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三章「学校」

次の日


翌朝、翔介はセナの部屋を訪ねた。


部屋が暗い。

セナが慌ててシャッターを開ける。


「散らかっててごめん…」


プリントされた写真がたくさん。

伏せられているのもある。


カードは種類ごとに綺麗に分けられていた。自分の雑なストレージとはまるで違う。


参考書は、最後に開いた日からそのまま時間が止まったように、机の端に揃えられている。


机の横には手書きのイラストが何枚も重ねられていた。天使の絵が多い。


セナの部屋は、きれいに片付いているのに、どこか時間だけが止まっているように見えた。



しばらくして、二人は部屋を出た。


「魔法、スクライイングチューター!」


魔法で周りの様子を探る。意識に辺りの光景が流れ込んでくる。デスゲーム参加者同士も近くに居れば気配を感じる。

敵の気配を頼りに進む。


見覚えがある、校舎と運動場二人がかつて通っていた高校だ。

今は夏休みで部活がある生徒だけが来ている。

セナは俯いている。この運動場から敵の気配を感じる。


「まさか、こことはね。行こう、敵が待ってるわ。」


セナと一緒に校門を通る。


「やっぱり懐かしいね、この校舎」


セナは上機嫌だ。


「セナさん!お久しぶりです。お元気でした?」


いつもの声が聞こえた。

如月。カード部の後輩で、中学からの付き合いだ。

よくセナと3人でバトマブを遊んだ仲だ。


「ああ!如月くん元気だった!?」


セナの声が弾む


日差しが熱い。

立ち話を続けるにはつらくなり、三人はカード部の部室へ向かった。


埃っぽい小さな部屋が部室だ。


棚には、カードや備品が置いてある。


如月は久々にセナに会えたので、頻繁に話しかけている。


こうして久しぶりに3人揃うと思い出す。


中学生の時、初めて3人で大会に出た時。


如月は対戦相手に声が小さいと因縁を付けられ、動揺してミスをし、負けてしまった。


「声が小さい人に注意したら余計小さくなるからやめなさい!」


セナがガラの悪いプレイヤーに立ちはだかる。


「女?」


笑っている。


「次の対戦相手は私。負けたら如月君に謝って貰える?」


「はぁ?だれが?」


「もしかして?女の子に負けるのが怖いのかなあ?」


ニヤリと笑う


「いいぜ!お嬢ちゃんが勝ったら土下座でもなんでもしてやるよ。

でも負けたら、今日一日付き合ってもらうぜぇ」


セナは相手のカードを無効化し、妨害して、一方的にゲームをすすめる。


「またそれかよ!」


席を立とうとする相手。


「何かルールに問題?ジャッジー!」


大袈裟な身振りで煽る。


「わかったよ…」


意気消沈。


「ダイレクトアタック!」


セナは誇らしげだ。


「如月さんすいませんでしたー」


謝り立ち去る相手。


如月は、目を輝かせてセナを見ていた。

あの日から、如月にとってセナは特別になった。



部室は盛り上がっている。


セナのスマホの画面には美しい天使のイラストが写っていた。


「またセナさん描いたんですか?見せてください…」


如月が興奮気味に言う。


「またルカディスのイラスト描いてるの?」


翔介は、呆気に取られている。


「ルカディスは永遠の平和と秩序を司る大天使なんだよ。背景ストーリー知らないの翔介?」


えへんと誇らしげにする。


「へー。強いから使ってるのかと思ってた。」


「もちろん強いけど、背景ストーリーも好き。」


「セナ、そういう話するとき楽しそうだよな。」


「セナさん、本当に詳しいですね…」


如月はうっとりしてセナとルカディスを交互に見ている。


「よおセナ!セナじゃないか!久しぶり」


いつもの声が聞こえた。房州。カード部の男子三年生。


「房州先輩!元気でした?」


セナの声が弾む。


「おお、おまけに翔介じゃないか、相変わらずお熱い二人だな!」


セナは顔を赤らめた。俺も顔が熱くなる。


「俺ら、そういうのじゃないですから。」


反射的に否定した。


セナが睨んでくる。


「本当に、お前ら立派になった、俺もバトマブでそろそろ負けるかもな。」


「謙遜しちゃってー。翔介になんて負けないですよね。」


セナがにやりと笑う。先程の無礼に仕返しできて嬉しいらしい。


セナを睨む、

窓から差し込む日差しに照らされるセナの笑顔は、魅力的だ。


「妹の介護のために学校辞めたんだったな。大分厳しいと聞いているが、頑張れよ。暇になったら、また遊びに来い。」


気の毒そうに房州は、声をかけた。


「そうですね…」


セナの声のトーンが低くなり、目が虚ろになる。


以前、セナの妹が学校に来たが、かわいいと評判だった。


その時、如月が、房州先輩に耳打ちした。


房州先輩は校舎に入っていく。

如月はこちらを睨んでいたようにも見えた。


「翔介。私学校辞めちゃったから来るの、気まずかったけど。やっぱりいいところだね。」


ショートヘアの先を弄りながら


「普通に続けたかったなあ……」


かける言葉が見つからなかった。


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