オニオンの悲痛な悩み?
レイがログアウトした後、ギルド【シーカーズ】の面々はギルドホームに残って今後の行動を話し合っていた。
「とりあえずどうっすかね……。装備を整えるにしても、どこで手に入れるべきか……」
「情報屋に行ってみない? やみくもに探しても良いものは手に入らないと思うし」
オニオンの発案に全員が賛同し、一同はセンタリアの情報屋へと足を運んだ。
「それじゃ、使えそうな装備の噂でも探しますかね」
しかし、提示されたのはすでに知られている既知の情報ばかりで、目ぼしいものは何一つ見つからなかった。
「うーん、大した情報はなかったね……」
「そうだね。ていうか、そもそもそんな良い情報があったらプレイヤーが自分たちで独占して手に入れてるよね……」
アイのもっともな意見にみんなが頷き、仕方がないので既製品の装備を買いに行こうとした――その時だった。
「そこの皆さん……装備をお探しですか? それなら、こちらなんてどうでしょう」
すれ違いざま、不意に声をかけられた。
振り返ると、目深にフードを被った人物が手元に一枚の古い紙を落とし、そのまま人混みの奥へと姿を消してしまう。
「誰だ今のプレイヤー……? NPCじゃなさそうだったけど……フードのせいで顔も見えなかったし……」
「さぁな……。でも声はなんか、どこかで聞いたことがあるような気がするんだが……誰だか分かるか?」
ライカの問いかけに、みんな「確かに聞き覚えはあるけれど思い出せない」といった様子で顔を見合わせる。
もしこの場にレイがいればすぐにピンときたかもしれないが、全員の興味はすぐに手渡された一枚の紙へと移った。
拾い上げた紙を開いてみると、それはとある場所を指し示しているマップだった。
「これ、どこだ? 街じゃなさそうだし……ダンジョンかな? 性能の良い弓が入手できると良いんだけど」
「ダンジョンなら良い装備がきっとあるだろ! 最低限の消耗品と買い替え装備を整えて、早速行ってみようぜ!」
そうして一行は準備を済ませ、マップが示す未知のダンジョンを目指して出発した。
◆
「それにしても、アイもライカもいつの間にオリジナルスキルなんて作ってたの? いいな〜! バスタも実は隠し持ってたりするの?」
「私は持ってないな。作りたい気持ちはあるけど、今は新しい食材が入手できる方が嬉しいかな」
「そんなに欲しいなら、スキルショップにでも通えば良いじゃねぇか」
「いや、そういうことじゃないじゃん……! 私ってこのギルドで圧倒的にキャラが薄いじゃん! だから何か目立つ強みが欲しいんだよね……」
切実に嘆くオニオンに、一同は思わず苦笑する。
確かに【シーカーズ】のメンバーは、闘技大会で1・2位に輝き、装備も立ち回りも目立ちまくるレイとカイゼ。
バトル料理人として異彩を放つバスタ。
先のレイド戦でなんかポージングいてるおかしいアタッカーとして一躍有名になったであろうライカ。
同じくレイド戦で愛弓を捧げた特大の一矢を放ったテイマー弓使いのアイ。
それに比べると、オニオンは「ごく普通の剣士」という印象が拭えず、埋もれてしまっているのは事実だった。
「まぁ、言いたいことは分かるけど……きっといつか、オニオンが主役になれる時が来るよ!」
「カイゼに言われても説得力ないな〜! 魔法少女装備で今回のレイド戦でも超目立ってたしね!」
「ちょっと! それまた言ったら魔法ぶつけるわよ!?」
カイゼは顔を真っ赤にしながら杖を構えて怒ってみせる。
「ごめんごめん! そんなに怒らないでよ……!」
そんな和気あいあいとした雑談を交わしながら、一行は街を離れ、深い森の奥へと進んでいった。
そして、マップが指し示すポイントへと到着する。
「マップだとここら辺なんだが……それらしきダンジョン入口は見当たらないな」
周りを見渡しても、鬱蒼とした木々が生い茂っているだけで、ダンジョンのような構造物は見当たらなかった。
「本当にここにあるのかな……? (もぐもぐ……)」
バスタはいつの間にか取り出した手作り料理を頬張りながら、呑気に周囲を見回している。
「ここら辺全部を歩いて探すのは大変だね……。そうだ! カイゼ、空を飛んで上から探してみてよ!」
アイが良いアイデアを思いついたとばかりに提案する。
「う〜ん……まぁ確かに、上空から見れば何か分かるかもしれないね」
カイゼは少し恥ずかしそうにしつつも詠唱を行い、背中に漆黒の翼を展開して上空へと舞い上がった。
「本当に深い森だね……。うーん……ん? あの木だけ、他の木より明らかに巨大だな……」
上空から異変に気づいたカイゼは、すぐに地上へと舞い戻ってきた。
「ただいま! 上から見たら、あっちにある木だけ周りより一回り大きかったよ。怪しいと思う!」
カイゼの案内でその大木の元へ向かうと、確かに他の木々とは比較にならないほど太い幹と枝を広げていた。
そして幹の表面をよく観察してみると――巧妙に隠された扉のような刻みが存在していたのだ。
「周りの木々に紛れてると案外わかんないもんだな! それじゃ、入ってみるか!」
ライカが勢いよく扉を押し開ける。
中へ足を踏み入れると、外から見た大木のサイズからは想像もつかないほど広大な空間が広がっていた。
「わぁ……外から見た時より明らかに広いね! こんな部屋がギルドホームにあれば、たくさんモンスターをテイムして触れ合えるのに!」
「確かにね……。冷蔵庫もこれくらい広かったら、魚にまみれることもなかったのかな……」
「みんな、そんなことより中央に何かいるぞ。どれどれ……樹木でできた騎士みたいなヤツだな」
部屋の中央には、木目で構成された無骨な鎧を纏うエネミーが佇んでいた。
「なになに……【モクナイト】? あんまり強そうじゃない名前だね。それに木製なら燃えやすそうだし、カイゼの魔法で楽勝じゃない?」
オニオンの軽口が癪に障ったのか、【モクナイト】はギチギチと音を立てながら、手に持った巨大なバトルアックスを構えて勢いよく突進してきた!
「おっと! オニオンが弱そうとか言うから怒ったんじゃねぇのか!?」
「そうだったらごめんって! カイゼーーっ! 魔法で燃やしちゃって!!」
「はいはい、離れてないと巻き込まれるよ! ――【インフェルノ】!!!」
カイゼが解き放った苛烈な火炎魔法が【モクナイト】を呑み込み、あっという間に炭くずにして消滅させてしまった。
「相変わらず凄まじい火力だね……」
「ふふ、ありがとうアイ。それにしても、あんまり強くなかったね」
「見つけるまでが大変で、中のボス自体はそこまで強くないタイプのボーナスダンジョンなんだろ。それより、あそこに宝箱があるぜ!」
ライカの言葉に、全員がソワソワしながら部屋の奥に置かれた宝箱へ近づいていく。
そして蓋を開けると――そこには一式揃った絢爛な装備が収められていた。
「おっ、装備だな! どれどれ……」
ライカが宝箱から取り出したのは、美しい刀と、鮮やかな青を基調とした洗練された着物防具――まさに侍を思わせる逸品だった。
「カッコいいーーーーっ!! ねぇ、それ私がもらってもいい!?」
オニオンが目を輝かせ、食い気味に即答する。
その熱意に誰も反論するはずもなく、新装備は満場一致でオニオンのものとなった。
「みんな、ありがとう!!」
「まぁ、オニオン以外その装備を使うヤツもいないしな。レイは欲しがるかもしれないが、あいつはもう気に入ってそうな装備があるしな」
「だね! 弓だったら私が欲しかったけど。ていうか、なんで騎士を倒して和風の侍装備が手に入るんだろうね?」
「さぁ……。見つけ出しさえすればアクセスしやすい場所だし、ランダムで一式装備が手に入るボーナスダンジョンみたいなものなんじゃない? 火属性に弱いから私ほどの魔法じゃなくても楽そうだし」
念願のカッコいい新装備を手に入れ、テンションの上がっているオニオン。
一同は彼のお披露目に付き合いながら笑顔でギルドホームへと戻り、大満足のうちにログアウトするのだった。
地図をくれた謎のプレイヤー?は一体誰なんでしょうね~




