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それぞれの希望・絶望・激闘

「焦るな! 人数はこちらが有利だ! レイがいなさそうな以上、倒されないようにだけ気を付けて囲い込め! あのマッチョは私が1人で止める!」

「言うじゃねぇかブライト! てめー1人でこの俺を止められると思ってんのか!?」

「どうだろうね。だが、負けるつもりはないさ!」


そこは【シーカーズ】本隊と、ブライト率いる【クォーク・レギオン】が激突する真の激戦区となっていた。


「困ったことになったね。さて、どうするかカイゼ?」

「そうだね……アイ、最悪私が宝箱を何とか集めて逃げてもいいけど、アジーンとレイの結末を見届けるためにも、全員生存で乗り切りたいよね」


アジーンとの作戦は、彼女が無事にレイの元へたどり着けるかにかかっている。

約束を果たし全員で生き残って脱出したいところだが、目の前の敵はそれを容易に許してくれる相手ではなかった。


「囲い込むっす! 時間をかけて有利になるのはこっちっすから、倒されないように注意するっす!」


アレックスが的確に指示を出し、じわじわと包囲網を狭めていく。今までの烏合の衆とは違い、立ち回りも装備のクオリティも段違いだ。


「さすがはブライトのギルドだな。各々の装備も良いし、このまま時間をかけられると不利になるのはこちらだぞ」

「だな。いくら倒しても上手く入れ替わりで凌がれてる。クレタがいる以上、時間は掛けられないね」


オニオンとバスタが鋭い攻撃を繰り出すも、アレックスの正確な指揮によって上手く受け流されていた。このまま手こずっていれば、いずれクレタの大魔法が完成して全滅するのは目に見えている。


「ふふ、さすがに狙いはバレてますね!」

「それでも、こちらが有利なのに変わりはないからね。それじゃ、任せたよ」


包囲網で防衛している間にも、後方でクレタとリナが着々と準備を進めていた。

上空には、時間を告げる太陽のごとき絶大な魔力塊が膨れ上がっていく。


「容赦なく最大火力ですか……。クレタちゃんを狙おうとしてもリナが魔法で遮るし、しっかりと対策されてる感じだね……」


漆黒の翼を広げ、魔法を放ちながら空中に浮遊するカイゼが呟く。


「だね。こっちにはタンクがいないから耐えることもできないだろうし……。あぁやってクレタちゃんを守られると、あの太陽を直接叩くしかないけど、攻撃は届きそう?」


前衛を的確にサポートしながら弓を射るアイが尋ねる。


「それを狙うために飛んで近づいてみる。前に聞いた原理的に、外敵からの刺激を与えれば集束途中で暴走して爆破できるはず」


クレタの魔法は莫大なエネルギーを集束させる過程が必要であり、そこが弱点だと以前聞いていた。カイゼは翼を羽ばたかせ、上空の太陽目掛けて急上昇を開始する。


しかし、そんな光景を見てもリナとクレタに焦りはなかった。


「やっぱり飛んで狙ってきましたね!」

「そうね。ふふ、思い通りに進むと気持ちいいわね。さぁ行くわよ……【グラビトン・ソーサリー】!」


カイゼが射程圏内まであと少しと迫ったその時、全身に異様な圧迫感が襲いかかった。


「っ……!? 体が重い……!?」


翼を必死に羽ばたかせるが、上昇するどころか、まるで巨大な鉛を背負わされたかのように地面へと叩きつけられていく!


「ふふ、カイゼさんお久しぶりです」


上空から降ってきた声に顔を上げると、そこには宙に浮くリナの姿があった。


「なっ……!?」

「驚いてもらえたようですね。クレタに見習って、私もニュートン力学や相対論を利用して重力を操作するオリジナルスキルを作ってみたのです。燃費が悪すぎるのが欠点ですけれどね」


リナの重力波によって強引に地面へ墜落させられたカイゼだったが、間一髪で着地を殺し、深刻なダメージは免れた。


「やはり燃費が悪いですね……空を飛ぶのは気持ちいいのですが。……アレックス!」

「はいっす! もう飛ばせないですよ、カイゼさん!」


即座にアレックス率いる前衛陣が距離を詰め、カイゼへの怒涛の追撃を開始する。

攻撃はかわせるものの、踏み込みを阻害され、再び飛び立つ隙を作れない!


「カイゼ、行けぇぇっ!」

「なっ!? あの包囲網を突破したっすか!?」


突如、横から割り込んできたバスタのフライパンがアレックスの剣を弾き飛ばす!


「アレックスが指示を飛ばせなくなったおかげで、統率が乱れたからね! オニオンとアイの助けも借りたよ!」

「助かった!」


バスタの手を借りて再び大空へ飛び立ったカイゼだったが、すでに頭上の太陽は臨界点に達していた。


(……ダメだ、間に合わない……!)


直撃を避ける術はない。カイゼは瞬時に判断を下し、下方へ急降下した!


「間に合わない! オニオン! アイ! ライカ! 固まって!」

「私は!?」

「掴まって!」

「うわあぁぁぁっ!?」


バスタの首根っこを掴んで強引に引き寄せ、全員で一点に凝縮するように身を寄せる。


「ブライトさん!」

「構うな! 固まってくれるなら好都合だ! クレタ、今だ!」

「行きますよ……【モーリー・バースト】!!」


上空の太陽が崩壊し、戦場全体を呑み込む絶大な爆炎と衝撃波が解き放たれた!


「ちょっとカイゼ、集まったのは良いけど、これじゃ格好の標的じゃない!?」

「アイ、時間がないから私を信じて! ……変身!」


爆発が襲いかかるコンマ数秒前、カイゼの体が眩い光に包まれ、かつてレイド戦で見せたあの魔法少女衣装へと変わる。


「これが終わったら私はしばらく戦えなくなる……あとは頼むよ! 【あと一つだけ願いを(ワンモア・ウィッシュ)】!」


ドガァァァァァンッッ!!!!


地響きと共に戦場が白い光で塗りつぶされる。


「さすがに今の爆発には耐えられないと思うっすけど……」

「並大抵のボスですら消し炭にする火力だからね。耐えられるとは思えないが……油断するな!」


やがて凄まじい爆炎が晴れ――そこには、立ち昇る煙の中から悠然と姿を現す【シーカーズ】の面々がいた。


「……なぜ、今ので生きているのかな?」


油断するなと警告していたブライトすらも、衝撃の光景に目を見開く。

その問いに答えたのは、魔法少女衣装に身を包んだカイゼだった。


「魔法少女は……最後まで諦めない! 何度でも立ち上がるものだからね。そして……奇跡を起こすのさ!」


瞬間、溢れ出す光が彼女を包み込む!

光が晴れた頃には、カイゼの衣装がまるで黒い霧に蝕まれるかのように、禍々しい漆黒へと染まり上がっていた。


「なんなんすかアレは!?」

「わからない……! だが、おそらくHPを極限まで残して耐えるスキルだ! そう何度も使えるはずがない、一気に叩くぞ!」


ブライトたちは即座に切り替え、瀕死のはずのシーカーズへ雪崩れ込む!


「さぁみんな……あとは頼んだよ……」


倒れ込むカイゼを優しく受け止め、アイがそっと背後に下げた。


「おう! ここまでやってもらって、負けるわけにはいかねぇな!」

「うむ。あちらも大魔法の反動で人数はそう残っていない。勝機は十分だ!」

「さぁ勝とう! 激辛の調理開始だ!」

「うん! 私が撃ち抜くから、信じて戦って!」


アイの放った一矢が切り拓く! 再び激戦の火蓋が切って落とされた!


「さぁブライト! 決着をつけようぜ!」

「私は遠慮したいんだがね……いいだろう! 受けて立つ!」


ライカとブライトが激しい火花を散らす中、バスタも鋭い踏み込みを見せる。


「アレックス君、私の調理に付き合いな!」

「嫌っすけどね……! とはいえ、倒さないと自由に動けないっすから、やるっすよ!」


豪快なライカたちとは対照的に、バスタとアレックスは互いの間合いを極限まで見極める静かな死闘を繰り広げる。


一方、オニオンとアイは背中合わせの陣形をとっていた。


「ここが一番重要な踏ん張りどころだな」

「だね! この集団を倒せば、逃げ道が開ける!」


四方八方から容赦なく迫る斬撃と魔法。


「そんな生ぬるい攻撃で、私を倒せると思うなよ!」


オニオンの剣技はまさに神がかっていた。正確無比なパリィで敵の体勢を崩し、最小限の被弾で敵の隙を作り出して切り伏せていく。背後を完璧にガードするアイの弓撃が、隙を見せた敵の眉間を的確に撃ち抜いていく。


「もらった! アーチャーなら近距離は無理だろ!」


包囲網を破って飛び込んできた剣士に対し、アイは冷ややかな視線を向けた。


「舐められたものね!」


襲い来る刃を弓のフレームでガチリと受け止め、強烈な前蹴りで距離を離す! 体勢を崩した敵の頭部へ、至近距離から矢を叩き込んだ!


圧倒的な連携の前になす術もなく、10人近くいた敵の包囲網は、あっという間に全滅した。


「マジっすか……あの包囲を突破するっすか……」


バスタと牽制し合っていたアレックスの頬を、アイの放った矢がかすめる。

さらにブライトと競り合っていたライカの元へ、フリーになったオニオンが乱入し、一気に形勢が逆転した。


「さぁ……まだ続ける? 逃げるなら、これ以上追わないけれど」


アイの静かな宣告に、ブライトは深々とため息をついた。


「そうだな……残っているのも、もはや初期メンバーの4人だけか。分が悪いな。ここは引かせてもらうよ」


ブライトたちは撤退の選択をし、シーカーズは見事に最強ギルド【クォーク・レギオン】との激戦を制したのだった。


「みんな、お疲れ様! 終わったばかりで悪いけど……急いでレイのところへ行こう!」


何とか動けるようになったカイゼの言葉に、全員が力強く頷く。


イベント終了の刻限が迫る中、彼らはレイの元へ急ぐのだった。



一方その頃、レイはプロゲーマー2人を相手になんとか立ち回っていた。


「プロゲーマーが2人がかりなんて、ファンに嫌われるよ!」

「ここはMMOダヨ? さぁ、もっとエキサイティングなバトルを見せてヨネ!」

「配信のリスナーが見たいのは、レイちゃんの倒れるところと俺たちの勝利なのさ!」


そんな軽薄なセリフを吐きつつも、隙のない怒涛の連撃が襲いかかる。

その動きは時間経過とともに研ぎ澄まされ、こちらの動きが完全に読まれているかのようだった。


(くっそ……さすがトッププロだね。MMOじゃなかったらとっくにやられてたよ……!)


実際、今レイが渡り合えているのは、装備とステータスの暴力による部分が大きかった。純粋なプレイヤースキルだけなら一瞬で崩されていたはずだ。


とはいえ、ジリ貧であることに変わりはない。このまま受けに回っていれば、負けるのは時間の問題だった。

状況を打破するため、後方で援護魔法を放つセレニティを狙いたいところだが、ヴェクサシオンがそれを完璧に遮断してくる。


「どうしたレイちゃん、そんなに後ろが気になるかい?」

「魔法が鬱陶しいからね! あんたがどいてくれれば楽なんだけどさ! それにちゃん付けはやめろ!」

「おっと、これは嫌われちゃったかな。でも、そんな軽口が叩けるならまだまだ余裕そうだね! さぁ、盛り上げてくれよ!」


そう言って、ヴェクサシオンの剣技のキレがさらに増す。


もはや未来予知としか思えない精度で動きを先読みされていた。

高性能な防具のおかげで刃を打ち合えてはいるものの、削りダメージでHPは確実に減少しており、セレニティの魔法を完璧にかわしきれなくなりつつある。


(なんとか隙を作りたいんだけど……いくらプロとはいえ、こんな短時間でここまで動きが読める? もしかして……)


レイの脳裏に一つの閃きが浮かぶ。

もし仮説が当たっていれば、一瞬でも相手を動揺させられる。この窮地を脱する唯一の賭けだった。


「相変わらず未来予知みたいな動きだねぇ」

「プロとしてこれくらいはできないとね。言いたいことはそれだけかい、子ウサギちゃん?」

「こんな短時間でここまで私のクセを読むなんてねー……。もしかして前に負けたのを根に持って、私のことメッチャ研究してた?」


レイは少し前に行われた公式イベントのエキシビションマッチで、ハンデありとはいえヴェクサシオンに勝利していたのだ。


「……まさか。エキシビションで負けたのをイチイチ気にしてたら仕事にならないさ」


ヴェクサシオンは平静を装って笑ったが、レイはその一瞬、彼の剣先が僅かに揺らいだのを見逃さなかった。


(当たった……!)


相手の僅かな乱れを鋭くパリィ! 生まれたコンマ数秒の猶予で、レイは素早くシステムウィンドウを操作した。

手元に眩い赤色のウィンドウ――【理の再記述(リライト)】が展開される。


「はぁ、あんな煽りに惑わされるなんてバッドなんですケド」

「俺もまだまだってことか……。確かにエキシビションとはいえ、負けたからには対策をするのがプロの職業病でね。……そして、それが噂の赤ウィンドウか」


ヴェクサシオンの視線が、レイの掲げた【理の再記述(リライト)】へ吸い寄せられる。

しかし――それこそがレイの本当の仕掛けだった。


理の再記述(リライト)】は単なる見せ球。派手なエフェクトで視線を誘導し、本命の真の隠し玉を取り出す隙を作ったのだ!


「可愛いところもあるんだね、ヴェクサシオン!」

「そんなこと言われても嬉しくないけどね! さぁ、勝負はこれからだ!」


ヴェクサシオンが肉薄してくる。だが、レイは不敵に笑った。


「私はごめんだね! それじゃ、次はリアルのイベントで会おうか!」


レイの手元に握られていたのは、イベント前にドレッジに特注で作ってもらった機械仕掛けの兵器――。


「じ、銃……!?」


複雑に噛み合う歯車が回転し、高密度の魔力弾を放つリボルバー!

至近距離から、銃口がヴェクサシオンの眉間を捉える。


「さよならだ!」


引き金が引かれ、閃光が走る――!

勝負あったかと思われたが、弾丸が眉間を撃ち抜く直前、ヴェクサシオンの身体が強引に吹き飛んだ。


「ヴェクサシオンは熱くなるとやらかすヨネ。そんなんだからこの前も負けたんダヨ」


セレニティが自らヴェクサシオンにノックバック付きの極小魔法をぶつけ、強制的に軌道を逸らして救出したのだ。


「くっそ、今の不意打ちで倒せてれば楽だったのに……!」

「残念だっタネ。それに……もうエンドなんだヨネ」


セレニティが不気味に微笑んだ瞬間、レイの足元の地面が眩く発光した。

ヴェクサシオンとの激しい攻防の最中、セレニティは密かに足元へ拘束系の設置魔法を準備し、そこへ誘導していたのだ。


「うっ……!? 動けない……!」


足元から伸びた光の鎖がレイの身体を縛り上げ、完全に行動を封じられる。


「さぁ、レイちゃんを捕まえたぜ! なになに……『お前何もしてないだろ』『セレニティかわいい』『レイちゃんを映せ』……うーん、今日のリスナーは辛辣だねぇ」

「あいつはほっといて、何か言い残すことはあるカナ?」


ヴェクサシオンとセレニティが、止めを刺すべく距離を詰めてくる。

拘束された状態では武器も振れず、ただ言葉を発することしかできない。


「……今回は私の負けだね。次のイベントの時、覚えてなさい!」

「それはこっちのセリフさ! ここでリベンジしても向こうで負けた過去は消えないからね。……ただ、今回の勝者は俺たちだ!」


ヴェクサシオンが大剣を高く掲げ、レイに向かって振り下ろす!


――しかし、その刃がレイに届くことはなかった。


ドガァンッ!!


突如として上空から飛び込んできた一筋の影が、ヴェクサシオンの剣を豪快に弾き飛ばす!

さらに一瞬の閃光が奔り、レイを縛り付けていた拘束魔法の結界が無造作に粉砕された。


「ありがとー! そこのフードのプレイヤー! 味方って考えていいのかな!?」


深々とフードを被ったその影は、無言のままコクリと頷いた。

そして地を蹴ると、超スピードで後方のセレニティへと突撃していく!


「ワッツハプン!? 邪魔しないでほしいんだケド!」


瞬く間にセレニティを押し込み、魔法の詠唱を封じ込めるフードの人物。

図らずも、戦場は再びヴェクサシオンとの完全なタイマンへと戻された。


「格好つけてたのに、一気に不利になっちゃったんじゃない?」

「不利? 面白いこと言うじゃねぇか……! 盛り上がるのは、ここからだろうよ!」


ニヤリと笑うヴェクサシオンと、武器を構え直すレイ。

そうして二人は再び激しく対峙する。


先手を打ったのはレイだった。ドレッジのリボルバーを構え、間髪入れずに連射を見舞う!

しかし、ヴェクサシオンは鋭いステップで弾軌道を躱しながら肉薄してくる。


「それはさっきも見たからね! もう当たるようなヘマはしないさ!」

「へぇ、言ったね!」


レイは一切の躊躇なく弾丸を連射し続け、弾幕で距離を詰めさせないように立ち回る。


「おいおい、それリボルバーだろ!? リロードもせずに何発撃つ気だ!」

「魔力の弾丸を飛ばしてるからね! さぁ後何発撃てるか予想してみな!」


複雑な歯車の回転と特殊鉱石により、自身の魔力を直接弾丸へと変換・生成するリボルバー。

魔力がある限りリロードもいらない優れものだった。

(とはいえ、これだけ撃ってるとそろそろ魔力が底をつくけど……時間稼ぎとしては十分だ!)


消極的に見えてどこか余裕を感じさせるレイの立ち回りに、ヴェクサシオンは思考を巡らせる。


(やけに消極的だな……。もしかして、あの赤いウィンドウが関係しているのか……?)

「なんだか随分と消極的な動きじゃないか? その赤いウィンドウと関係があるのかな?」

「ご明察! ただ、気づくのが遅かったね! もう準備は完了したよ!」


レイが不敵に告げると、ヴェクサシオンは咄嗟に身構えた。

何か破壊的な大魔法や技が飛んでくると踏んだからだ。

しかし――戦場には何の変哲もない沈黙が流れる。


「……準備完了と言った割には、何も起きないじゃないか。ハッタリかい?」

「それは自分の身体で確かめてみなよ!」


ヴェクサシオンは一瞬の迷いを振り払い、剣を構えて突撃する。

レイもリボルバーを仕舞い、正面から剣を抜いて応戦した。


ガキンッ! ガツンッ! と互いの刃が交錯する。

しかし、数打交わした段階で、ヴェクサシオンは自身の身体に強烈な違和感を覚えた。


(……!? なんだ、身体が……ついてこない……!?)

「その顔、異変に気づいたかな? どうだい、思うように動かない気分は?」

「……くっ、その赤いウィンドウでデバフでも付与したのかな? だが、この程度なら問題ないさ!」


ヴェクサシオンは言葉通り、動きを補正し、正確な攻撃を繰り出してくる。

相変わらず読みの鋭い攻撃であったが、その動きには確実に綻びが生じ始めていた。

ヴェクサシオンの動きの修正もさすがであったが純粋にステータスの差が出始めてきた。


レイは【理の再記述(リライト)】の操作に意識を集中させながら、ヴェクサシオンの攻撃を受け流す。

タイマンとなった今、高性能な装備とプレイヤー技能があれば、その程度の操作リソースを割く余裕は十分にあった。


戦況は急速に、そして決定的にレイへと傾いていく。


そして――ついにその時が訪れた。


動きが完全に鈍ったヴェクサシオンの渾身の一撃を、レイは最小限の動作で軽々と弾き飛ばす。

宙を舞う大剣。空を切った体制のまま硬直するヴェクサシオンの首筋に、レイの刃がそっと突きつけられた。


「さぁ、今度はこっちが王手だね。何か配信の視聴者に言い残した方がいいんじゃない?」

「ははっ……やるねレイちゃん。……次の公式イベントには来るんだろ? そこで絶対にリベンジしてやるよ」

「期待してるよ! ただ……今回も私の勝ちだね!」


閃光が一閃し、ヴェクサシオンの体は光のポリゴンとなって消滅した。


「はぁ……バッドなんですケド。エスケープさせてもらうんですケド!」


相棒の撃破を確認したセレニティは、何やら魔法を発動し、捨て台詞を残して戦場から姿を消した。



激しい静寂が周囲を包み込む。

いつの間にか周囲を埋め尽くしていた喧噪も去り、システムウィンドウが示すイベントの残り時間は、いよいよカウントダウンに入っていた。


戦場に残されたのは、レイと、フードを深く被ったプレイヤーの2人のみ。


「助かったよ、フードのプレイヤー」


レイは警戒を解かないまま、ゆっくりと一歩踏み出し、お礼を口にした。


「いえ、お構いなく!」


その僅かに漏れた声を聞いた瞬間、レイは驚きに目を見開いた。


「その声……!」


フードのプレイヤーは深々と被っていた暗色のローブを豪快に脱ぎ捨て、爛々と輝く瞳でレイを見つめ返す。


「この時を、待ってた!」

「アジーン!?」


風が吹き抜け、互いの武器が陽光を浴びて煌めく。

イベントの終了刻限が迫る中、2人は最高の笑みを浮かべ、静かに向かい合うのだった――。


---

あと一つだけ願いを(ワンモア・ウィッシュ)

魔法少女の願いは奇跡を起こす。

その姿は何度でも立ち上がり味方を守る魔法少女だった。

魔力などの代償を払うことでどんな攻撃にもHPを1残しその後、光に包まれ全回復する。

ただしその身は黒く蝕まれていく。

ちょっとごちゃごちゃしちゃったし急ぎすぎな気がする……

アジーンとの対峙でこの後どうなるのか……

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