第2話 雑用パンを焼き、飴を食べる
遅くなりました。第2話になります。
楽しんで頂けたら幸いです。
任務2日目の朝4時
体内時計がルクスを叩き起こす。窓の外はまだ薄暗い。素早く身支度を整え厨房へ向かった。
ルクスの任務はギルドメンバー全員にキスをしてもらう事。まずは信頼を得るのが近道だ。
朝食の仕込みを始める。持参した食材を使う。生地をこね、発酵させ作る。お風呂の掃除をしながら、住人の起床を待つ。今日は急ぎの用が無いので、みんな7時以降に起きるらしい。
時計の針が7時を少し過ぎた頃、2階からアリアが降りて来た。
「おはよう、ルクス君。朝食の準備して貰って良いかな?」
「おはようございます!すぐに準備します。」
朝食は焼きたてのパン、目玉焼きとベーコンだ。アリアの用意をしていると、フレアとリサも起きて来た。
みんなの目玉焼きの硬さの好みを聞いて作る。
「美味しい!もしかして、このパン手作り?大変だったでしょ?」
「褒め過ぎよアリア、下僕が調子に乗ったらどうするの。仕事なのだから当たり前よ」
「...」
フレアはルクスを下僕と認めたらしく、釘は刺すが不味いとは言わない。リサは今日も黙って食べ進めている。ルクスは未だにリサの声を聞いてない。
「今日は1階と2階の廊下を掃除する予定です。みなさんのお部屋の掃除や片付けはどうしますか?」
「私の部屋から掃除しなさい。洗濯物も溜まってるわ」「分かりました」
フレアの話によると、フィルとルルカは休みの日は昼前まで起きない。朝食の片付けが終わり、フレアの部屋を訪れる。
ルクスの目的は片付けでは無い。ご褒美にキスをもらう事。初日フィルがご褒美にほっぺにキスをしてくれた。恐らくこのギルドでは成果報酬にキスをするのだろう。好都合だ。ノックをする。
「入りなさい」
フレアの部屋には白と金を基調とした調度品、天蓋つきのベッド。どれもが高級品だと一目で分かる。初めて見る世界に圧倒されてしまった。
「何?突っ立てないで早く片付けなさい。そこに洗濯物あるでしょ」
「はい!すみません!」
大量の洗濯物を運び出し掃除をする。2時間を過ぎた程で綺麗になった。
この程度でご褒美は期待出来ない。更に尽くす為に紅茶を淹れる。
「…及第点ね」
「味の好みを教えて頂けたら、フレアさんに合ったお茶を淹れることも出来ます。」
フレアは何かを考えているような顔をし、こちらにチラリと目をやり、ふと思い出したように口を開いた。
「及第点とはいえ、前の雑用よりはマシだわ。ここに来る前は何をしていたの?」
「孤児院で管理のお手伝いをしていました。」
孤児院は一般的に教会が運営するものだ。ルクスが育った教導院とは孤児を育てる部分しか似てない。『教会』という言葉に何かを見抜こうとする目つきだったが、小さくため息を吐いて視線を逸らす。
「ふうん。まあどうでもいいわ」
フレアはカップを置き寝台で横になる。このままでは終われない。ルクスはすかさず進言した。
「僕マッサージも得意ですので宜しければ施術させて下さい」
「そう。殊勝な心がけね。そこまで言うのだから下手なら許さないわよ?。肩からしなさい」
ベッドにうつ伏せになったフレアの肩に手を置く。教導院で培った成果を発揮する時が来た。
ルクスは指先に絶妙な力加減を加えてつつ、凝り固まった筋肉を丁寧に優しくほぐしていく。
「っ…!なに、これ。ふっ…!」
「痛くありませんか?」
「大丈…夫だから、続けなさい。あっ!」
下手なプロよりもルクスのマッサージが上手いことは、この時ルクス自身は気付いていなかった。10分ぐらいほぐしただろうか、フレアの体は熱を帯びたように熱かった。
「も、もう今日はこのぐらいでいいわ!少しは良くなったかしら」
「呼んで頂けたらいつでもしますね。2回目からの方が更に気持ちと評判なんですよ」
「⁉︎…そ、そう。ならまた頼もうかしら」
フレアは2回目の未来に戦慄した顔をした気がするが、どうやら満足しているらしい。
そろそろ他の業務もする必要がある。仕方なく一か八かでルクスは褒美をねだる事にした。
「あの、フレアさん。もしよろしければ、ご褒美を頂きたいのですが」
「はあ?下僕の分際で調子に…」
フレアを反射的に叱ろうと起き上がったがそれが良く無い。ルクスとの身長差のせいで、至近距離で上目遣いの直撃を受ける。一切の計算無く行うルクスの才能がフレアの理性を一時的に破壊する
「ご褒美が欲しいの?下僕のくせに…」
「ダメ、ですか…?」
ルクスは無意識に首を傾げる。天然の年上殺し。教導院で生き残った最大の要因と評される技にフレアは屈した。
「そ、そうね。少しぐらい良いかしら。今回だけ特別よ?」
「はい!ありがとうございます!」
純粋無垢の笑顔にたじろぐフレアを尻目に、ルクスは任務の進展を確信した。
しかし、フレアは何故かベッドの横の引き出しを開け始める。思わずルクスは声を掛けた。
「あの、フレアさん?ご褒美のキスは?」
「何言ってるのよ。フィルじゃあるまいし、そんな下品な事はしないわ」
ルクスは予想外の作戦失敗を突きつけられ、顔が青くなる。このギルドにご褒美にキスをする習慣などないのだ。フレアは丸い何かをルクスの手に置く。それはまるで宝石のようにルクスには見えた。
「飴よ。その飴私がお気に入りの高いやつだから味わって食べなさい」
「こんな高級な物頂いて良いんですか?」
「ダメならあげないわ。早く食べなさい」
ルクスの声が震える。見た事はある。しかし生きる為の食事をギリギリして来たルクスは、口にした事などない。ゆっくり口に含む。
「とても美味しいです。初めて飴を食べました。今まで食べた物で1番美味しいです!フレアさんありがとうございます!僕一生忘れません!」
「大袈裟ね。下僕は、食べたら仕事に戻りなさい」
そう言うフレアはルクスの言葉の中にある違和感を感じたようだが、ルクスの幸せそうな笑顔に思考を放棄した。作戦は失敗に終わったがルクスは忘れてしまってるように見えた。
昼間に食材の買い出しを行い夕食を作り始めた。この夕食でルクスの歪さが露呈する。
いかがでしたか?(^ω^)
少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。
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2日に一度の更新を目指しています。またお会いしましょう




