↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界帰りの大賢者  作者: 九一七
27/68

第二十七話:着々と整っていく環境

 魔力計以外の計測器も波留は試作していった。その際、何度か社員に対して霊力と言うべきところを魔力と言いかけて誤魔化すことがあった。だから今後は一人で思考するときも魔力や魔素といった向こうのファンタジー用語は使わないことを習慣づけることにした。


 それはともかく、計測器類の試作は終わって今は技術部に任せて製品仕様に設計しなおしてもらっている。もちろんコストを考えて市販のコンピュータ類は使わず、基板から自社設計にしている。


 もちろん計測器類は商品化して売り出す予定だ。


 そして9月になり、社員数も順調に増えて今では両社合わせて200人を超えた。エナジードリンク工場用の土地買収も終わり、10月には着工することになっている。


 レンズの処理工場とシワ取りクリームの製造工場はすでに着工していて来年1月の操業に向けて超特急で建設が進んでいる。工場と言っても、内部がほぼがらんどうの倉庫に近い建物だから納期的には何とかなりそうだとの報告を波留は受けていた。もちろん装置類もすでに部品を発注していて操業に間に合わせる予定だ。


 工場で稼働させる予定の付与装置は構造が単純なこともあって、部品の機械加工だけ外注し、あとは内製したほうが早いということになった。


 特許出願の方は田中霊薬分の出願も終わって、今は今後予定している製品群や技術群の出願に向けて動き出している。知財部門もようやく社員が増えて今では20名を超えるまでになっている。


 そのうち、弁理士は村上含めて3人しかいないが、有望な若手をカネと労働条件の力で各地の特許事務所から引っ張ってくることができた。


 波留にもう一人の秘書が付き、仕事がずいぶん楽になったと感じている。第一秘書の沙耶は相変わらずパソコンとにらめっこの毎日で、この状態は工場が稼働する来年頭まで続くだろうと彼女は言っていた。だから第二秘書が必要になったというか、沙耶が第二秘書を付けるべきだと主張し、その話を聞いた母が人選してくれた経緯があった。


 そんなこんなで10月に入り、霊視メガネや護符の販売は相変わらず予約の受付を停止するくらいには売れ続けている。シワ取りクリームもサンプル品を売り出す予定だったが、医薬部外品――医薬化粧品――にあたるということが分かってその予定を取りやめることになった。


 シワ取りクリームを製造販売するには医薬部外品製造販売業許可と製品単独の届け出と承認が必要らしく、急いでも半年はかかるということで最近母は忙しくしている。


 既存のシワ取りクリームより確実に安全な成分、というか油成分、セラミド、ヒアルロン酸、グリセリンを使ったごくごく普通の保湿クリームを母材にしていることもあって認証は間違いなく降りると思われる。


 11月に入ると、来年度以降に販売していく予定の製品群や技術群、そして装置類の特許出願やそれを裏付けるための実験データ採取や取りまとめに波留は時間を取られることになった。


――これはやってられん。


 切実にそう思った波留は、技術研究所を立ち上げることにした。人員は大学や研究施設で、研究資金が足りないばかりに燻っている若手研究者から選抜した。


 霊薬関係で懇意にしてくれている大学教授数人から優秀な若手研究者に声を掛けてもらい、波留と沙耶の前でプレゼンをする機会を作って人選にあたったのだが、採用に至った割合はおおよそ5人に1人程度だった。


 採用に至らなかった者の主な理由は創造性の欠如や視野の狭さや協調性の欠如。確かに皆頭が良さそうで優秀ではあった。が、波留が立ち上げようとしている研究所は基礎研究の場ではない。応用研究が主体になるのだ。それを理解できない者が多かった。大学の研究室なら基礎研究は大いに結構というか、ぜひ頑張って成果を出してほしいものであるが。


 けっきょく波留が採用したのは35人の応募の中から選別された7人の若手研究者だった。そして採用された中に1人だけ特異というか、風変りというか、とにかく変な奴がいた。髪は自分で切ったのか後ろ髪の長さがあまり揃っていないボサボサざんばらボブで、しかも前髪ぱっつんで、可愛い系ではあるが決して美人ではないというか、ちょいブスの女だった。履歴書によると年齢は34歳らしい。


 彼女は基礎研究を望んでいて波留は採用を見送ろうかと当初は思っていた。けれども、基礎研究は基礎研究でもその研究は波留が造ろうと思っていた製品にとって極めて重要な研究だったのである。アピールの仕方も酷かった。


『お前が望む研究はカネさえ出せば何でもやって成果を出してやる。そのかわり私の研究も続けさせろ』


 面接官に対してこのセリフである。波留は自分が面接官を務めるときにちゃんと身分を明かしていた。


 にもかかわらず、何とも傲岸不遜で採用されたい気持ちが本当にあるのか? と、疑いたくなる女だったが、所属研究室教授の推薦文にはその基礎研究の分野では世界の第一人者にも引けを取らないと書いてあった。


 波留は異世界でこの女のような性格の研究者を何人か見てきた、全員男ではあったが。それは置いておくとして、コイツらの特徴は研究以外にほとんど興味を示さない研究バカであるということだ。


 要するに世渡り下手で出世ができない。彼女も身分は助手らしいからその特徴とも合致している。こういった人種は当たればとんでもない成果を残す。それは異世界で何度か経験済みだった。波留はそれに賭けて彼女を採用することにしたのだった。


 そんな人員を迎えて立ち上げたのが田中霊子技術研究所だ。


 ちなみに彼女の専門分野は、超高温下における重水素プラズマの特性研究である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
こちらの作品「逆行転生自己育成リア充計画~リトライ、リア終小説家のかなり遅すぎた初恋~」もよろしければお読みくださるとうれしいです。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。