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異世界帰りの大賢者  作者: 九一七
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第十八話:父の入社と霊視処理装置の開発

 会社が発足してすぐ、父が新たな社員と共に入社してきた。父以外に新たに加わった社員は、技術担当、営業担当、製造担当、知財担当の四人である。


 全員男性で、3人が父がいた会社からの引き抜き、1人がフリーの弁理士で知財を担当してもらうことになった。波留は父と母に社員をスカウトする際は人格と協調性を第一に選定してくれと頼んである。


 出世欲や金銭欲が強すぎて他人を蹴落とそうとする人や、ゴマすりが得意な人、そもそも人格に難ありの人は、たとえ能力がどれだけ優れていても会社全体で見ればマイナスになることが多いし、職場がギクシャクすることになる。また、真面目過ぎる人も問題だ。適当な息抜きが出来なければ当人にも問題が出てくるし、周囲にも影響を及ぼしかねない。


 波留は一応四人と面接を兼ねた雑談をしながら人格や性格に問題はないか、話に嘘がないか探ってみたが、致命的な問題はなかった。これなら問題ないだろうと考え、入社を認めることにした。


 父を信頼していないわけではないが、創業メンバーは将来幹部になる可能性が高い。だから人物鑑定には慎重になる波留だった。今日入社した社員は全員が部長待遇か課長待遇だ。とはいってもまだまだ社員は少ない。


 当面は役職に関係なく最前線で実務を担ってもらうことになる。父と母はしばらくの間スカウトに専念してもらって、即戦力となる社員を増やしていこうと波留は考えている。


 ただ、人格面に優れた人はなかなかスカウトに応じてくれないと父が零していた。それでも波留に条件を緩めるつもりはない。急がば回れではないが、焦って人を増やすよりも、そうした方が会社の成長と発展は早いと分かっているからだ。


 そんなこんなで、波留はレンズの霊視処理を行うための装置について、技術部長、製造部長、知財課長と打ち合わせを行っていた。


「こんな装置をイメージしているんですけど」


 波留はコピー用紙に鉛筆で書きなぐったポンチ絵――概略図――を数枚テーブルに広げ、取り囲むように四人がその絵を見ている。


 最初に声を上げたのはの技術部長の高田41歳だった。


「この円形トレーに200枚のレンズを乗せて処理するわけですよね?」

「そうですね」

「処理時間はどれくらいを見積もってますか」

「どうでしょうねぇ、まだ試作試験もしてないから大雑把な予測でしかないけど10分から20分は必要かな」


 異世界において魔道具での付与にかかる時間は魔素濃度に比例していた。ということは、地球では魔素濃度、すなわち霊子濃度が異世界の100分の一程度であるから付与する時間も100倍かかる。


 波留は自分の魔力を使って付与しているから2~3秒で付与できるが、地球の大気中を飛び交っている魔素、すなわち霊子を付与に利用するならば、その時間は効率を最大にしても彼が直接付与する場合の100倍以上時間がかかると思われた。


 波留はそれを考慮して処理時間を10分から20分と予測したのである。


「となると、1処理あたり20分かかると仮定すれば月産20万枚の処理に装置が2ライン必要になりますね」


 高田はそう言って腕を組んだ。


「そうなるでしょうね」


 次に発言したのは製造部長の永野51歳だった。


「処理が終わったトレーの交換は自動を考えてますか?」

「いや、容易な作業だし、そんなに頻繁に交換するわけじゃないから人手に頼ろうと思ってる。将来生産数が伸びれば自動化も考えるけど」

「分かりました。それから、製品性能が不安定化する要素はありますか」

「そうですね、ホコリとか結露……というより湿度かな。それと一番厄介なのは霊力によるノイズだけど、ノイズカット機構を装置に組み込むから問題は無いです」


 永野はしばし考える素振りを見せた後に提案してきた。


「となると、クリーンブースかクリーンルームが必要になりますね。湿度の安定化を図るならクリーンルームにすべきでしょう」

「そこらへんは任せます。工場建設予算に必要経費を計上しておいてください」

「了解しました」


 その後は装置の仕様をもう少し細かく議論し、詰めていった。そしてあらかた煮詰まって――議論を尽くして結論が出た――きたと感じた波留が、今までじっと三人の話を聞いていた知財課長の村上32歳に話を振った。


「今までの議論で特許になりそうな、あるいは出願すべきだと思われた事柄はありましたか?」


 難しい顔をして議論を聞いていた村上は、うつむき加減だった顔を上げ、波留の目をしっかりと見みた。


「ええ、当社として抑えておくべき技術が何点かありました。ただ……その前に大きな問題がいくつかあります」


 波留は分かっているような顔をして頷き、続きを促す。


「一つ目は霊子について、次に霊力について、三つ目が霊力を用いて例えば霊視の効果を発現させる原理について、最後に物体、この場合はレンズですね、それに効果を付与する原理について。これらを科学的に証明する必要があります。霊子は自然現象ですからそれだけでは特許になりません。霊力については今のところグレーです。それが自然現象なのか技術なのかが私には分かりません。たとえばですね、電力は自然現象として理解されていますから今はグレーとしか言えないです」


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こちらの作品「逆行転生自己育成リア充計画~リトライ、リア終小説家のかなり遅すぎた初恋~」もよろしければお読みくださるとうれしいです。
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