極秘の護衛
白いフードの集団は、ベッロ王国と言う国の王女ドンナと、その護衛を務める騎士団だった。彼らはムラサメたちに極秘の護衛をしてもらいたいと言った。リミスとソワンは報酬金の金額、そして依頼の相手は超大物だったこともあり、気が動転して混乱していた。
「すまないが、依頼を受けてくれないか? 金額に不満があるのなら、上乗せする」
と、騎士団団長のレイロがこう言った。ムラサメとプレイは顔を見合わせ。しばらく間を置いた。そして、プレイがムラサメの方を見て頷き、ムラサメはそれに応答するかのように頷き、声を出した。
「極秘ってのが気になる。普通に王女の護衛をしてくれって言えば済む話だ。何か事情でもあるのか?」
「それは言えない」
「それじゃあ<イビルアイ>で調べるぞ」
「すまない。今は言えないんだ」
頑としてこれ以上話をしないレイロを見て、ムラサメはため息を吐いた。
「何も言いたくないってのは分かった」
「え? 護衛の依頼を引き受けるの?」
プレイの言葉を聞き、ムラサメは頷いた。
「ああ。リミスとソワンは大金を貰うつもりでいるし。それに、一国の王女が何かを隠しているとはいえ、はるばるここを訪ねたんだ。あと一つ、俺たちはすでにこの事件に顔を突っ込んだようなもんだ!」
と言って、ムラサメは急いでドンナに飛びついた。それを見たレイロとその部下は驚いた表情をしたが、その直後に銃弾が壁を突き抜ける音が響いた。
「敵か⁉」
「まさか! ここまで誰も追ってきていないはずだ!」
騎士団の戦士たちは急いで周囲を見回したが、ムラサメはドンナに抱き着いたまま動くなとジェスチャーした。
「さっき<イビルアイ>を使った時、こっからかなり遠くに銃を構える奴がいた。多分、スナイパーライフルを装備しているんだろう」
「だが、ここまで届くのか?」
「改造したんだろ。この世界のスナイパーライフルの威力がどれだけあるかはっきり分からねーが、遠く離れても壁を撃ちぬくほどの威力があるってことが分かった」
ムラサメはレイロの方を見て、すぐにドンナをレイロの胸元に移動させた。
「レイロって言ったな。敵は俺たちが倒してくる。あんたは自分の仕事をしろ」
「分かった」
レイロが頷いた後、ムラサメとプレイは混乱しているリミスとソワンの額を軽く叩いて我に戻させた。
「リミス、敵だ。敵がきた! 王女が狙撃されそうになった!」
「え? はっ! 王女は?」
「俺が助けた。敵の位置はここから遠くだ。ネコノテグランドアッパーや、ソワンの<ホワイトバース>が届かない距離にいる」
「なら、悟られないように動くだけね」
「ソワンの言う通りだ」
ムラサメたちが話をする中、プレイがムラサメに近付いた。
「どこにいるか教えて」
「いいけど、どうするんだ?」
「ここからは私の出番。任せて」
プレイはムラサメにそう答え、ウインクした。
ドンナを狙撃した男は、ウターンからかなり遠く離れた丘の上にいた。
「手ごたえなし。魔力を感じる。こいつは俺の狙撃が失敗したねぇ……」
男はそう言って、深いため息を吐いた。その後、手にしている単発型のスナイパーライフルのリロードを行った。数分後、リロードを終えた男は再びドンナを狙撃しようとしたのだが、ウターンから何かが飛んできているのをスコープ越しで確認した。
ありゃぁナグリバチ。この辺りには生息していない厄介なハチさんだねぇ。
ナグリバチの存在を知った男は、不審に思いつつも、狙撃の構えをした。だが、すぐにナグリバチが自身に向かって飛んでいるのを男は察した。
ま、一発目の狙撃が外れれば、敵さんも動くわけだ。
男は狙撃の失敗で自身がいることをムラサメたちが察したと思い、急いで場所を移動した。男が移動したのは、元居た場所から後ろに下がった、少し高い丘の上だ。
ナグリバチは体力がある。が、ここまで上昇する体力も羽の力もないはずだ。敵のスキルか何かであのハチが出ているのなら、いずれ消えるはず……。
男はそう思い、ナグリバチのことを無視してドンナを狙撃しようとした。スナイパーライフルのスコープを除き、ドンナの姿を探した。しばらくして、ムラサメがピースサインをしながらスコープの前に現れた。
「んなっ⁉」
「見つけたぜ! お前がいたってのは、最初からバレバレなんだよ!」
ムラサメはそう言いながら、ネコノテストレートを放った。男は急いで魔力を開放し、ネコノテストレートをかき消した。
「へぇ、こそこそと狙撃するしか能のない卑劣野郎だと思ったが、それなりに魔力はあんのか」
「スナイパーと言えど、接近戦になったら戦えるように鍛えてある。だが、まさかこんな幼いメス猫ごときが俺の居場所を察するとは……」
「お前が情けなくて弱いって証拠だ。それと、偏見で人を見んじゃねーよ」
と言って、ムラサメは男に向かって走り出した。男は素早く魔力の衝撃波を発し、ムラサメに攻撃を仕掛けた。だが、ムラサメは迫る衝撃波を見て笑みを浮かべた。その時、ムラサメはわざと足元を強く蹴り、男に向かって砂埃を発生させた。
「なっ!」
男は砂誇りから目を守るため、目をつぶった。その隙に、ムラサメは男の顔面に向かって飛び膝蹴りを放った。
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