一章「再会」
一閃。
煌めく鎧の天使が、赤い龍を切り裂いた。
暗い路地の奥で、少女は一人戦っていた。
彼女は、勝たなければならない。
この世界の運命を変えるために。
夏の風が気持ちいい、ビルの景色を見ながら歩く。
天辺に赤い光が見えて、大きな何かが飛び去ったように見えた。
(疲れているのかな。)
翔介は、カードゲームのバトマブの対戦した帰りだった。
高校二年。
裏路地を通り、いつもどおり帰るところ。
しかし、いつもの様子と違う。
男二人の背後には赤い龍が従っていた。
その前で、月明かりに照らされた少女を、守るように鎧の天使が立っている。
風で揺れる短い髪。
「お嬢ちゃん、二対一勝てると思うか?」
背の高い男があざ笑う。
「雑魚二人なら、数に入らないでしょ?」
少女は平静を装っているが、焦りの表情も見える。
背の高い男が手を振りかざす。
赤い龍の一体が少女に向かい突進する。
少女の掛け声で、鎧の天使が立ちふさがり赤い龍を切り伏せ、肉片が飛び散る。
見たことがある。
鎧の天使は、ハイパールカディス。
赤い龍たちは、ライザドラゴン。
バトマブのモンスターが実際にいる。
思わず感動した、しかし、あまりに危険な光景でもある。
「おい目撃者だ!消せ。」
背の低い男がこちらに気づき、ライザドラゴンをけしかけてきた。
龍の刀がこちらに迫ってくる。
(やられる!)
「魔法、ブロックシールド!」
少女の声が響くとともに、目の前に光の盾が現れ翔介の代わりに砕け散る。
「逃げて!」
少女が気遣う。
その時、持っていたカードが光りだし、目の前に展開した。
「ワルキューレドラゴン召喚!」
叫んでいた。
天使の翼をもつ龍が現れライザドラゴンに炎の息を浴びせる。
ライザドラゴンは爆散し、その地面は抉れ、熱で赤く発光している。
「翔介!私たちのターンよ!」
聞き覚えのある声が元気づけてくる。
「セナ!?なんでこんなことに巻き込まれてるんだ!」
同級生のセナがなぜ?
「いいから勝つわよ!」
セナの合図でハイパールカディスが背の高い男に切りかかる、光の破片が飛び散り宙に消える。
バトマブではバリアをすべて失い攻撃されれば敗北する。
翔介も指示を出す。
「攻撃!」
翼をはためかせワルキューレドラゴンが背の低い男を蹴散らす。男のバリアが消し飛ぶ。
「ハイパールカディスで止め!」
抑揚のない声でセナが指示だし、鎧の天使が無慈悲に剣で一人二人と切り払う。
男二人に黒い炎がまとわりつき、燃え上がった。
男たちは焦げついた地面だけ残して消えた。
翔介は悪寒を感じた。
吐き気に近い感覚もある。取り返しがつかない事をした。
「なんでこんな事してるんだ、何があったんだ。」
顔面蒼白でセナの顔を見たが彼女は涼しい顔だ。
「デスゲームよ。最後まで生き残れば——力が手に入る」
「もう十五人しか残ってない、ここまで来たら終盤よ。」
「お前、あの時…妹の事でやめたんだろ。」
その日、学校で呼び出されたセナは、顔面蒼白で荷物をまとめて帰った。それ以来会っていない。
翔介がそう言うと、彼女は一瞬だけ目を伏せた。
「……うん。」
小さく頷いたその声は、弱々しい。
その声を聴いて思わず声が出た。
「妹のためなんだな。危険だけど……俺も協力する」
自分も力になりたい。
「早く良くなるといいな。」
「……そうね。」
セナは微笑んだ。
その笑みは、どこか少しだけ無理をしているように見えた。
「ありがとう翔介。」
どこか迷いのある小さな声で言った。




