深夜の車の中で
オンキを倒したムラサメとリミスは力尽き、その場に倒れていた。リミスは周囲を見回し、ムラサメにこう言った。
「ねぇ、こんな状況で敵に襲われたら……確実にやられるわね」
「かもな。でも、周りからは魔力を感じない。<イビルアイ>の探知でも誰もいないってことを知ってる」
「そう。それじゃあ……しばらくはこのままね」
と言って、リミスはムラサメの方に寝返りを打った。ムラサメはじっと見つめるリミスを見て、あることを察して小さく笑った。
「甘えたいのか?」
「疲れたから」
「相手をするなら喜んで」
ムラサメは震える両手でリミスを抱こうとした。が、途中で体の痛み、それと同時に恐ろしいほどの殺意を感じて動きを止めた。恐る恐るムラサメが後ろを振り向くと、そこにはクルアを手にし、小さな言葉で物騒な言葉をひたすら呟くソワンの姿があった。
「ありゃまー。タイミング良すぎない?」
「偶然よ偶然」
ソワンの後ろにいたプレイが、ムラサメとリミスに近付き、魔力を使って回復した。リミスは立ち上がってプレイに礼を言ったが、ムラサメだけはその場で横になっていた。
「立たないの?」
「立った直後に殺される」
ムラサメは殺意の波動をムンムンと発しているソワンを見ながらこう言った。その後、リミスはソワンをなだめさせ、何とかムラサメは立ち上がることができた。
「久しぶりにリミスとイチャイチャできると思ったんだけどなー」
「今は仕事中よ。リミスもリミスで、戦った後で発情しないの」
「発情って言わないでよ!」
からかいながら笑うプレイを見て、リミスは顔を赤くして叫んだ。ソワンは倒れているオンキを見て、ため息を吐いた。
「で、あのデカブツはどうするの? 処理するのにも、時間かかりそうよ」
「尋問に使いたいから、確保するしかねーなー。戦って捕まえたアバンドルアの連中は、こいつが始末しちまったし」
ムラサメはそう言いながら、手錠やロープを使ってオンキの体を縛った。それからしばらくして、リムジンがムラサメたちの前に停車した。
「お疲れ様です。とりあえず、車内に乗ってください」
後部座席にいるドンナは、窓を開けてこう言った。
ムラサメたちがリムジンに乗り込むと、オンキの攻撃で唯一生き残った運転手はリムジンを動かした。ムラサメとリミスはオンキとの戦いの疲れがまだ残っているため、発車してすぐに眠ってしまった。
「まだ疲れが残ってたのね」
「私とソワンの聖剣じゃ、疲れは取れないからね」
プレイはソワンに言葉を返した後、眠っているムラサメとリミスの顔を見ているドンナに近付いた。
「ドンナ王女、いくつか質問があるのですが」
「はい」
「まず一つ目。どうしてあなたも同行しているのですか?」
プレイの質問を聞き、ソワンは疑問に思った。
「そんなの簡単じゃないの。私たちと顔を合わせるために……」
「それだったらベッロ王国に到着した後でもできるわ。けど、リスクを背負ってまで同行しているわ。もしかしたら、何か策を練っているのですね」
「その質問には私が答えよう」
と、レイロが会話に割り込んだ。
「プレイさん。あなたは相当頭が回るようですね」
「天才だからね」
「と……とりあえず答えとしては、アバンドルアを混乱させるためです。本物の王女が私たちと同行するとは考えていないだろうと」
「本物。じゃあ城の方には影武者がいるのね。とりあえず筋が行くから納得」
プレイは頷いて、レイロの方を見た。
「レイロさん、ベッロ王国に到着した後でもいいので、騎士団のメンバー表と場内で働く人たちの名簿のコピーを貰いたいのですが」
「名簿のコピー? ああ……構わないが」
「お手数をおかけします。無茶なわがままに応えてくれてありがとうございます」
プレイは丁寧に頭を下げ、質問は以上と告げた。ソワンはプレイに近付き、小声で話をした。
「どうして名簿なんて欲しいのよ?」
「城内に裏切り者がいる可能性があるわ」
プレイは答えると同時に、ソワンの口を塞いだ。ソワンが苦しそうに声を出したのを確認し、プレイはタブレットの画面をソワンに見せた。
「これ、今日のニュース」
「ニュース? えーっと……え? あの芸人麻薬所持で捕まったの⁉ 地味に好きだったのに」
「芸能人のくだらないニュースは見なくていいの! 見るとこが違う!」
「じゃあどこよ? いつも通りくだらない政治のニュースやちょっとした騒ぎしか載ってないじゃない」
「ベッロ王国で大きな騒動があれば、すぐに速報で流れるわ。マスコミ連中は大きな事件があったら、すぐにバカ騒ぎするわ」
ここで、ソワンはプレイが言いたいことを察し、頷いた。
「あいつらは王女がいると思われる城を狙って攻撃を仕掛ける。だけど……速報がないから攻撃は一切なかった」
「そう。城には襲撃がないのに、こっちは今日だけで四回襲われた。一日でよ? 城内の誰かがアバンドルアと繋がっていて、影武者の情報をあいつらに流したとしたら……」
「確実にこっちを狙う。そうだ……最初から狙われたみたいな感じで話を……」
「こっちの行動が筒抜けってこと。とにかく今は、これ以上の襲撃がないことを祈るしかないわ」
プレイの言葉を聞き、ソワンはすやすやと寝息を立てながら眠るムラサメと、ムラサメの胸に抱き着き、枕代わりにするリミスを見た。この状況で襲われたら、確実に戦えないと、ソワンは思った。
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