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大きな壁が現れたら


 オレムは自身が発した跳弾が凍り付き、下に落ちる光景を目の当たりにしていた。


 俺の弾丸が凍っちまうなんて! だが、これであのガキの中に秒で物を凍らすスキルを持っている奴がいることが判明した。無暗に近づいたら、氷漬けになるな。それに……虫を出す奴もいる。あのでけーハチはスキルで作った幻だ。物を飛ばして凍らせ、虫を出すスキル。くだらないスキルだと他の連中は笑いそうだが、こいつはかなりの強敵だ!


 そう思いつつ、オレムは腰にある小さな入れ物を見て、中に入ってある予備の弾丸、そしてマガジンを見た。まだ底が見えなかったので、余裕はあるとオレムは思った。その後、ここにいるのがばれているであろうと考えたオレムは、急いで別の木の後ろに隠れた。その時に発した足音を、リミスは耳にしていた。


「そこね!」


 と言って、リミスは<フワフワタイム>で鋭利に折れた木の枝を動かした。それを見たオレムは舌打ちをしつつ、下に落ちていた石ころを動く木の枝に向かって投げた。石ころは木の枝に当たり、下に落ちた。


「ふぅ……」


 これで木の枝は動かないだろうとオレムは思い、安堵の息を吐いた。そんな中、部下からの連絡が入った。


「大丈夫ですか、オレムさん!」


「ああ。跳弾を使って奇襲を試みたが、失敗した」


「では、俺たちがあいつらに奇襲を仕掛けます」


「止めろ。あいつらの仲に、物を凍らすスキルを持っている奴がいる。下手に近付いたら、氷の彫像の完成だ」


「じゃあどうします? 動かないとあいつらにやられるか、ドンナ王女に逃げられます。王女を始末するなら今しかないと」


「焦るな。そうだな……おい、あのガキどもの強さを目の当たりにして動揺してたが、俺たちの狙いはドンナ王女の命だ。ガキなんて放置して、王女の命を狙えばいい」


 オレムの言葉を聞き、部下は納得の声を出した。


「そうですね。目の前に大きな障害が現れたので、そっちばかりに目が行っていました」


「いきなりでかい障害物が現れたら、そっちの方に目が行っちまうからな。だが、冷静になればやるべきことが見つかる」


「その通りですね。ですが、ドンナ王女の周りには護衛がいます。あの中には、ハッタンとホッタンの狙撃コンビを倒した奴がいます。うち一人は、ホッタンを殺した奴です」


「あんな根暗コンビのことなんて忘れろ。やられて当然の雑魚コンビだ。とにかくだ、今から作戦を言う。あのコンビを倒した奴は相手にしなくていい。弱い奴だけ攻撃しろ。隙を見て、俺がどんな王女の額に鉛玉をぶち込む」


「了解です。では、暴れてきます」


 部下は返事をし、トランシーバーの通話を切った。オレムは急いでドンナがいるリムジンが見える場所に向かった。




 オレムが移動したことを察知したリミスたちは、オレムが攻撃しないことを不審に思っていた。


「おかしいわね。攻撃してこないわ」


「雑魚もあれから姿を見せないし……」


 リミスとソワンは魔力を開放しながら話をしていた。プレイは目をつぶって、何か考えていた。


「ねぇプレイ。あんた、考えているふりをして寝てるの?」


「そんなわけないでしょうが。あいつらが攻撃してこない理由を考えてたのよ。今、最悪な答えを導いたから、すぐに王女の元に戻るわよ」


 と言って、プレイはリミスとソワンの手を引っ張りながら無理矢理歩いた。


「ちょっと、いきなりどうしたのよ?」


「あいつらが攻撃してこない理由は二つある。一つは私たちに居場所がばれるから。二つはすでにこの場にいないから!」


「この場にいない?」


 リミスは二つ目の理由を聞き、はっとした表情になった。


「もしかしてあいつら、私たちを相手にするよりか直接ドンナ王女の命を狙いに⁉」


「正解。あいつらの狙いはドンナ王女の命。たとえ私たちが大きな壁としてあいつらの前に立ち塞がっても、抜け道を探して次に進む」


「確かにその通りね。あいつらの目的は私たちを倒すことじゃなくて、ドンナ王女の命だから」


 ソワンの言葉を聞き、プレイは頷いた。


「少し出遅れたかもしれないわ。一気に移動するわよ!」


 と言って、プレイは<イノセントワールド>を使った。現れたのは、巨大なクモだった。


「ええ……クモの背中に乗るの?」


「意外と乗りやすいのよ。それと、結構足が速い! 本当はゴキブリを出したかったんだけど、あんたら気持ち悪がるでしょ?」


「そりゃそうよ! ゴキブリの上に乗りたくなんてないわよ!」


 リミスは大声でこう言ったが、巨大なクモを見て嫌そうな顔になった。


「でも、クモの上にも乗るのは……」


「私もリミスと同じ意見。それだったら、自分の足で走った方が……」


「このクモは普通のクモじゃないのよ。イダテンクモ。普通のクモより足が速い! あーだーこーだ泣き言言ってる場合じゃないわよ!」


 プレイはそう言ってリミスとソワンの手を掴み、高くジャンプしてイダテンクモの背中に乗った。


「うわ……何か慣れない触感」


「お尻の下はクモの背中ってだけで……」


「いずれ慣れるわよ! さぁ、王女のとこまで超特急でお願いね!」


 プレイがこう言うと、イダテンクモは猛スピードで走り出した。


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