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異世界帰りの大賢者  作者: 九一七
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第三十九話:閑話~とある新人の野望

 いつかは出るんじゃないかと噂されていたものがある。その噂には信ぴょう性などなかったが、能力者――霊能力者――に憧れる者、あるいは目指す者にとっては指標を得る上でも非常に重要なアイテムである。


 それがついに売り出された。商品名はそのものズバリな霊力計測器、田中特殊雑貨工房製だ。


 自分の霊力がどれくらいなのか? 能力者に成れる霊力の目安は? 悪霊を自力で祓うには最低どれくらいの霊力が必要? 現場で活躍している能力者の霊力は?


 そんなことを考えながら廊下で順番を待っていると、ドアの向こうから気の抜けたような女の人の声が聞こえてきた。


「はーい、次の人」


 そしてドアが開くと、悔しさにだろうか顔をゆがめた同年代の若い男が出てきた。彼はうつむいたまま廊下を歩いていく。そんな彼を気にする余裕などなかった。というか、今は期待と不安が入り混じって他人に気を遣う余裕などない。


 部屋には白衣を着た、髪が長くて色白なちょっと好みの年上そうな女の人が長机を前に椅子に座っていた。


「畑山健治です。よろしくお願いします!」

「あー、そんなに固くならなくていいよ。リラックスしてね」


 やっと順番が周ってきた。白衣を着た女の人がプローブが無いテスターみたいな機械を向けてくる。そしてボタンのようなものを押してしばらくするとピピっと音がした。


「はい、畑山さんの霊力は125ですね」


 そう言われても、果たしてその数値がどのレベルにあるのか分からなかった。その思いを見透かされたのか、白衣の女の人が説明してくれた。


「一般人の平均値は10程度と言われてます。当社社員の平均は80程度ですね。ですから畑山さんの霊力値は優秀なほうですよ」


――っシャぁぁぁ!


 内心飛び上がりたくなるくらい嬉しかった。この会社、株式会社廻倫会に入社することになったのは地元の神社で神主さんから霊視メガネで見てもらったとき、「君は霊力が強いね、どうだいうちで働いてみないか?」と、誘われたことが切っ掛けだった。


 神主さんには悪いと思ったけど、悪霊払いで名を上げるなら廻倫会が一番だ。給料もそこらへんの会社と比べてかなり良いらしいしな。


「そうなんですか?」


 喜びをかみ殺して聞き返してみたら、白衣の女の人は楽しそうに笑いながら答えてくれた。


「嬉しそうですね。ですがこれからですよ。霊力が100を超える方は基本的に実務部への配属になります」

「実務部とは?」

「お祓い業務がメインとなる実務部隊ですね。実務を望まない場合は今のうちに仰ってください。どうしても霊が苦手な方もいらっしゃいますから。そういう方は開発部か総務部の配属になります」


 考えるまでもない。常々やりがいがあって人の役に立つことを仕事にしたいと考えていた。それになにより祓い人――悪霊を祓うことを職業にしている者の通称――はカッコいい。


「実務部でお願いします」




 それからひと月が経過したが、自身の霊力で悪霊を祓うことがどれだけ難しいのかを実感したというか、まずは霊力を認識することすらできない状態だった。


 悪霊を祓うには自身の霊力を言霊に乗せられなければ何もできない。言霊とは霊力が宿った言葉で、廻倫会では神道の祝詞を利用している。


 会長が神道の元権禰宜(ごんねぎ)――神道の神職名で権禰宜が一番下で禰宜、宮司の順に偉くなる――だったことからそうなったらしいが、それはこの際置いておこう。


 実務部の新人はリーダーとなる班長ごとに今のところ5つの班に分かれて配属されているが、依頼が入ると班長について現場に向かい、補助をするのが当面の仕事になる。


 装備には田中特殊雑貨工房製のお守りと呪符を渡されるが、お守りはもしもの時に身を守るためのもので、呪符は班長の指示があった場合――班長単独では祓いきれない場合など――に使用される保険のような位置づけだ。


 依頼が入っていない場合はひたすら修行だ。修行は田中特殊雑貨工房の社長、田中波留氏が出版した霊能力強化マニュアルに沿って行われる。


 田中波留氏は霊視メガネを皮切りに様々な霊能アイテムを開発しては商品化している凄い人だが、一番すごいところは霊能力、あるいは霊術の付与能力だと言われている。


 彼はとんでもない霊力をもっていて、悪霊祓いに関しても日本一ではないかと噂されているが、霊能力を科学的に解析して見える形で商品化し、理論を含めて公表した功績は計り知れない。


 彼のおかげで世界中の認識っていうか常識が変わっちまったからな。とにかくだ、世界がそうなっちまって素質が有ると分かった以上、絶対に上り詰めてやる。


 修行は想像以上に辛いが、いずれは霊力1000を超える会長の横に立てるように頑張ろうと思っている。そしていつかは独立して会社を立ち上げるんだ。目標は大きく田中特殊雑貨工房だ。


 いや、それはちょっとというか、かなり無理があるか……とにかく会長に追いついて独立を目指す。いや、追いつけなくても実力を上げて独立する。それが最終的な目標だ。


 努力なんて柄じゃなかったが、その目標のためになら頑張れる気がするし、霊力は過酷な環境で鍛えれば鍛えるほど上がっていくってマニュアルに書いてあるしな。限界はあるらしいけど頑張ろうと思う。そしていつかは……。

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こちらの作品「逆行転生自己育成リア充計画~リトライ、リア終小説家のかなり遅すぎた初恋~」もよろしければお読みくださるとうれしいです。
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