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異世界帰りの大賢者  作者: 九一七
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第三十七話:未来絵図

 2027年も4月に入り、田中ホールディングスは決算を迎え、申告を済ませることがることができた。2026年度の決算をおさらいしておくと、総売り上げは613億に登り、営業利益で451億、納税額は149億になった。手元には300億強が残る計算だが、工場や研究所の建設費とかを差っ引くと約150億が内部留保額となった。


 とんでもない、かつ、前例のない利益率であるが、製品にはそれだけの価値があると波留は考えている。現に飛ぶように売れているのだから彼の考え方もあながち間違いではないのだろう。


 それはいいとして、当初予測より売り上げが伸びた原因は、護符の需要が予想外に高かったことで、近く印刷装置を増設することになった。エナジードリンクについてはサンプル配布用を波留が自ら製造していたが、今月から工場が稼働することになっている。そしてシワ取りクリームに関しても今月稼働予定だ。


 発毛剤については来月からいよいよ治験がはじまる予定で、動物実験でも全くと言っていいほど副作用が確認されなかったことから、もしかしたら従来よりも治験期間が短くなるかもしれないという報告があった。


――杉本さん、張り切ってたからなぁ~。各方面に強引に働きかけたのかな?


 その他の霊薬については、全ての試薬について動物実験で全く副作用が出なかったどころか、その主作用においてとんでもなく薬効が高く、医学界や薬学界からの注目度が凄いことになっているらしい。


 ただし、既存の大手医薬品メーカーからの妨害工作というか圧力が両学会に掛かりはじめているらしく、素直に霊薬の効果に期待する良心派と、大手医薬品メーカーにべったりな利権派に二分されているそうだ。勢力的には良心派がかなり優勢で、大きな問題にはならないだろうと杉本さんは言っていた。


――異世界では逆だったな~。


 異世界では貴族にべったりな薬師や回復魔法使いが大勢を占めていて、良心的な薬師や回復魔法使いは少数派だった。ちなみに、医者という職業は存在しなかった。


 それは置いておくとして、波留はなにも既存の医薬品メーカーと正面から潰し合いをする気はなかった。薬局やドラッグストアで買える安価な医薬品は既存メーカーに任せるつもりだ。彼が市場に投入しようとしている霊薬は、緊急を要する、あるいは既存の薬では完治できない難病に効く薬である。


 だからもちろん高額だ。つまり、波留は高額な医薬品市場を狙っているのだ。既存メーカーと完全にはぶつからないが、ある程度は既存メーカーに引いてもらって住み分けをしようと考えている。


 AI事業に関しては、現在かなり小規模のデータセンターを建設中である。市販品のGPUやストレージやメモリ等の必要部品をNET通販で大量に買いあさって何とかしようと沙耶が頑張っている。サーバシステムや制御機器は全て彼女が市販品を改造し、異世界の技術も併用して構築している最中だ。


 生成AIの顧客ターゲットは一般人ではなく企業であり、格安プランは用意していない。すべてが企業別にカスタム可能なプランである。もちろんその中にもランクがあって、導入費数百万~から数千万、利用費月々十数万~数百万の価格帯を考えている。売り込みは各種展示会やNETでのデモと営業部隊に任せる予定だ。


 生成AI事業で実績を作ったら、いよいよ車の自動運転分野と、AI搭載のアンドロイド事業へと乗り出すことを考えている。顧客はもちろん国内外の自動車メーカーと金持ちだ。


 これらのAI事業に関しては既存メーカーへの配慮や忖度など一切考えない。ただし、自動車製造分野への参入は考えていない。あくまでもAI事業とアンドロイドすなわち人型ロボット業界への参入だ。


 波留はこれらのAI事業で、最低でも十兆円を超える営業利益を上げようと考えている。それだけでもすでに日本一の利益を誇る企業ではあるが、人的資産や企業の歴史や国との関りなどを合わせた総合的な指標ではまだ日本一とは言い難かった。


 波留は霊視メガネや護符で準備資金を作り、霊薬とAI事業で一気に内部留保を増やして会社を大きくする。それを足掛かりにして本格的に各方面へと事業を展開し、日本一の、あるいは世界有数の企業グループへと昇り詰める。


 これが波留が描いている田中ホールディングスの未来絵図だ。そこまで行くことができれば、どんな権力者であろうと彼を粗雑には扱えなくなる。彼の言葉や行動を無視できなくなる。


 それが波留の狙いであり、その発言力を利用して周囲を、ついでに日本という国を、いずれはこの地球世界を暮らしやすい環境に改変していくことが最終的な目標となる。


 あまりに広大な大風呂敷であるが、波留はそれを絵空事だとは考えていない。充分に達成可能な目標だと捉えている。決算の報告書を読み返しながら、彼はそんなことを考えてほくそ笑んでいた。




 一方、波留の霊力強化の術を受けた綾川は、施術以降一週間ほど痛みと戦うことになっていたようだ。服や下着が肌と擦れたとき、シャワーを浴びたとき、食事時、あらゆる場面で炎症がまだ引いていない神経が過敏に反応し、研究に支障をきたしているようだった。


 けれども綾川は、将来的に実験や研究の効率が上がることを目標に、毎晩寝る前に波留の教えに従ってまずは霊視の能力を開花させようと波留が著したマニュアルを元に試行錯誤と訓練に励んでいるようである。


 実験や研究に関しても「あいたた」とぼやきながら以前と変わらぬペースで着実に進めているようだった。その様子を垣間見ていた波留は、彼女の執念というか一途さというかバイタリティの凄さにに感心するしかなかった。


 波留が改良したプラズマ及び気体原子の制御装置の性能もあってだろうが、綾川の研究は捗っているようだった。

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こちらの作品「逆行転生自己育成リア充計画~リトライ、リア終小説家のかなり遅すぎた初恋~」もよろしければお読みくださるとうれしいです。
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