第六話:調べものと買い物
波留が帰宅した当日、彼は19時に自室のベッドで目を覚ました。疲れ具合から言って明日の朝まで余裕で寝ていられるが、せっかく母が御馳走を作ってくれているのだから、それを無視することなんてできない。だから彼は寝過ごさず、強制的に起きた。
これは異世界で身につけた技術というか、体質というか、波留は何時間眠ると決めたら、ちょうどその時間だけ寝て起きることが出来るようになっている。
それはいいとして、一階に降りて顔を洗ってさっぱりした波留は、母が丹精込めて作ってくれた夕食を家族三人で美味しくいただいたのである。メニューはタイの塩焼きと刺身、カツオのたたき、サワラの西京焼き、メバルの煮つけ、味噌汁、おしんこ、ホカホカの炊きたてご飯だった。
20年ぶりの魚料理に舌鼓を打った波留は、母の「異世界で魚料理っていうイメージが湧かなかったのよね。だから魚尽くしにしたの」という言葉に頭が下がる思いだった。母は昔から鋭いというか、波留が考えていることが顔を見ただけで読めているような感じがしてならない。
そんなこんなで夕食を済ませた波留は、父から現金80万円と15.6インチのノートパソコンを受け取って自室に戻った。なぜスマホではなくノートパソコンだったのか?
調べものには画面サイズが圧倒的に大きいノートパソコンが便利だからだ。スマホはおいおい買いに行けばいいと波留は思っている。
波留は速攻でパソコンの初期設定を終えると、まず初めにマイクロソフトアカウントをローカルアカウントに変更し、クラウド機能とかAI機能とかGAMEBARとか、LineとかTikTokとか、サードパーティー製のセキュリティソフトとか、その他不要なソフトを全てアンインストールした。
――要らんソフトが多すぎるんだよ。
唐突だが波留はLINEが嫌いだ。TikTokとかはブラウザで見ればいいと思っているし、SNSも調べものくらいにしか使ったことがない。そんな彼はEdgeを立ち上げてGoogle Chromeをダウンロードし、既定のブラウザに設定しなおした。Edgeを使いたくないのは、Microsoftが裏で何をしているか分からないというか、今は大丈夫だとしても後で何をされるか分からないからだ。それはGoogleにも言えることだが、Microsoftよりはマシだと思っている。
それはいいとして、波留は真っ先にYoutubeでオカルト関係の動画を倍速で漁っていった。オカルト関係のYoutuberがどんな配信をしているのか、どんな心霊動画が出回っているのか。そんなことを調べまくった。
――心霊動画は全部フェイクなんだろうな。何もしないで霊力がカメラに映るはずないし。
ただ、画質の粗さとか質とか、どんな動画が注目されているのかは参考になったし、どんな配信者が人気があるのかも参考になった。
それからネットフリマやオークション関係のサイトに行って規約を読み込んだり、使い勝手を確認したりしていると、眠気が襲ってきた。
――もう寝るか、流石に眠い
気づけば午前2時を回っている。さすがに眠くなった波留は、着替えるのも忘れてベッドに倒れ込んだ。
翌日、波留は朝から都内へと出かけることにした。行き先はメガネ屋さんとパソコンショップだ。あらかじめ調べておいたメガネ屋さんを周って伊達メガネを150個ほど買い込と、35万円ほどの出費になった。
伊達メガネは幽霊が視えるメガネに加工する予定で、商品名は『霊視メガネ』にするつもりだ。パソコンショップには、世界中の情報を集めるための当面の武器になる予定の高性能パソコンを探しに行った。
そのパソコンは波留が使うのではなく、とあるアシスタントに使ってもらう予定である。彼女ならそのパソコンの性能をすべて引き出してくれるはずだ。というかパソコンごときではどれほど高スペックの品を用意しても、彼女が使えばパソコンの方がボトルネックになる。
まぁ、それに関しては一旦おいておくとして、彼が買おうと思っている性能を持った高性能パソコンは、残金45万円ではとても買えそうになかった。
まだ必要なものが出てくるだろうし、ある程度の資金は手元に残しておきたかった。
というか、メモリとストレージの値段がバグみたいに高くなっている。店員さんに聞いてみると、世界中のAI用のデータセンターとかが買い占めてアホみたいに値段が高騰しているらしい。
――中古屋を周るか……いや、安く済ませるにはジャンク屋を見て回った方がいいか。
ということで、波留が秋葉原のジャンクショップを周って手に入れたのが以下だ。
512GBの健康状態注意のNVMeジャンクSSDを1個(4500円)
8TBのセクタ不良ありジャンクHDDを2台(5000×2=10000円)
起動しないNVIDIAのグラフィックボードRTX4090を1台(15000円)
ASUSのピン折れマザーボード ROG MAXIMUS Z790 HEROを一枚(12500円)
起動しないintelのCPU corei9 13900Kを1個(7000円)
動作未確認・保証なしの32Gbメモリ2枚(5000×2=10000円)
故障した1.5KW電源(0円)
壊れたCPU用の水冷クーラーを1台(2000円)
黒のジャンクPCケースを1台(4500円)
25インチの画面割れジャンクFHDディスプレイ3台(1000×3=3000円)
中古のキーボードとUSBマウス、32GBのUSBメモリ(12500円)
その他ケーブル類やCPUグリス、熱伝導シート、結束バンドとかいろいろ(15000円)
合計:87,000円
新品で買えば90万円ほどかかるハイスペックのパソコン部品がこの値段で手に入るのだから、ジャンク品はお得だ。修理ができればだが。波留はそう考えている。
なんとか手持ち資金を25万円以上も残し、出費を抑えることができたとほくそ笑む。買ったものは人目がないところで全て魔法で収納し、彼は家路へと就いたのだった。




