表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

二章「寄道」

帰り道

これからの戦いに備えて二人でカードを買いにいく。

セナはあまり話そうとしないのできっと疲れてるんだと思った。


暗い夜の中、カードショップの照明が眩しい。

明るい店内に入る。

窓際の小学生がショーケースのカードを食いつくようにのぞいている。

それを見てセナは、


「楽しくても、いつか終わりが来るのに。」


ため息混じりに呟いて、目を逸らした。


ショーケースを眺めながら、それぞれ必要なカードを探す。


店員にカード名を伝え、会計を済ませた。


翔介は、パックを開封した。


「うお、シークレット来た!」


「は?ずる。」


セナの眉間にしわが寄る。


「本当昔からギャンブル好きよね。

何故か当たるし!」


「買わなきゃ当たらないからな!」


「私は賢いから、確実に買うの。」


お互いが購入したカードを見て、二人はカードの戦法について談義し始めた。


「ワルキューレドラゴンノヴァはロマンあるけど、実戦では役に立たないよ。」


セナは正論で諭す様に言う。


「俺は使いたいからデッキに入れてるだけだ。」


意地になって言い返した。


「まだそんなこと言ってるの?」


セナは少しだけ目を細めた。


「中学の頃からずっと弱かったじゃない」


昔の事をイジるのが楽しいらしく。

少し意地悪に微笑んでいる。


「はあ?何回も勝ってるだろ」


苛立った声を上げた。


「大会でラストブレード入れてた人が?」


やれやれこれだから初心者は、と言わんばかりに、困った顔で言う。


「……あれはお前に刺さるからだよ」


セナを意識して、対策していることを認めるのは少し気恥ずかしい。


「私にどうしても勝ちたいみたいね?」


挑発的な顔で言う。


「おう、望むところだ。」


頭に来てデュエルスペースを指差した。


二人は勝負を始めた。

ワルキューレドラゴンで速攻で攻める翔介。


「攻撃。何かある?」


確認を取る。

セナはニヤリと笑い。


「魔法、エンジェルゲートを使います。ハイパールカディスを召喚!」


してやったりと言うセナの表情に、翔介は渋い顔をする。


ハイパールカディスに完全に防がれ、ジリジリ追い詰められる翔介。


「攻撃で勝ち。対戦ありがとうございました。」


セナが大袈裟に言う。煽りもいいところである。


「まだ終わって無いって!ワルキューレドラゴンノヴァ召喚!デッキトップのカードをタダで使える!」


翔介は思わず立ち上がった。

この攻撃が防がれると形勢が逆転するかもしれない。


セナの瞳孔も大きく開く。


瞳には、ワルキューレドラゴンノヴァの輝く箔が映り込んでいた。


しかし、気合いの一声で捲れたのはハズレのモンスターだ。


「当たりが出れば逆転勝ちだったのに!」


「ほらやっぱりロマンはロマンよ。大逆転なんて無いの。」


セナは厳しい口調で言った。


「うるせー上から目線でアドバイスするな!」


むきになって声を荒げた。

その時セナが声を上げて笑った。

もう一年ぶりくらいに見た気がする。

セナのこの笑顔が大好きだ。


「やっぱり楽しいね、こうやって対戦するの。」

セナは心から嬉しそうに笑っていた。

昔、中学生の時二人で近所のショップにいって、少ない小遣いでカードを揃え、笑い合い対戦した頃と何も変わらない関係。

これから、どんな相手が来てもセナと乗り越えられる気がした。


「また今度対戦しようぜ。学校のみんなも呼んでさ!」


「そう…だね…」


少し間を空けてから翔介と目を合わせずに答えた。

蛍の光の曲が店内に流れる、閉店時間だ。


2人、街を歩いて帰る。


夜景が見える、丘の上で町を見下ろす。


夏の虫の鳴声が聞こえる。風の匂いがする。


セナは思想を語る。


「翔介…私、バトマブが大好きなんだ。

人の数だけ好きな理由があって、どんな遊び方も許してくれる。

戦う、集める、考察する。こだわる。

なんか、どんな生き方してもいいんだよって、言ってもらえてる、そんな気がするんだ。」


そういうセナの笑顔は街の明かりに照らされて、幻想的な魅力があった。



2人は解散し、セナは自宅で休んでいた。


机にカードを広げながら、妹に勉強を教えていた日のことを思い出す。


「お姉ちゃんすごい」


「わたし、秀才なんだ!」


わざと自慢げに言った。

妹は、羨望の眼差しでこちらを見ていた。


「私もお姉ちゃんと同じ高校入る!」


ふと気がつき、スマホを開く。


「……私の考えおかしい?」


小さくつぶやいて、画面に視線を落とす。

表情は苦悩に満ちている。

AIの音声が、淡々と答えた。


『思考に偏りが見受けられます。またその思想は危険です。もう少し楽しい事に、目を向けて見ては?』


セナは、少しだけ目を見開いた。


「……ちがうよ」


ぽつりと、そう言った。


「私、おかしくないんだよ…」


セナは、眉をひそめる。


AIの音声が続く


「その考えは、妹さんの望みと一致していますか?」


「楽しくても、辛い事があったらダメなんだよ…」


孤独感で息が詰まる。

顔をうずめた枕が、静かに濡れていった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ