お前あの祠を壊したんか
ギルド【シーカーズ】の面々は、1億Gのギルドホーム資金を稼ぐため、コンコルディアの街外れにある道なき森の中を突き進んでいた。
「オニオン、本当にこっちの方向であってるの?」
「大丈夫なはず……そろそろ見えてくると思うんだけど」
先頭を歩いていた極振り重戦士のライカが、木々の開けた場所で足を止めた。
「おっ、見つけたぜ!」
そこは鬱蒼とした森の中にポツンと佇む、少し開けた小広場だった。しかし、中央には小さな古びた祠があるだけだ。
「ここにダンジョンがあるの? ……祠以外、何にも見当たらないけど」
Kaizeが周囲を見回しながら疑問を呈する。
「ふふん、甘いねKaize。これは祠に特定の儀式を行うと扉が開くタイプギミックだよ」
Reiが知識を誇るように胸を張ると、料理人のバスタは手慣れた手つきで料理を取り出し、モグモグと食べ始めた。
「ご明察〜。じゃあ解明するまで見学してるから、開発者様頑張ってね」
「そんなの食べてる時間なんてないよ! 私にはもう分かったから!」
自信満々のReiは祠の前に屈むと、お供え物の台座に金貨を置いた。
――『100G』をお供えした。
・
・・
・・・
何も起きない。
「……これじゃ足りないか。なら、これでどうだ!」
ドサッとさらに大量の金貨を取り出す。
――『10000G』をお供えした!
・
・・
・・・
やっぱり何も起きない。
後ろでサンドイッチを食べながら生温かい目で見つめてくるバスタたちから、クスクスという失笑が漏れてくる。
「っ……! Kaize、分かった!?」
「いやー全然分かんない。私も絶対お供え物系だと思ってたし」
二人が頭を抱えていると、サンドイッチを食べ終えたライカが「やれやれ」と肩をすくめて歩み寄ってきた。
「おいおい、そんな難しいこと考えてんのかよ」
「じゃあどうすればいいのよ、ライカ!」
「そんなもん、こうするに決まってんだろ!」
ドゴォォォォン!!!
ライカが背中の身丈ほどもある大剣を豪快に振り下ろし、古びた祠を一撃で粉々に打ち砕いた!
「「お前、あの祠をこわしたんか!?」」
ReiとKaizeの声が完璧に重なる。
「テンプレな驚きリアクションありがとね。でも、実際これが正解なんだよねー」
アイが指差した先を見ると、砕けた祠の瓦礫の底から、地下深くへと続く石造りの階段が突如として現れた。
「なるほど……攻撃して破壊するのがフラグだったんだね。……ってか、よくこれ最初に見つけたね?」
「あはは、運だよ。昨日モンスターと戦ってるときに、ライカの攻撃たまたま祠に直撃しちゃってさ。そしたら階段が出てきたんだよ」
「よし、それじゃあ行こうか! ギルド【シーカーズ】、初のダンジョン攻略だ!」
Reiの掛け声に全員が「オーっ!」と拳を突き上げ、怪しい地下階段へと踏み込んでいった。
ダンジョンの薄暗い通路を進む中、オニオンがふと思い出したように振り返った。
「そういえばさ、ReiとKaizeは闘技大会の優勝・準優勝景品で何貰ったの?」
「「あ」」
二人とも受け取ったきり確認するのをすっかり忘れていた。
インベントリから取り出してみると、手のひらサイズのキューブ上のアクセサリだった。
――【アクセサリー:エクイップメントキューブ】
事前に登録した装備セットへ、戦闘中を含め一瞬で着替えることが可能。
※着用時の変身演出を自由設定可能。
「へぇ、システムを介さずに瞬時に装備変更できるアイテムか。戦術の幅が広がりそうだね」
「これ、もう初期セットが一つ登録されてるみたい。上位に渡される装備のことかな。……どんな装備か試してみようか? 私から行くね!」
Kaizeはキューブを胸元にかざした。
「えーっと、音声認識だよね……。ちょっと恥ずかしいけど……『――変身!』」
次の瞬間、Kaizeの体が白の光に包まれた!
あっこれ魔法少女とかの変身バンク的なやつ……
光が収まったそこに立っていたのは――白色を基調とした衣装にステッキを持った、完璧な魔法少女姿のKaizeだった。
「……な、なになになにこれぇぇぇーーーーー!?!?」
自分の姿を視界の端で確認したKaizeが、一瞬で顔を真っ赤にして絶叫した。
「おおー!」「似合ってる!」「可愛い可愛い!」「写真撮ってギルド掲示板に載せていい?」
「ダメに決まってるでしょーーー! もう元の装備に戻すっ!!」
超絶スピードでキューブを操作し、一瞬で元の魔導士ローブへと戻るKaize。
「あーもう! Rei!! なんて黒歴史装備を運営に用意させてんのよ!!」
「い、いや! 私は知らないよ!? 絶対アジーンたちの悪ノリだから!!」
胸ぐらを掴みかからんばかりの勢いで迫ってくるKaizeに、Reiは引きつった笑いで後退る。
「アジーン!なんなのよこれは!」
Kaizeの思わぬ叫びに思わぬ返答が返ってくる。
「アーちゃんは今はいないよ、そんなこと言わないでさ。Kaizeにあってるよ。ちなみにあーしのデザインだからね!」
どうやらドヴァーが回答したようだがそれだけを伝えに来たのだ。
「……はぁ、はぁ……。性能がめちゃくちゃ優秀なのが、なおさらタチ悪い……」
不服そうに呟くKaizeに性能を聞くと、光・聖属性魔法が使え、威力が大幅に跳ね上がる特化装備らしく、ガーゴイル装備とは違うことができ戦術の幅が広がる装備だった。
「絶対Reiのキューブにも同じような変身衣装が入ってるでしょ! Reiも見せてよ!」
「残念だけど、今はそんな暇はないみたいだよ」
Reiが視線を暗闇の奥へ向ける。
この騒ぎを聞きつけたのか、ダンジョンの奥からカタカタと不気味な骨の鳴る音が集まってきていた。
「よし……みんな、シーカーズとしての初戦闘だよ!」
「Reiずるい! あとで絶対その変身見せてね!?」
ReiとKaizeが武器を構えようとすると、前線へすっと踊り出た人物がいた。
「ここは私たちに任せておけって。お前ら、私たちの戦い方まだ見たことないだろ?」
そう言って前に出たのは、マッチョなライカ、コック帽とエプロン姿のバスタ、弓を構えたアイ、そして剣士のオニオンだった。
「それじゃあ……お言葉に甘えて見学させてもらうね!」
暗闇から姿を現したのは、凄まじい数のガイコツ剣士――【スケルトン】の軍団だった。
先陣を切ったのは極振り重戦士のライカだ。
「おりゃあぁぁぁぁぁ!!」
もはや技術も何もない力任せ大剣の一振りが、スケルトンを大量に文字通り粉々に粉砕して吹き飛ばす。
「よし、切り開いたぞ! 続け!」
オニオンが堅実な剣技でブレのない的確な追撃を加え、アイが後方から弓でスケルトンの弱点を正確無比に射抜いていく。
そして一番異常だったのは、料理人のバスタだった。
素手の肉弾戦でスケルトンを粉々に砕いていく怒涛の格闘スタイル!
あっという間に、数十体はいたはずのスケルトン軍団は全滅し、骨の山と化した。
「「みんな……めちゃくちゃ強いじゃん!?」」
ReiとKaizeは思わず声を揃えて絶叫した。
「闘技大会に出てたら、余裕で上位に行けたんじゃないの!?」
「どうだか知らんが、お前ら二人のバケモノには勝てる気がしねえよ」
「それに私たちは大会に出てない分、先行してレベル上げて攻略してたからね。」
どうやらバスタたちは、Reiたちが大会で盛り上がっている間に、かなり先のエリアまで進んでレベリングをこなしていたらしい。
4人ともレベル11で平均的なプレイヤーから見るとかなり高い方だとのことだ。
「てかなんでコックが前線でしかも素手で戦ってるのよ……」
「あぁそれは最初、武闘家になってたからだな。Rei鍛冶師ならコック用の武器でも作ってくれよ」
「包丁でも作れってか……そういえばアイの相棒のマイはどこ行ったの?」
「あぁそれね、テイムしたモンスターを出し入れできるアクセサリーをもらえるんだけど今は出してないんだよ、まだまだ非力でさすがにダンジョンは怖いからね」
「あ、そういえばKaizeって回復魔法とか使えたりする?」
バスタがポーションを飲みながらふと思い出したように尋ねる。
「え? 使えるわけないじゃん。私のビルド、全部火力特化の攻撃魔法だよ?」
その回答に、バスタたちは「やっぱりな」と全員で笑い出した。
そう――このギルド【シーカーズ】、パーティバランスが圧倒的に崩壊していたのだ。
ダメージを引き受けるタンクもいなければ、傷を癒すヒーラーも一人も存在しない。全員が「敵を殺られる前に殺る」ことしか考えていない、超攻撃特化の脳筋集団だったのである!
「ははは! タンクもヒーラーもゼロかよ! 相変わらず極端な仲間たちだなあ!」
「まあ、いつものことだし何とかなるでしょ!」
ReiとKaizeは顔を見合わせて爆笑した。
効率もバランスも無視した、気心の知れた仲間たちとの無茶苦茶で楽しい冒険。
シーカーズの偏りすぎたアタッカー集団は、1億Gのギルドホームを目指し、さらにダンジョンの深層へと爆進していくのだった!
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エクイップメントキューブ
装備品を即座に切り替えれるアクセサリー
最上位の生産職JOBになると生産可能。
1つにつき1セットの装備を登録可能。
闘技大会TOP3に景品として渡された。
ブライトは重装歩兵のような装備が登録されていた。
祠なんて壊すためにあるんですよ!




