斬った木の後ろに、拳銃を構えて隠れていた男が現れた。


「みーつけた!」


「ゲッ‼」


 男はすぐに銃を構えたが、<フワフワタイム>によって操られている木が男に命中し、男は吹き飛んだ。


「プレイの読み通りね」


「さて、暴れるわよ!」


 その後、ソワンは次々と木々を切り倒し、リミスは<フワフワタイム>で木々を操った。木々の後ろに隠れていたオレムの部下たちは、情けない悲鳴を発しながら動く木々から逃げていた。


「いやー! 助けてー!」


「オレムさん! こんなんじゃ俺たちやられちゃいますよー!」


「何とかしてくださーい!」


 部下たちはオレムに助けを望んだが、オレムは姿を見せたらやられると思い、動かなかった。




 クソッ! 敵は荒い手段をとったか!


 オレムは心の中で舌打ちをしながら、周囲を見回した。リミスの<フワフワタイム>によって木々は暴れるように動き、そのせいで部下たちは倒されていった。


 部下たちはやられる! それに、ドンナ王女がいるリムジンも動きがない! 周りにいた見張りがいない、クソ! クソクソ‼ どさくさに紛れて車内に避難したか!


 予想外の展開を受け、オレムは徐々に思考回路がおかしくなっていた。すぐにドンナを殺したいのだが、リミスたちの手によって部下たちは次々と倒されている。下手に動くと、司令塔である自分も倒れ、部下たちはますます混乱してしまう。そう考えたオレムだが、この状況を打破する方法は思い浮かばなかった。


 こうなったら……一か八か、俺が前に出るしかないか⁉


 半ばやけくそ気味になったオレムは、隠れている木の裏から身を乗り出し、リムジンに向かって走り出した。だがその時、プレイが乗るイダテンクモがオレムに激突した。


「ガハッ……」


「危ない! もう、急に飛び出してこないでよね、おっさん! 猛スピードで走るイダテンクモは止まらないんだから!」


 そう言いながら、プレイはイダテンクモから飛び降り、吹き飛んで倒れたオレムを両膝で攻撃しながら着地した。攻撃を受けたオレムは小さく悲鳴を上げ、気を失った。オレムの部下は、その様子を見て叫んだ。


「オレムさん‼」


「そんな! あなたがやられたら、俺たちは一体どう動けばいいんですか⁉」


 部下たちが鳴き声を発する中、武器を持ったリミスとソワンが後ろから近付いた。


「どう動けばいいか分からないの? いい歳した大の大人が、上の人間に言われないと動けないとか情けないわね」


「とりあえず、くたばればいいと私は思うわ」


 部下たちは後ろを見て、仁王立ちをしながら自分たちを睨むリミスとソワンを見て、悲鳴を発した。


「うわァァァァァァァァァァ‼ 化け物だ‼」


「あの木を動かしてたのはこいつらか⁉」


「おっぱいがでかくてかわいい子なのに、性欲より恐怖が勝るよ!」


「無理だ、俺たちじゃ絶対に勝てない!」


 オレムの部下たちは急いで逃げようとしたが、リミスは<フワフワタイム>で無数の木々を操り、逃げる部下の上に落とした。部下たちの情けない声を聞きながら、ソワンはため息を吐いた。


「はぁ、こんなのに時間を取られてたなんて……」


「まだまだ私たちも青いってことね」


 リミスはため息を吐いてこう言った。その直後、ムラサメがリムジンから出て、リミスとソワンに近付いた。


「お疲れ。怪我はないようだな」


「そっちは? ドンナ王女に傷はない?」


「かすり傷一つもない。リミスたちのおかげだよ」


 そう言いながら、ムラサメはリミスとソワンの肩を叩いた。その時、ムラサメがどさくさに紛れて胸を触ろうとしたのに気付き、リミスとソワンは魔力を開放した。


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