夢のギルドホーム
カーニバリアにて、ダンジョンで獲得した大量の金銀財宝をすべて換金した【シーカーズ】の面々は、さっそく最高級ギルドホームの購入手続きを行っていた。
「確かに1億G、しかとお受け取りいたしました! ただいまより、こちらのギルドホームは【シーカーズ】様の所有物となります!」
窓口の受付嬢から重厚な金色の鍵を受け取り、全員が破顔する。
そのまま浮き立つ足取りで、街の一等地にそびえ立つ一軒の巨大な邸宅へと向かった。
鍵を差し込み、重厚な扉を開け放つ。
「うわぁぁぁ……! 外観もすごかったけど、中に入るとさらに圧倒されるわね……!」
吹き抜けの豪華なエントランス、最高級の炉が鎮座する鍛冶場、プロ仕様の調理器具がズラリと並ぶ厨房、自由自在に訓練できる広大な庭園――すべてが一流で、圧倒的な高級感に満ち溢れていた。
「レイ、カイゼ、ホント二人には感謝しかないよ! 二人の賞金と大金がなかったら、こんなすぐには買えなかったからね」
オニオンから改めて感謝を伝えられ、レイとカイゼは少し照れくさそうに顔を赤らめた。
「ふふん、お礼なら今度はこっちのボス攻略とかレベリングを手伝ってよね!」
カイゼが胸を張ると、オニオンたちも頼もしく笑って頷いた。
「レベルっていうと、さっきのダンジョン攻略のおかげで15にもなってたよ」
オニオンたちがステータス画面を確認してそう呟く。
「私も31になってたね」
カイゼのレベルも順調に上がったようだ。
「あれ……私は上がってない。なんで?」
レイも自分のステータス画面を確認してみたが、レベルは上がっていなかった。
「あー……それってさっきの道中もボス戦も、レイは一切攻撃に参加してなかったからじゃない?」
アイの指摘に、レイは「あ」と思い当たる節があった。
確かにカイゼはボス戦の最中に魔法でスケルトンを一掃していたため、討伐経験値が入っていたのだ。
(うぅ……見学してるだけじゃダメなんだな。今後はちゃんと攻撃に参加しよう……)
密かに心の中で反省するレイであった。
「さて……っと。気づけばもう日付が変わってるな。明日も仕事だし、そろそろ落ちないと」
ゲーム内の時計を確認したライカが、名残惜しそうに言った。
「そっか、みんなは明日お仕事だもんね」
「そうだよ〜。みんなレイみたいに無職……じゃなくて、のんびり過ごしてるわけじゃないからね!」
「私だって本来は激務に追われてるはずなんだけどね……」
アジーンたちAIの顔を思い浮かべながら、レイは苦笑いで返答する。
すると、料理人のバスタがニヤリと不敵な笑みを浮かべた。
「そういえばさ、結局レイの『エクイップメントキューブ』の変身衣装、まだ見てないじゃん」
「あ、それな! どうせならログアウトする前に見届けておきたい!」
ライカも乗っかり、全員が興味津々の視線をレイへと注ぐ。
「はぁ……このままうやむやにして逃げ切れると思ったんだけどな……」
「レイだけ逃げるなんて絶対許さないよ! 私があんな目に遭ったんだから、レイも早く見せてよ!」
カイゼにも両肩を掴んで揺さぶられ、レイは諦めて腹を括った。
「……わかったよ。行くよ、――『変身』!」
レイがキューブを掲げると、全身が眩い紺碧の光に包まれた。
カイゼの時と同じように、軽快な変身バンクが展開されていく。
光が収まり、現れたレイの姿は――
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【ヴィントスカーフ】
赤色を基調とし、口元まで隠れるロングスカーフ。
動体視力に補正がかかり、高速で動いた際のなびく姿は赤い残光として道筋を残す。
【ヴィントジャケット】
黒色のショートジャケット。中に白いシャツを着ている。
軽量ながらも防御力を両立し機動力に高い補正がかかる。
【ヴィントスカート】
黒色のプリーツスカート。ニーハイソックスとの絶対領域は多くのものを魅了する。
クリティカルに補正がかかる。
【ヴィントブーツ】
黒色のショートブーツ。
高い機動力をサポートし、立体的な動きも可能にする。
【ヴィントソード】
紅い刀身を持つ直剣。
その剣からでる残光は華麗な太刀筋を映す。
素早さにより補正がのりクリティカルと威力が強化される。
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どこからどう見ても、文句なしに「めちゃくちゃ格好良い」姿だった。
「「「「「おおおおおっ!! 格好えええぇぇぇ!!!」」」」」
大歓声が上がる中、一人だけ絶望の表情を浮かべる人物がいた。
「なんでよぉぉぉぉぉーーーーーっ!?!? なんでレイの装備だけそんな普通に格好いいのよぉぉぉーーーーーっ!?」
カイゼの痛切な叫びが、広大なギルドホームに虚しくこだました。
仲間たちは苦笑いしつつも、完全にカイゼをイジるモードに入っている。
「この装備すごいよ……機動力とクリティカル補正が信じられないくらい跳ね上がるみたい」
「はぁ……まぁいいわよ。絶対にアジーンたちの贔屓だと思うけどね!」
不服そうに頬を膨らませつつも、カイゼはフッと表情を緩めた。
「それじゃ、さすがに良い時間だし私たちはログアウトするね。レイ、私たちが今度来るまでに、また何か面白いこと探しておいてよ?」
「うん、了解! おやすみみんな!」
仲間たちが一人、また一人と光の粒子となってログアウトしていく。
静まり返った広大なギルドホームに、一人残されたレイ。
彼女は一人、先ほどダンジョンの石碑に刻まれていた詩文のことを静かに反芻していた。
(『旭光の刻まれる地平、その花園は赤き血潮を望む』……やっぱり、東の未開放エリアに『鮮血の花園』があるってことよね。この大陸の東端にあるといいんだけど……)
次なる目的地と目標は決まった。
急ぐ必要はないとはいえ、他のトッププレイヤーたちに先を越される前に攻略したい、というゲーマーとしての抗えない対抗心もあった。
「ふふ、今度みんなに話したら、絶対ノリノリで東に向かうだろうな」
心地よい疲労感に包まれながら、レイはウィンドウを開いた。
胸の中に新たな冒険の高揚感を抱きながら、、静かにVNOの世界からログアウトするのだった。
レイの今回の装備は某カードゲームのロゼみたいなのをちょっといじったものだと思ってもらえれば...




