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やわらかなるバレンタイン生活♪③

バカは勢いが凄い♪

閑話休題。


『で、栗花薫子くりはなかおるこって誰?何年何組なの?』


「知らん」


「オレ達に女子の事なんか聞くんじゃねぇ!」


『だよね』


外の箱の見た目と同様、割と分厚い銀紙包みのチョコレートと一緒に入っていたのは、これまた夢見る女の子が選びそうな可愛らしいイラストの薄ピンクのエンべロープと小さく折り畳まれて納められていた手紙が一通。


そして中の文を読んでしまったメガネ総統閣下は、チョコ発見時からずっと耳を真っ赤にして汗だらだらだったのに、今度は両手の指先まで真っ赤に染めてまなこは血走り髪振り乱し、およそ常人とは思えない様相を呈し、もしこのまま校外に出れば「ねぇ、そこの君キミ。お話いいかな?」と警官に呼び止められ、即タイーホな人相風体となってしまった。


それでも彼は努めて平静を装い、『えっ?俺、別にチヨコさま御光臨くらいじゃ喜べないたちだし、そこに恋文の一通や二通閉じ込められてるのは普通だし、むしろ俺が密封された箱から救出してやったし、逆に差し入れた女の子から感謝状を贈呈されてもいいくらいだし、、』


などと、意味不明な供述を突発的にはじめメガネ部下たちを困惑させ、数歩引かせた。


「閣下、とりあえず落ち着きましょう」


「落ち着いて千夜子さまを召し上がりましょう」


存在を彼らによって再発見・再確認された麗都千夜子は、本来の役割である甘味品としての役割をここに取り戻した。


『ああ、うむ。なにやら恥ずかしいがそうする』


うっかり心の動揺を認めてしまった総統閣下(14歳)は、焦点の定まらぬ目と、照準が逐次ちくじぶれまくる指先をなんとか駆使して、【麗都千夜子】(ひとつ年下の13歳に脳内設定)さまの御衣服(銀紙包み)を丁寧に脱がせようと躍起になった。


「あ、それ。裏についてる赤いビラビラ引くと剥けますよ」


「あ、行きすぎです閣下。なんならオレが代わって彼女を脱がしましょうか?」


『赤いビラビラとか卑猥な事を抜かすな!あと、脱がすとか具体的な感じもダメ!言わないでぇ!!』


童貞力全開総統(笑)を気遣い心配する、同級生で中2のメガネ【◯ムラー】と、メガネ【◯ッペルス】はポカンとなる。


「あの総統閣下。これ、ただのチョコレートですよ?」


「そうです。何を勘違いなさってるんですか?バカですか?」


いまだ下駄箱の上に君臨する〝わが総統〟を、まるで“とある事情で夜に使用”し、そのまま捨てるのを忘れて放っぽり出して月日がたち、モゾモゾ得体のしれないエノキみたいなカビがわんさか生えた【自家発電廃棄物】を見る様に、すっかり光を失った目で見上げていた。


『お、お前らが!チョコレートのことを【麗都千夜子・13歳・チョコ褐色の超絶美少女(備考・実は総統閣下が大好きな赤い大国の書記長)】とか言ったからだろう?!』


「云ってません。なんですかその設定。シベリア送りにしたあと粛清しますよ?」


「言ってません。特に最後の〝総統閣下大好き〟ってなんですか?人として恥ずかしくないですか?絞殺じゅうさつしたあと銃殺に処しますよ?」


『ひどい!!ひどいわ!!』


よよよよ。


顔を左手で覆いお姉さん座りで涙ぐむ総統閣下は、裸に剥かれて差し出された麗都千夜子さま。もとい、よく見るタイプの板チョコを右手で受け取って指の間からそっと眺めた。


『…矢張り、手作りじゃないのか…』


「「うっぜぇー!!いいから早よ食って幸せを噛みしめろ!!」」


パキッ!


言われるまま、チョコの端っこを噛みちぎったメガネ総統は、むぐむぐ小さな幸せを口中にとろかして味わった。


『あっまいな。いつも喰ってるチョコよりだいぶ甘……うぐっ?!』


どたん!!どたたたたた!!


総統は食べてる途中で口を押さえ血相を変え、突如廊下を突っ走り水飲み場に脱兎のごとく走って行き、、


『これ、チョコレートでコーティングされたカレールーじゃねぇーーか!!!』


と、叫んだ。


パン♪♪


取り残されていた部下役のメガネたち(犯人)は、無表情でハイタッチを行い、そそくさと靴を履き終え、そのまま下校した。


そう、彼ら二人の【クーデター】という名の悪戯は、ここに見事成功したのだ。


やがて、、


「きみ待ちなさい!!」


「ようやく見つけたぞ二年生!お前ら屋上で叫びながら何しくさってた!!」」


『単にアジ演説ごっこをしていただけですよ!!』


体中からカレーの濃いにおいを漂わせながら、廊下を逃げ惑う【失脚総統】の普通じゃない言い訳と、これを執拗に追いかける先生二人の怒号が、夕闇に包まれた校舎の建屋で木霊させながら駆け巡っていったのだった。



おしまい。

            

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