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異世界帰りの大賢者  作者: 九一七
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第十三話:心霊騒動

 背が高い方の男が霊視メガネをかけた。そして相方の姿が瞳に映った瞬間に顔色が急変する。あきらかに今までとは違う反応を見せる相方に、ツッコミ役の背が低い方の男は怪訝な顔でツッコむ。


「迫真の演技だね、騙されないよ~」


 はじめて見るレベルでの相方の動揺っぷりに、背が低いツッコミ役はそう返したが、背が高い男がものすごく真剣な、しかも怯えの色が見える形相で叫んだ。


「お前ちょっとそこに立ってろ!」


 背が高い男はカメラの前に慌てるように走っていく。


「映ってくれるといいんだが……」


 背が高い男が霊視メガネを顔から外し、片方の度なしレンズをカメラのレンズの前にかざす。するとチャット欄が阿鼻叫喚になった。


”なにコレ、ちょっと怖いんだけど”

”背後霊?”

”悪霊だぁっ!!!!!!!!!”

”AI乙”

”守護霊????????”

”お寺行ってお経上げてもらえ、マジで”

”AIだって”

”これってマジモノ?”

”憑かれてやんのwww”

”AIおつ”

”そのメガネマジモノ?”

”悪霊退散!!!!”

”逃げてー!!!!!!!”



”にわか乙、この自然さはAIのフィルターじゃ不可能w”

”自然すぎるし不自然なとこねぇよ。AIじゃないって”

”さっそくポチってきました”

”無くなるぞ、急げ!”

”時すでに遅し”

”買えなかった”

”AI乙”

”情弱乙”



”サンプル価格の20個は完売しましただって。https://※※※※※※”

”AI乙”

”呪われ乙”

”これ、ホンモノ?”



”1個100万……ボリ杉wwwwww”

”買えない値段じゃない”


 チャット欄は大荒れになっているが、背が高い方の男はそれどころではなかったようだ。霊視メガネをカメラのレンズにかざしたまま、撮影担当からカメラを奪い取ると、背が低い方の男に見えるように確認用のディスプレイを動かしながら近づいていく。


 そのディスプレイに映った自分の姿を見た背が低い方の男が腰を抜かしたように尻もちをつき、顔を青くしてガタガタと震えだす。


「えー、ちょっと洒落にならない事態になったので山田を連れて知り合いのお寺に向かいます。配信はこのまま続けますので」


 背が高い方の男は山田というらしい背が低いほうの男の手を引いて無理やり立たせ、車の後部座席の乗せて自分はその横に乗り込んだ。カメラと霊視メガネを受け取った撮影者は、助手席から霊視メガネごしに二人の様子を映している。ライブの視聴者数が凄い勢いで伸び続けていた。


 その後車は山中の道を抜け、市街地に入った。しばらくしてお寺らしき門の前に車が止まる。そして背が高い方の男はチャイムを鳴らしながらドンドンと門をたたき続けた。


 数分して私服姿の住職らしき人が迷惑そうな顔で姿を現し、車からヨロヨロした足取りで出てきた山田を見て厳しい顔つきになった。


「ずいぶん質が悪そうなモノに取り憑かれてるね」

「見えるんですか?」

「ああ、黒い靄みたいなのがね。とにかく中に入りなさい」

「あの、撮影してもいいですか?」

「……構わんよ」


 住職らしき人は少し間を置いてそう答えた。二人と撮影者は広い仏間のようなところに案内され、山田を仏間の奥に座らせた住職らしき人がその正面に座り、通りの良い声でお経を唱え始めた。するとしばらくして、山田に取り憑いた霊が苦しみだす。


 どれくらい時間が経っただろうか、1時間か、2時間か? 住職らしき人の読経は続いている。けれどもその甲斐あってか、もがくように苦しんでいた悪霊が山田から離れ、そして仏間から壁を抜けて逃げていった。


「これで大丈夫だと思う。夜が明けたら神社に行ってお守りを貰ってきなさい」

「ありがとうございました! お礼は後日必ず持ってきます」

「ああ、それならいいよ。毎年お布施は貰ってるからね。あんた檀家の田口さんのところの息子だろ」

「はい。とにかく山田を助けてくれてありがとうございました」




 そんなことが起こっているとはもちろん知らない波留に、沙耶が報告する。


「霊視メガネ、残り全部売り切れました。それから販売サイトの霊視メガネにも2件注文が入ってます」

「なんかいきなりだな? 発送準備が終わったら、なにがあったか調べてくれるか?」

「かしこまりました」


 それからさほど時間を置くことなく、沙耶の報告で波留は霊視メガネが売れ出した経緯を知った。宗教関係者から広まると思っていた彼にとって、動画配信者のネタにされた結果だったとは、少し以外なことであった。


 けれどもよくよく考えてみれば、常にネタを欲している動画配信者が霊視メガネのことを拡散するのはごく自然なことだと理解した。


「動画配信者様様だな」


 こと拡散力に関して言えば、有名配信者の影響力はすさまじい。もうテレビとか新聞に情報を頼っていた時代ではないのだ。無名の一般人でも、SNSで1発バズれば恐ろしい拡散力を持つ。


 その拡散力を波留は体験することになった。自分でもボッタクっている自覚がある定価100万円の霊視メガネが、それから1週間もしないうちに売り切れてしまったのだ。


 今ではネットオークションで転売の対象にされているほどだ。ただし、100万円を超えるような高額転売は、古物商許可が必要だったり、いろいろと法律の壁があるようで、それを知らずに転売しようとして警告されたり、ただの伊達メガネを霊視メガネと偽って販売してみたりと、いろいろと問題も起きているようだった。

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こちらの作品「逆行転生自己育成リア充計画~リトライ、リア終小説家のかなり遅すぎた初恋~」もよろしければお読みくださるとうれしいです。
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