六章 「月蝕」
朝日が差す中、河川敷公園に集まった。
最後の生き残りは二人。
黒い祭壇、ローブに身を包んだゲームマスターが現れた。表情は読めない。
「勝者に力を与えましょう。」
若い男の声。
「気づけば、俺はずっとセナのために戦ってた。」
「俺の願いは、セナに託すよ。願いを頼む。」
戦いが終わる。やっと報われる。
セナが祭壇に立つ。
俯き、重苦しい表情。
表情は暗く、視線は迷い揺れる。
顔を上げ言う。
「——この街を、滅ぼして。」
セナを見る。
目が正気ではない。
その瞳は深く、どす黒い。
「悲しい事が、もう二度と起こらない世界にして…」
俯きながら言う。
「素晴らしい願い。冥王の力を手にするにふさわしい…」
薄ら笑いで囁くと、その姿は無数の黒い羽になり舞い上がり、セナの体を覆い始める。
セナは全身を漆黒のローブに包んだ。
空は闇に落ち、黒い球体が現れ、黒と青の炎が街を燃やす。
悲鳴、子が親を呼ぶ泣き声。
「おい!セナなんでこんな事を…」
震え、問う。
セナは、悲しみで押しつぶされて言う。
「…あの子はもう、向こうにいるのに。」
何を言っているんだ?
「向こうなら、辛いことは何もないんだよ。」
目の焦点が合わない。理解出来ない不気味さを感じる。
「こんなのセナがやりたかった事じゃないだろ?おかしいだろ!」
必死に訴えた。
「わからないの翔介?みんなこの世界には居てはいけないんだよ…」
町が壊れて行く、セナも…。
このままじゃ、取り返しがつかなくなる。
俺のできる事は――これしかない。
静かに立ち上がり、デッキを構えた。
セナとのデュエルが始まった。
「ワルキューレドラゴン召喚!」
悲痛な宣言。
戦う、確実に大事なものが失われる。
どんな戦いより苦しい。
「翔介、この世界は不安定なんだよ、ここにいる限り大切なものを失う。危険な世界なんだよ。」
セナが諭すように言う。ざわつく心を制して翔介は答える。
「仮にそうだとしても、セナの願いを叶えるわけにはいかない!こんなことをしては行けないんだ!」
全力で声を張る。我に返る様子はない。もともとこういう考えなのか。
ワルキューレドラゴンが迫る。
いつもなら、守りを固められると、勝てない。
だから急ぎ、攻める。
セナは不敵に笑い、カードを掲げる。
「漆黒の天使ダークルカディス召喚!」
ルカディスと同じフォルムだが禍々しい漆黒の身体に黒い翼がある。セナの好みではない。
ダークルカディスの漆黒の翼が飛び散り、ワルキューレドラゴンに向かう。
ワルキューレドラゴンは、灼熱のブレスを吐き応戦する。
黒い翼の嵐と、赤い炎がぶつかり合う!
しかし、ワルキューレドラゴンの炎はかき消され、ダークルカディスの黒い翼が、ワルキューレドラゴンに纏わりついた。
ワルキューレドラゴンは黒くなり粉々になった。
セナの戦いに、恐怖した。
(こんなのセナじゃない)
マグマフェニックスを繰り出す。
溶岩を撒き散らす。地面は焦げ、ダークルカディスは怯んでいる。
セナがカードを使う。
判断は早く、自信に満ちている。
「魔法、ダークエクリプス!」
黒い月から、漆黒の閃光が迸る。
マグマフェニックスは弱り、落ち、ダークルカディスが迫る。
二体はつかみ合う。力比べだ。マグマフェニックスは、押され地面にたたきつけられる。
そのまま、漆黒の剣をダークルカディスが突き立てる。マグマフェニックスは、炎を出しながら爆散した。
セナは翔介をじっと見つめ
「あなたも向こうへ送ってあげる!大丈夫すぐに終わるから!あっはっはっはぁぁ…」
狂気の笑いを浮かべる。
喜んでいる。
「ダークルカディスで攻撃!」
黒い天使ダークルカディスが青黒い炎を放つ。
その瞬間、セナは胸を押さえて苦しみだした。
狂った笑顔が一瞬歪み、瞳の奥に苦悩が見えたそして
「だめだよ…」
セナの表情が苦痛に歪む。
「さよなら翔介。」
と涙した。
(もうセナのことわからない)
青黒い炎をまともに受ける。
バリアは全て弾け飛び、空に向かって光の破片が飛び散る。
青黒い炎がまとわりつく。
熱い、痛い。
視界が真っ黒になり意識が遠くなる。




