表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/39

ヴァルネクシア・オンライン サービス開始!

「あのAIども、勝ためにインストールまでしてたのか……」


VRにログインしたところ、すでに《ヴァルネクシア・オンライン》の起動準備は完了していた。

普段ならこのまま開発用のシステムを開いて、あの生意気なAIたちを説教室へ連行するところだが、あいにくサービス開始まで秒読みの段階だ。今さら強制終了しても、世界中のプレイヤーの混乱を招くだけ。何より、私自身に時間がない。


「まったく、どうしてこうなったかな」


そんなことを呟きつつも、私はゲームの開始アイコンをタップする。

時間はちょうど正午。カウントダウンがゼロになると同時に、視界が一気に開けていった。


「さっすが私が作った世界。現実と大差がないね」


ログイン後、キャラクリ画面へと移行する。

こだわり出すとキリがないので手短に済ませようとしたのだが――なぜか最初から、私の好みの見た目がデフォルトとしてセットされていた。

(……多分、あのAIたちの仕業だな)

苦笑しつつそのまま確定すると、眼前に中世ヨーロッパを思わせる活気あふれる街並みが広がった。頬を撫でる風の質感や、行き交う人々のざわめきまで、仮想現実が現実と変わらないレベルで再現されている。


広場の中でスポーンし、少し歩いてみた。

まだ他のプレイヤーたちはキャラクリの真っ最中なのだろう。広場にはNPCの姿ばかりで、プレイヤーらしき姿はまだ見当たらない。


それに、先ほどから自分の格好が妙に気になっていた。下を向くと、私がプライベートで愛用しているお気に入りのルームウェアを模した、やけにリアルな初期装備(?)を身にまとっている。


「まぁいいや。とりあえずステータスの確認でもするか」


目の前にメニュー画面を展開し、ステータスを開いてみる。


----------------

【ステータス】

PN:レイ

JOB:冒険者

所持金: 1000G

Lv (レベル):1

HP(体力): 100

MP(魔力): 30

STM (スタミナ): 30

ATK(攻撃力): 20

DEF(防御力): 20

AGI(素早さ):20

INT(賢さ): 20

LUK(運): 10


【スキル】

無し


【オリジナルスキル】

無し


【装備】

右手: 初心者用片手剣

左手: 初心者用片手盾

頭: 初心者用頭装備

胴: 初心者用胴装備

腰: 初心者用腰装備

足: 初心者用足装備

アクセサリー: 無し

----------------


「……オリジナルスキル? 早速、私の知らない要素が出てきたね」


思わず独り言が口から漏れた、その時。どこからともなく、聞き慣れた声が直接頭の中に響いてきた。


『マスター。オリジナルスキルというのは、プレイヤー自身が作成・構築することができるスキルのことです』


なるほど。プレイヤー自身のアイデア次第では、あらかじめゲームに用意された既存のスキルを遥かに凌駕するものが作れる、ということか。開発者としても、ゲーマーとしても、俄然興味が湧いてくるシステムだ。


そう考えている間にも、周囲の空間が光り、ちらほらと他のプレイヤーたちが姿を現し始めた。


「やっぱりすげーリアリティ!」

「早く冒険に行こうぜ!」

「いや待てよ、サービス開始のイベントがこの後この広場であるみたいだし、少し待ってみようぜ」


興奮気味なプレイヤーたちの会話をBGMに聞きながら、私は頭の中のAIへと念話チャットで返答していく。


「どっから話しかけてるのよ。それより、私は純粋にこのゲームを楽しみたいの。変なチートサポートとかされても困るんだけど?」


『安心してくださいマスター、そんな無粋な真似はしませんので』


「……だったらいいんだけど。ってか、あとの二人はどうしてるの?」


『念のため、サーバーの負荷確認やシステム監視に当たらせています。もちろん、マスターの監視も怠ってはいません』


相変わらず調子が良い。まあ、彼女たちが余計な手出しをしないと言うなら、今は信じるしかない。

さて、まずは何をするか。周りを見渡しながら、私はこれからの方針を考える。


「さっきのプレイヤーたちが言ってた通り、この街でイベントがあるみたいだし少し待ってみるか……。でも、その前に」


私の足は、自然と近くの武器屋へと向かっていた。

やっぱり、すぐにでも冒険に飛び出したい。そのためには形から入るのが鉄則、まずは装備の確認だ。


「いらっしゃい!」


扉をくぐると、髭面の頑固そうな店主の、元気な声が響いた。


「何かいい装備はある? それと、これから広場でやるイベントって、何をやるの?」


「あぁ、嬢ちゃん。さてはこれから旅立つ冒険者組だな? 広場での集まりは、この街にやってきたお前さんたちに、ここでの目的を説明するお偉方の演説さ。……ところで、嬢ちゃんの装備品だったな」


店主は私の着ている服をじろじろと見た。


「ここで売ってる既製品じゃ、正直、嬢ちゃんが今着ているその上質な旅装と大差ないねぇ。良い素材さえ持ってきてくれりゃ、もっと業物を作ってやれるんだがな……」


なるほど、この店はただの販売所じゃなく、鍛冶屋の役割も兼任しているらしい。素材を持ち込んでクラフトする導線が綺麗に組まれている。


「素材、か。例えばどんなもの?」


「そうさな、街のすぐ外にある『始まりの森』に行けば、手頃な鉱石や頑丈な木材が手に入る。……あぁ、そうだ。もし森に行くなら、ついでに『ヒール草』っていう薬草をいくつか摘んできてくれないか? いつも薬を作ってくれる隣の薬屋の婆さんが腰を痛めちまってな。何、タダでとは言わねぇ、引き受けてくれるならちょっとした小遣いと、この街の地図をやるよ」


【クエスト:薬屋の婆さんを救え(ヒール草の採取)を受注しますか?】


視界にシステムウィンドウが浮かび上がる。

店主との自然な会話からクエストへと派生する流れ。私がベースを作った思考ロジックとはいえ、AIたちがしっかり調整し、現実の人と遜色ないレベルで会話からイベントが発生するようになっていることに、クリエイターとして少し安心する。


「店主さん、ありがとう。いいよ、最初の小慣らしにちょうど良さそうだ。素材が溜まったらまた来てみるよ」


「おう、頼んだぜ嬢ちゃん! 森の浅いところならそんな強いモンスターもでないはずだが、一応気をつけてな」


店内に他のプレイヤーが増えてきて窮屈になってきた。私は適当に切り上げ、店を後にした。

次はどこへ向かおうかと考えながら広場へ戻ると、タイミングよく大きなアナウンスが響き渡った。


『――冒険者の皆さん、私はこの探検隊の最高責任者だ。団長とでも呼んでくれればいい』


壇上に立つのは、いかにも歴戦の戦士といった風貌のNPCだ。


『皆さんに課せられた使命は、この未知なる大陸にそびえ立つ謎を解き明かすこと。……まず目を引くのは、あのはるか遠く、雲をも突き抜けるオベリスクだが、焦る必要はない』


団長は厳かに、しかし力強い声で言葉を続ける。


『まずは各地を巡り、安全な街を築いて我々冒険者の足がかりを広げてもらいたい。この大陸には、ここ以外にも同規模、あるいはそれ以上の大都市が存在する。そこを新たな拠点とするのだ。ただし、道中は危険に満ちている。一度その足で訪れ、地脈を繋がない限り、瞬時に移動するような魔法テレポートは使えんからな。地道に歩みを進めるのだ。諸君らの勇敢なる報告を期待している!』


その後も歓迎の演説は続いていたが、私はふっと口元を緩めた。

なるほど。大まかな流れとしては、まずは各地の拠点を解放しながら、最終目標であるあのオベリスクを目指せ、ということか。さらに私には、さっき鍛冶屋で引き受けた薬草採取の用事もある。


「世界観も冒険者の目的も、だいたい私が初期設定した通りだね。これ以上、ここでじっと話を聞いてる時間はもったいないな」


そうと決まれば、早速冒険に出ないと損というもの。

私は演説を聴くのを途中で切り上げ、きびすを返して街の外へと向かった。早くこの足で、この世界を、フィールドを駆けてみたい。


「さてと。どんな冒険が私を待ってるかな」


胸に湧き上がるワクワク感を抑えきれないまま、天才クリエイター・レイは、AIたちの創り上げた広大な未知の世界へと一歩を踏み出した。

オリジナルスキルは実際にあったら楽しそうですよね。

レイのオリジナルスキルはすぐに判明すると思います。

些細な感想やコメントが非常に励みになります。

お気軽にしていただけると嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ