家のイメージで構成を考えてみる
構成と考えていたから、世界が狭まってしまっていたのではないか。
そういっそ、構造と考えて家をイメージしてみたらどうだろう。
物語を「家」として考える。
話の始まりは入り口だ。
普通は入り口は「玄関」にあたるが、庭側の「窓」から入ることもできる。家によっては「勝手口」がある場合もあるだろう。さらに意表をついて、屋根を伝って「二階の窓」から入ってもいい。
主人公の視点で考えるなら、家主として「部屋」にいるところからスタートするのもありだ。
家の内装はどんなものだろうか。柔らかいパステルカラーの家かもしれない。毒々しい紫と黒をメインにした内装かもしれない。それが物語の雰囲気になる。
物語の1話目は玄関から始まる。玄関では家主が迎えてくれるだろう。それが物語の主人公にあたる。主人公の姿を見て、家の雰囲気を見て、読者が何を感じるか。それが物語の導入になる。
玄関に入ったらどこに進むのか。キッチンでパーティーをしているとしよう。リビングでは家主と親しい人たちが盛り上がっている。二階では家主と仲の悪い人たちが固まって何かたくらんでいるようだ。個室の一つでは子供たちが何かを言い争っている。寝室では誰かが愛をささやき合っている。
すべての部屋に入る必要はない。どこか一つだけを舞台にしてもいいし、一つずつ移動していってもいい。
だが、目に見えないところでも物語は進行している。
どの物語を選び取り、どの物語を阻止して、どの物語を進めさせるのか。
それが物語の構成になる。
いくつかの部屋を進んだら、最後の部屋を決める。
家主の仲間たちが盛り上がっていたリビングでは、主人公の幸せを祝福してくれるエンディングが見えるだろう。家主と仲の悪い人たちが悪だくみしていた部屋では、悲しいエンディングが見れるかもしれない。寝室であれば愛に裏切られるエンディングか愛しい人と結ばれるエンディングだろうか。
家に留まるエンディングだけではない。最後に、再びどこかの出口から外に出るエンディングになるかもしれない。
旅立ちという終わり。物語の枠を越えさせるような、壮大なエンディング。
その場合には、その先には次の家を舞台にした物語が始まる予兆が見えるかもしれない。
家一つで表現するには足りないほどの世界観の場合、部屋のいる人物と接触すると、相手の家の入口に飛べるイメージにすれば、どこまででも話を広げていける。
リビングでパーティーをしていた人物の中の一人から、次の世界へ飛んでみよう。
玄関から入るつもりが、なぜか窓からの侵入になってしまった。家主Bは背中を向けている。家主Bがどんな人物なのか、窓からお邪魔しますをしてしまったために、はっきりとは感じ取れない。
ダイニングルームで家主Bは誰かと言い争っている。相手とは親しい間柄のようだが、何やら問題があるらしい。
家主Bには気づかれなかったので、そのまま別の部屋に進んでみる。
前の家では家主Bは明るい男に見えていたが、家Bは全体的にどこか薄暗い雰囲気をしている。二階の小さな個室に入ると中にはフリルやぬいぐるみの溢れた可愛らしい部屋に、幼い1人の少女が死んだように眠っている。
と進めて行けば、時間軸や空間軸を取り入れた、物語構成を作れそうな気が……しないでもない。