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やわらかなるバレンタイン生活♪②

バカは馬鹿なのである♪


この言い回しに特に意味はありません♪

『そういうな同志たちよ。計画は失敗することも念頭に置くのが基本だろう、いちいち失敗を悔やんでいたらジジイになる前に剥げるぞ』


「おい!うちの親父の話はやめろ!俺に効く!」


「オレの父ちゃんもハゲてんだよ!髪の話はやめてくれよ!」


『うちだってそうだ!母ちゃんにはあんたはハゲのエリートだから絶対禿げる!!と言われた夜に、俺は一人寂しく布団にくるまって泣いたんだからな!』


「「なら何故言った!」」


スッゴイどうでもいい言い争いをまたしてもホールで繰り広げる彼ら三人の目前を、手を繋ぎチョコを二人で頬張りながら仲良く笑いながら下校していく男女の姿を望み見てしまった。


『けっ!糞アベックが!』


「イチャコラしやがって!」


「いい気なもんだぜカップルさんよ!ヒューヒュー!!」


本日の祭典を期に恋人同士となったばかりの、たぶん別のクラスの同級生だろう二人をねたそねさげすみつつ、彼らは大好きな【昭和時代】全開の単語を発してみたはいいものの、力を失いやる瀬無い気持ちになってドン!ガン!と、ホールの壁や床を拳で散々これでもかと殴りつけた。


むなしい…』


空虚くうきょだ…」


「絶望だ…」


『「「そして何より手が痛い」」』


やる気をすっかり削がれた三人組は、自身の心が痛いとは絶対に口にせず、お互い支え合う様にして立ち上がり、足取り重く自分達の靴が入った下駄箱に向かって歩いて行った。


『今日までの一カ月、無駄なヴァレンタイン闘争だったな』


「まあ…な」


「取り敢えず帰りしに飯でも食おうぜ…」


『「そうすべ、そうすべ」』


ワケわからんアジテーゼにのめり込んで、特にこれと云った実りある計画も努力もしていないくせに、やたらと落ち込む彼らを誰が責められようか。


だって自業自得だからね。仕方ないね。


で、すっかり消沈した彼らは帰るため、下駄箱の靴を取り出そうと木製の蓋を開けた。


『なあ』


「あん」


「どうした」


『…同志諸君。ちょっと俺の頬っぺたを軽くつねっては呉れまいか?』


「俺はお前さんの頬っぺたなんか触るのやだが?」


「オレなら構わないが、痛いぞ」


『優しくしてね』


どこまでも言い回しからして昭和から抜け出せない三人組である。


『いってぇ!!爪たてんな爪!!』


「あ、悪りぃ」


「お前さ、いい加減鼻くそ爪切れよ。。」


リーダーメガネの頬をつねったのは、メガネ同志の汚ったない鼻くそほじくり用に伸ばされた爪だった。


『鷲は舞い降りた!!!!』


突然、メガネリーダーは大地を踏みしめ腹に力を込めて震える声を張り上げ叫んだ!


「「ああ??お前がどこに舞い降りたって??」」


『儂が舞い降りたんじゃねぇーーよ!!鷲が舞い降りたの!解る?ボンクラ頭の同志諸君!!』


勝ち誇った顔をしてリーダーメガネは、下駄箱の前から華麗に身をひるがえし、グッと同志諸氏の前に手を突き出して〝とある逸品〟をこれでもかと見せつけた。


「お、おまえ、、そ、それわ…。。その褐色素肌の可愛らしい御方おかたさまは……?!」


 「な、名にしおう我が同志。【麗都千夜子】さまではあるまいか…!!」


そう、メガネファッショリーダーが手にしていたモノとは、何を隠そう、特に隠されてはいないが麗都千夜子同志書記長こと、【チヨコ↓レイト↑】(矢印は発音の仕方)様であらせられたのだ!!


より具体的には、可愛らしいピンクのリボンを幾重にも身に纏った厚手の箱に入ったチョコレートで、製造国はどうもアルファベットの綴りから察するに東南アジアの国らしかった。


つまり、読めなかったのだ!


「お、俺の下駄箱にはなかったのに何で?!」


「オ、オレのとこにも汗臭っさくも香ばしい靴しか収まっていなかったのに、な、何故なんだ!?」


『フハハハハ!!我が闘争に一片の隙なし!!ジーーーク千夜子!!!』


半べそをかきながら悔しがり、下駄箱や床に蹴りや正拳突きをぶちかます同志二人をよそにファッショリーダーのメガネは得意満面の笑顔で勝利宣言を行った。


「くっそ!こんな結末が待って居るなんて!!」


「天は我らを見放したか!!」


『フハハハハ!!我は公正なる選挙で国民(女子)に選ばれたる者!党内(仲間内)の権力闘争のみで決まる愚鈍な存在ではないのだ!!ゆえに、我をあがめよたたえよたてまつれよ!ジーク俺!!ジーク俺!!』


奈落の底に真っ逆さまで突き落とされた二人をほっぽり出し、あっさり今までの信条かぶれを捨て去ってひとり悦に入るメガネ総統は、下駄箱の上に勢いだけで駆け上り、足下そっかのひれ伏す愚民どもを見下ろ言い放った!


「マイン・フューラー。わが総統。我ら親衛隊の士気高揚のため、中に入っているであろう秘書ラブレターの開示をお願い致します!」


「我が情報省も宣伝活動のためにも是非、拝見させていただきたく存じます!」


『ねえ、ところで君たちさ、【麗都千夜子同志書記長】率いる〝我が党〟はどうしたの??』


「総統。私はこれまで一切信条を変えておりませんが?」


「総統も相当、冗談がお好きで♪」


思わず下駄箱の隅にでも設置している。かもしれない、針金が一列にたくさん並んだ感じの独特な〝スイッチ〟を押したくなったメガネ総統だった。


それにしてもコイツら、いつの間に用意したのだろう。クリーニングでバッチリ糊付けされビシっとした黒い学生服を着こみ、頭には、これまたクリーニングに出したのだろう汚れ一つ付いていないつばに光沢のある制帽をきちんと被り、直立不動で過去への決別を果たしたのだから魂消たまげた。


元同志二人は勝ち馬に乗り、崇めていた【麗都千夜子の党】をあっさり捨て去ったのだ。


『しかしね、親衛隊はまだしも情報省の宣伝活動とやらは必要か?ナニしでかす気なの?てか情報省とかいつできたん?』


「今です総統閣下」


「親衛隊も五秒前に設立されました。総統閣下」


『あ、そう』


総統は自身のことを思いっきり棚に上げ、二人の変わり身の素早さにいよいよ呆れた。


『しからば党員諸氏に余の初体験祝賀の為、特別に秘密の書を開示いたすとしよう!!』


「もう女子とヤった気でいやがる」


「教育してやるか」


『何か申したかね?』


「「メガネ総統ばんじゃーい∩(・ω・)∩」」


すっかり仮想権力に日和ひよった二人は、すぐさま万歳三唱を決行し総統のご機嫌をとったのだった。               

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