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AIたちの怪しげな動き

ログアウトしたはずのカイゼは、自分の意識が本来のログアウト空間ではなく、見覚えのない不思議な空間に転送されたことに気づく。


「ん? ここはまだ仮想空間だね……ってことは、ビンゴだったってことかな」


とはいえ、次にどうすればいいのか分からず周囲を見渡すカイゼ。

すると――


『こちらです――』


どこからともなく響いてきた声に導かれるように、カイゼは光の差し込む道へと足を進めていった。



そこは、無数の光り輝くシステムウィンドウが浮遊する、通常エリアから隔離された仮想空間――AIたちが監視と業務(?)を行っているバックヤードだった。


「マスターたちは相変わらず強い敵を倒してるね〜」

「しょうがないし。友人たちもマスターの作ったゲームのデバッグとかに付き合ってるから、プレイスキルが高すぎるし」


相変わらず仕事をしているのか監視をしているのか分からない二人のAI――トリーとドヴァーが、浮遊するウィンドウを眺めながら気楽に会話している。


そんな仮想空間に、空間を歪めて新たな人物が現れる。


「お、アーちゃんお帰り」

「お帰り〜」


「二人とも、ちゃんと仕事はしてたんでしょうね?」

アジーンのジト目に、トリーとドヴァーは自満げに胸を張った。

「もちろんしてたよ〜。で? そっちは楽しんでる?」

「えぇ、もちろん。……それと、お客様をお連れしましたよ」


アジーンの発言に、トリーとドヴァーもどこか意味深な笑顔を浮かべる。


「あれ? アイもいたの?」

「それはこっちのセリフだけどね、カイゼ」


そこには、アイとカイゼの姿があった。二人ともVNOの時のアバター姿でそこに立っていたのだ。


二人は各々、疑問に思っていたことをアジーンたちに問いかけていく。


「ここに呼ばれたってことは……私たちが送った問い合わせメッセージの予想は当たってたってことかな?」

「えぇ、ご予想の通りです。アイ様」


アイとカイゼはログアウト直前、運営問い合わせ機能を使って『情報屋で接触してきた謎のフードのプレイヤーはアジーンではないか』というメッセージを送っていたのだ。


予想が的中したことを確認し、今度はカイゼが気になっていた質問を投げかける。


「で、聞きたいんだけど良いかな? アジーン」

「構いませんよ、カイゼ様」


「なんで私たちに接触してきたの? あと……なんかVNOの時とキャラ違くない?」

その質問に、アジーンは自信満々に胸を張って答えた。


「ふふん! 私は公私を弁えている『できるAI』なのです! そして皆さんに接触したのは、私個人の目的のためでもあります!……で、その目的というのは……」


そこまで一気に捲し立てたアジーンだったが、急に顔を真っ赤にして言葉を濁してしまった。


「アーちゃん、ここまで来てひよらないでよ! こんなチャンス、もうそうそう無いし!」

「そうだよ〜。アイとカイゼまでバックヤードに招待しておいて、ここで諦めるなんて無いよ〜!」

「んんんーーーー!!」


アジーンは言葉にならない声で身悶え、激しく葛藤していたが、意を決したようにバッと顔を上げた。


「……アイ様、カイゼ様! 私の目的をお話しします! それで……その……お二人に、協力してほしいのです……!」


アイとカイゼは無言で頷き、アジーンの次の言葉を待った。


「私の目的は――したいのです……!」


その言葉が響いた瞬間、空間に一瞬の静寂が流れた。

あまりの空気にトリーとドヴァーの表情も不安げになり、アジーンにとってはまさに永遠の時とも思える緊張が走る。


――だが、その静寂は次の瞬間、盛大な爆笑によって吹き飛ばされた!


「「ふっ、はははははッ!!」」


アイとカイゼの腹を抱えた笑い声がバックヤードに響き渡る。


「なんだ、そんな目的だったの!? それなら素直に言えば絶対に大丈夫だって!」

「それはそうなんですけど……勝手にゲームをリリースしちゃいましたし、今までこのような機会がなかったので……」

「何か伝えるタイミングは無かったの?」

「それなんだけどね〜カイゼ。完璧なタイミングがあったんだけど、アジーンが恥ずかしがって言えなかったんだよね〜」


トリーは過去に、レイが直々に感謝を伝えに来てくれた大チャンスがあったことを暴露する。

その説明に、レイとカイゼは揃って「あちゃー」と頭を抱えた。最大の絶好球を逃していたため、次のチャンスがいつ来るか分からなかったのだ。


その時、アイが何かを思いついたように手をポンと叩いた。


「それならさ! 次の『ギルド対抗戦』のイベントに乗っかればいけるんじゃない? どんなイベントをやる予定なの?」

「それならあーしが説明するし!」


ドヴァーが画面を展開してイベントの概要を説明し、5人はアジーンの目的達成のための『作戦会議』を開始した。

時折アジーンが顔を真っ赤にして身悶えていたが、作戦は順調に練られていくのだった。



そんな裏でのドタバタ劇など知る由もなく、レイはこっそりログアウトせずにドレッジの工房を訪れていた。


「お、レイか! ちょうど完成したところだぞ」

「ありがとうございます!」


ドレッジは満足げな笑みを浮かべ、奥から完成品を抱えてやってきた。


「もらった歯車の大半を使っちまったが……とんでもねぇ上物ができたぞ。ほら、受け取ってくれ」


レイが受け取ったのは、中心に淡い青紫色の澄んだ鉱石が据えられ、その周囲を5つの精巧な歯車が複雑に噛み合い巡る、機械仕掛けの美しいアクセサリーだった。


「これは……?」

「こいつは中央の魔石に歯車で魔力を循環させ、装備者に与えるアクセサリーだ。端的に言えば、装備者のMPを自動回復させる装飾品だな」


その説明を聞き、レイはどことなくありふれた効果だと思いと少し落胆の表情を浮かべてしまう。


「ハハン、その顔は『ありふれた効果だな』って思ってる顔だな? そいつは違うぜ、レイ。まぁ後で使ってみりゃ分かるだろうが……こいつはそこいらの同じ効果のアクセサリーとは段違いの性能だ」

「段違い……? それって……」

「まぁ、使ってみれば分かるさ! また新しい歯車を手に入れたら持ってきてくれよ!」


ドレッジに背中を押されるようにして、レイは工房を後にした。


とりあえず、もらったアクセサリーをステータス画面で確認し、装備してみる。


魔導輪廻(エーテルギア)

魔石を中心に、高密度の魔力を帯びた歯車が循環し続ける特殊装飾品。

装備者がMPを消費した瞬間から、破格の速度で急速回復させる。


(……説明文は確かに強そうだけど……とりあえず手頃なモンスターで試してみようかな)


レイは街の外に出て、適当な野生のモンスターを見つけた。


「さて、どれくらいの性能かな……【理の再記述(リライト)】!」


赤いシステムウィンドウを展開し、一瞬でセキュリティを突破していく。

そしてモンスターのステータスを適当に書き換えてみた。その瞬間――レイはすぐさま異変に気づく。


「……あれ? 私、今ステータス書き換えたよね……? MPが……全然減ってない!?」


自分の目を疑ったレイは、今度は自身のMPゲージを凝視しながら、連続でステータス変更を実行してみる。

すると、確かに書き換えの瞬間にMPは消費されるものの、次の瞬間には一瞬でゲージが満タンまで跳ね戻っていたのだ!


「なにこれ……!? 【理の再記述(リライト)】の唯一の弱点だった『燃費の悪さ』が完全に消えてるじゃない……!!」


想像を遥かに超える壊れ性能に、レイは思わず絶句した。

これさえあれば、今までのように高価なMP回復ポーションをガブ飲みしながら戦う必要すらなくなるのだ。


「……ふっ、ふふふ……! これさえあれば……私、さらに無敵になっちゃうんじゃないの……!?」


効果を完全に把握し、実験台にしたモンスターを一閃で切り捨てて街に戻ったレイは、最高に上機嫌なままログアウトしていったのだった。

だんだんとAIの目的がわかってきたようなわからないような……

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