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到着、ベッロ王国


 ソワンとプレイは、レイロたちの行動が筒抜けではないか、ベッロ王国内にアバンドルアのスパイがいるのではないかと話をした。サービスエリアで休憩中、プレイは目を覚ましたムラサメとリミスにこのことを教えた。話を聞いたリミスは驚きのあまり、声を出そうとしたが、ムラサメが止めた。


「このことはあまりレイロさんたちに言わない方がいいな」


「その通り。レイロさんたちが知ったら、必ず動揺するわ。レイロさんの性格上、仲間を完全に信頼していると思うから」


 プレイはウインクをし、ムラサメにこう言った。事情を把握したリミスは、ムラサメに口から手を放すように軽く手を叩いた。ムラサメがリミスの口から手を離した直後、プレイはこう言った。


「今は言わないけど、今後被害が多発するようなら、このことを伝えるわ」


「何度も事件が起きれば、レイロさんたちも察しが付くだろうしな」


 ムラサメはそう言って、目をつぶって仮眠するドンナとレイロを見た。




 数時間後、アバンドルアの襲撃もなく、ムラサメたちが乗ったリムジンは高速道路から降り、ベッロ王国の近くにいた。


「あと少しでベッロ王国ですね」


「あれから襲撃がない。不自然だと思うが……」


 ドンナはレイロの言葉を聞き、再び不安な顔になった。ムラサメは<イビルアイ>を使い、周囲を何度も見まわしていた。だが、魔力を持つ者や、敵意を持って迫ってくる影はなかった。


「敵はいる?」


「いや、いない」


 リミスの問いに対し、ムラサメは<イビルアイ>を解除して答えた。その後、机の上のチーズを手にし、ムラサメは食べた。


「今のところ、不自然に順調に進んでいる。警戒するのも必要だけど……敵も仲間が戻らないことを察してあれこれ考えているかもしれないな」


「そう……」


 リミスは不安そうな顔をした。チーズを食べ終えたムラサメは、リミスに近付いてこう言った。


「とりあえず今は息抜きしようぜ。ほら、マッサージしてやるからよ。こっち来いよ」


 と言って、ムラサメはいやらしく手を動かした。リミスは素早くムラサメの右手の指を掴み、力を込めて変な方向に曲げた。


「ギャー‼ 指が! 指が変な方向に曲がっちまった! パーツの位置を間違えたプラモみたいになっちまった!」


「自業自得よ」


 ムラサメの悲鳴を聞き、リミスは真面目な雰囲気なのにと思いつつ、呆れてため息を吐いた。そんな中、レイロが声を出した。


「皆様、ようやくベッロ王国に到着しました」


 レイロの言葉を聞き、ムラサメは魔力を使って無理矢理折れた指を治療し、外を見た。そこには大きな文字で『ようこそ、ベッロ王国へ』と書かれた看板があり、その周囲には車用の検問所があり、警備員の姿もあった。リムジンは難なく検問所を通過し、ベッロ王国内に入った。


「ようやく……戻って来たのですね」


「いいえ、まだあいつらは来ます。気を緩めないでください」


 安心する表情のドンナに対し、レイロはこう言った。




 ベッロ王国から離れたとある町の駅。そこの駅には直接ベッロ王国に向かう電車があった。駅のホームにはベッロ王国、それ以外の地域に向かう人で賑わっていた。そんな中、一人だけ異質な行為をしている男性がいた。


「グフッ、グフフ。こんなに素晴らしい電車を僕のカメラに収めることができるなんて」


 彼は自慢の安物のカメラを手にし、丁寧にタオルでレンズを拭いていた。周りの人は、彼を見てひそひそと話をしていた。


「何、あの人?」


「頭のねじが外れた電車好きじゃない? ほら、服の柄を見てよ」


「うわぁ、電車の写真だ。あんなセンスのない服、よくも着られるわね」


「センスのない趣味をしているからよ。ああいう迷惑な奴がいるから、本当はあまり電車なんか使いたくないのよ」


 男性は女性たちの小声の会話を耳にし、睨みつけるような顔で近付いた。


「僕に何か用でも?」


「いえ、何でもありません」


「では失礼」


 と言って、女性たちはそそくさと去って行った。去り際、女性たちは男性の体臭について文句を言っていた。そんな文句が耳に入らない男性は、元の場所に戻ろうとした。だが、そこにはガラの悪そうな二人の男女が立っていた。


「おい君たち! そこは僕が予約していた場所だ!」


 男性の声を聞き、ガラ話の悪い一人が声を出した。


「何だ? 電気で動くガラクタに乗るにはテメーの許可が欲しいのか?」


「その通りだ! 僕は電車を人一倍愛する男だからだ!」


 そう言いながら、男性はダサい服を見せつけるかのように両腕を広げた。ガラの悪い女性は鼻を抑えながら、こう言った。


「体臭を広げないでよ。それと口も臭い。ゲロ吐きそう」


「それは別問題だ! 電車に乗りたければ、今すぐ別の列で並んでほしい!」


 男性は声を荒げながら叫んだ。すると、電車が近付いてきたと合図するベルが鳴った。


「おっと、そろそろだ!」


 ベルを聞いた男性は、すぐにカメラを構えた。ガラの悪い男は男性の後頭部を掴み、笑みを浮かべた。


「変な奴だな、お前。あんなガラクタを見て発情するのか?」


「ガラクタ? 電車をバカにするな!」


「ガラクタをガラクタと言って何が悪いんだよ? 文句あんのか異臭野郎?」


 ガラの悪い男はそう言って、電車の影を確認した。


「良いこと思いついた。ガラクタを愛しているんなら、キスをするのを手伝ってやるよ」


 と言って、ガラの悪い男は笑みを浮かべた。


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