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異世界帰りの大賢者  作者: 九一七
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第六十五話:財団設立とか

 次は何に手を出そうかと考えていた波留だったが、白川からの収益予測を聞き終えた彼は、グループ全体で4兆円近い収益になるとの予測から、そのうち1兆5000億円を国益のために社会に還元しようと思い立った。


 理由は3つ。


 一つは田中グループのイメージUPだ。1兆5000億円という大金を社会に還元すれば、田中グループが拝金主義ではないという良いアピールになるだろう。


 もう一つは国力の増強であり、将来の田中グループを盤石にするためにも国にはいろいろな意味で強くなってもらいたかった。


 最後の一つは国内経済の活性化である。1兆5000億円を社会に還元したくらいではまだ雀の涙だが、将来的にはその数倍から十数倍に規模を拡大しようと波留は考えている。それだけのカネが市場で巡れば、間違いなく経済は活性化するはずであり、周りまわって田中グループの収益も増えていくだろうというのが彼の読みである。


 どうやって社会に還元するのか?


 財団を設立すればいいというのが波留の判断だ。国に任せていてはろくでもないことに使われる可能性が高いと考えた波留は、田中グループで財団を立ち上げ、直接社会に還元するやり方を選んだ。


 どんな財団を立ち上げるのか?


 財団名は公益法人田中支援財団。そのなかに子育て支援基金、介護支援基金、研究助成基金のとりあえず3団体を設立し、経済的に厳しい人たちにおカネを回すというのが波留の考えである。


 将来的には、結婚支援基金――人口を増やすため――、奨学金基金――理系優遇の返済不要な給付型――ほか、いくつかの基金を設立して財団を大きくすることも考えている。


 特に人口を増やすことは、ほぼ無限の寿命を持つ波留にとって早いうちに動いておきたかったという事情もある。50年後、あるいは100年後、日本の人口がこのまま下がり続けて行けば日本の国力は落ち、ひいてはそれが自分に跳ね返ってくるのだ。だから今のうちから動いて、最悪でも10年内に出生率を2以上にしておきたいと彼は思っている。


「白川さん、一つお願いがあります」

「どのようなご用件で?」

「来年度の話になりますが、田中グループからの寄付金という形で財団を立ち上げようと思っています」

「財団ですか」

「ええ、とりあえず子育て支援基金、介護支援基金、研究助成基金の3つを柱に――」


 波留は考えていたことを白川に伝えていった。


「1.5兆ですか。ずいぶん思い切ったことをお考えですな。普通は特定公益増進法人への寄付における法人税控除額の上限に抑えるものですが」

「特定公益増進法人?」

「教育、文化、社会福祉などに著しい貢献をもたらす公益財団法人を国が指定する税制上の制度です。控除額が一般の財団より優遇されます」

「その特定公益増進法人とやらの指定は取れると思いますか?」

「基金の額が額ですからなぁ、社長が国に働きかければ比較的容易に取れるのではないでしょうか。今や社長は国にとっても重要人物ですからな」


 霊的事象の発見や利用法の公表、人間をはるかに凌ぐ性能を持ったアンドロイドの実用化、さらには核融合発電の実用化で、波留の名はとっくに世界に轟いている。そして沙耶も、AI業界や多くの企業、そしてエンターテインメント業界では注目の人物になっていた。


「ではまず財団の設立と公益財団法人としての認定のために動いてもらえますか? 必要な人材はいくらでも採用して構いません」

「最後の大仕事として、やりがいを感じずにはいられませんなぁ。この白川、身命を賭してとまでは言いませんが、やれるだけのことはやってみましょう」

「最後の大仕事にはならないかもしれませんよ」

「?」


 小声でつぶやいたせいか、波留の最後の言葉は白川には聞こえなかったようだ。本人が望めばだが、この仕事が終わったあかつきには、彼に若返りの霊薬を試してもらおうと波留は考えている。


 ちなみに老化は病や怪我ではないから、若返りの霊薬を医薬品として売るつもりは波留にはない。思い切りボッタクリ価格で金持ちたちに売っていくつもりだ。


 ただしそれは、波留が世界一の資産家になってからの話である。それまでは内々に重要な人物にだけ薦めようと彼は考えている。


 ちなみに、ただいま絶賛治験中の霊薬各種は、医師たちの間では常に話題に上るほど有名になっていて、早いところ治験を終わらせて量産化が望まれていると波留は父から聞かされていた。というか通常の治験薬とはケタ違いの薬品数を医療現場の要望で出荷――治験用だからもちろん無料――しているらしく、慣例を破って早いうちに国の認可が下りるかもしれないと父は言っていた。


 もしそうなってしまえば、核融合炉の国内外への割り振りでてんやわんやの外務省のお偉方や政府の関係者には、さらなる重荷が圧し掛かってくることが必然である。波留は心の中で合掌するとともに、国のお偉方には申し訳ないと思いつつも、さらなる爆弾について熟考するのだった。

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こちらの作品「逆行転生自己育成リア充計画~リトライ、リア終小説家のかなり遅すぎた初恋~」もよろしければお読みくださるとうれしいです。
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