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いざ、ベッロ王国へ


 話が終わった後、ムラサメたちはすぐにドンナたちが乗ってきた車に乗り込んだ。ムラサメが先に入って車内の様子を見て、何もないことをジェスチャーした後でドンナたちが乗り込み、その後でリミスとソワンが車に入った。


「うわー、これってリムジン?」


「初めて乗るわね」


 広い車内を見て、リミスとソワンは驚きのあまり声を漏らした。だが、ムラサメは車内をせわしなく見回していた。


「ムラサメ、あんたは驚かないの?」


「転生する前、何回か富豪の依頼を受けた時に乗ったよ。向こうとあまり変わりねー」


 と言って、息を吐いて近くの座椅子に座った。


「もう一度確認したけど、変な物はなかったな。ギルドにいた時、変な奴は近付いてこなかったみたいだ」


「近付いたらすぐにブザーが鳴り響く。鍵の所有者以外が車に降れたら、すぐにブザーが鳴る仕掛けだ」


「ま、王家の車だから、きっちりと防災対策はしているはずだよな」


 ムラサメはそう言って机の上のリンゴを取ろうとした。だが、その前に車内に入ったプレイがリンゴを横取りした。


「おっさきー」


「あ、俺が狙ってたのに」


「長期依頼の手続き面倒なのよ。私一人でやったのよ? 少しはねぎらいなさいよー」


 プレイはリンゴを何度も軽く上に投げ、それから食べ始めた。緊張感のないムラサメとプレイを見て、その度胸を見習いたいとリミスとソワンは思った。


 数分後、運転手がムラサメたちの方を振り向いた。


「では、ベッロ王国に向かって出発します」


「到着までどのくらいかかるんだ?」


「丸一日以上はかかると覚悟してください」


 この言葉を聞き、ムラサメは頷いた。


「丸一日か。何もなければいいが……そういうわけにはいかねーよな」


「不安なことを言わないでよ」


 リミスがぶどうを食べながらこう言ったが、ムラサメは近くの魚を使ったお菓子を食べて言葉を返した。


「敵が近くまで接近したんだ。帰りを狙うってことも考えた方がいい」


「ムラサメの言う通り、敵はドンナ王女の動きを察している可能性があるわ。常に最悪な状況になると思ってて」


 と、プレイが念を押すようにこう言った。




 ウターンから出発して数時間後、ドンナの命を狙う裏ギルド、アバンドルアの襲撃はなく、進んでいた。


「何も起きなければいいのですが……」


 と、レイロの部下の一人がこう言った。その言葉を聞いたムラサメは部下の方を振り向き、ため息を吐いた。


「お前本当に騎士団の一人か? 立派な鎧や剣、盾を持ってんだからちったーどんと構えろ」


「どん……と、ですか」


「そうだ。気合だ気合。何が何でも王女を守るって気構えを常に持っとけ」


 ムラサメの言葉を聞き、レイロは小さく笑った。


「君は不思議な少女だ。猫の獣人は何人か見たことあるが、君みたいな男勝りの獣人はいなかった」


「男勝りっつーか、俺は……元男だ。ま、いろいろあってこんな姿になっちまったが」


 この言葉を聞いたレイロは、目を開けて驚いた。


「元……そうか。確か君は出かける前、転生する前とか言っていたが、転生者か」


「その通り。ま、見た目はこんなだけど、中身は四十のダンディーだ」


「何がダンディーよ。あんたはエロ親父でしょうが」


 そう言いながら、リミスは少しだけ服の胸元を下に下げた。そのことを知ったムラサメの目線は、すぐにリミスの胸元に移動した。それを知ったソワンが音もなくムラサメに近付き、クルアを手にした。


「今、よこしまなことを考えたでしょ?」


「全然考えていましぇーん」


「おい、私の方に目を向けろや」


 鬼のような目で睨むソワンと、ひたすらリミスの胸に目を向けるムラサメを見て、ドンナは小さく笑った。だが、レイロは少し不安になった。


「この方々に任せていいのだろうか……」


「多分大丈夫よ。さっきも敵のスナイパーを倒してくれたでしょ?」


「確かにそうですが……」


「あの人たちなら、きっとあの人のことも……」


「王女」


 レイロの小さく、厳しい言葉がドンナの耳に入った。ドンナは悲しそうに俯き、小さく呟いた。


「そうね……あの人は……」


「もう終わったことです。酷かもしれませんが……忘れてください」


 レイロの言葉を聞き、ドンナは小さく頷いた。そんな中、ソワンはクルアを手にし、ムラサメを斬ろうとした。


「どさくさに紛れてリミスの胸を揉もうとしないで。今、仕事中よ?」


「その言葉をそのままそっくり返すぜ! 仕事中だから同士討ちは止めてくれよ!」


「どさくさに紛れて私の胸を触る奴が何を言っているのかしら?」


 胸を触れられているリミスはイラっとし、怒るソワンにムラサメを押し付けた。


「うわーん! リミスの鬼ー! 乳お化けー!」


「あんたの乳も私と同じくらいでかいでしょうが! ソワン、できるだけ半殺しにして」


「了解」


「ギャァァァァァァァァァァ‼ プレイ、ヘルプミー!」


「四十超えたダンディーでしょ? 大人なんだから、自分のケツぐらい自分でどーにかしなさーい」


 プレイはマスカットを食べながらこう答えた。酷だとムラサメは思ったのだが、突如真面目な顔になり、大声で叫んだ。


「皆、伏せろ!」


 この瞬間、激しい破裂音と揺れが車内を襲った。


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