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第3話 雑用食卓につく

第3話になります。

ルクス君の『あれ』がバレちゃいます。

楽しんで頂けたら幸いです

任務2日目の夜

ルクスは野菜と肉の具材がたっぷり入ったシチューを作る。食卓には既に5人が席につき談笑をしている。


「フィルのせいで、下僕ったらご褒美にキスして貰えると勘違いしてたのよ。代わりに飴あげたら大袈裟に喜んじゃって」

「何それ、可愛いー!」「ほっぺにキスぐらい、してあげれば良かったのに可哀想よ?」


昼の恥ずかしい話が共有されていたが、ルクスは特に顔色を変えない。暗部では教官達目上の存在に逆らう事などあり得ないし、勝手に話に混ざる事も許されない。


「お待たせしました。」「待ったぜ少年!」


シチューとパンを運ぶとルルカがハイテンションで迎えてくれた。気付けば他メンバーも談笑をやめており、みんなに配り終えると食事が始まる。


「高級店で出てきそうなぐらい、美味しいよ!ルクス君!」

「ルクスおかわり」「...!」


いつ食べたのか、ルルカが速攻でおかわりを要求する。そのタイミングでリサも皿を空け差し出す。2人分のおかわりをすぐにルクスは運んで来た。


「それにしても不自然よねぇ?いくら家事が得意とはいえ、冒険者協会が子供を紹介して来るなんて」

「下僕はここに来る前は孤児院で管理の手伝いをしてたそうよ」「そう、孤児院...ね」


フィルとフレアはゆっくりとルクスの正体に迫っていた。ルクスはみんなが食事をする中、料理の片付けをしているとアリアから声が掛かる。


「ルクス君!一緒に食べようよ!」

「分かりました!」


厨房から端材入りお湯スープとカビの生えた硬いパンを持って来て、ダイニングの隅に座り食べ始める。


ギルドメンバーは時間が止まったように、その光景を見て動きを止めた。アリアが絞り出すように話し掛ける。


「ルクス君...なんでテーブルで食べないの?」

「どういう意味ですか?」


教導院は一般常識をルクスに教育し忘れていた。ルクスにとって生まれ育ったスラム街と教導院が全て、そこにルクス達奴隷身分が座って良いテーブルなど無かった。アリアは奴隷身分の証足るルクスの切断された左小指を、一瞬見て何かを悟る。


「ルクス君っーー」


アリアは瞳を潤ませながら、ルクスのそばに行き手を取る。フレアやフィル達も黙ってその光景を見て、瞳を伏せた。


「ルクス君、ここではみんなでテーブルで食べるのがルールなの。だから床で食べたらダメだよ?」

「そうなんですか⁉︎すみません施設と違うルールなの、気づきませんでした」

「私とアリアの間が空いている」


リサの声を初めて聞いた。他のメンバーも珍しいのか目を丸くしている。アリアの優しい嘘を信じたルクスが食事を持ってテーブルに座る。真っ先に気付いたアリアは思わず口を押さえ、他メンバーもルクスの食事の内容に気付き絶句する。


ルクスは初めて座る椅子に感動と照れ臭さが混じった笑顔を見せ、端材のお湯のスープとカビの生えたパンの食事を再開する、ここでようやくルルカが口を開いた。


「ルクス…その変なスープ何?それにそのパン…」

「え?パン?…あっ⁉︎」


ルクスの顔が青ざめていく。急いで立ち上がると床に伏せ、頭を打ちつけるように床につけた謝罪を始める。


「すみません!毎日食事をして良いと聞いてましたので、食費の余りで勝手にパンを購入してしまいました。これを含めて3つ購入してます。調子に乗ってすみませんでした!」


突然の謝罪にまたも硬直するメンバー達。その動揺を逆鱗に触れたと思い震え上がるルクス。年の功か最年長のリサが、銀狼族の大きな尻尾でルクスの背を包むようにして言う。


「ルクス、怒ってない。私達はお前が食べてる物に驚いている。それは食事とは呼べないものだ」

「???」

「パンとシチューの余りがまだあるのだろう。皿を出し持って来い、それとスプーンもだ」

「はい!」


ルクスは急いで厨房に取りに行き戻って来た。シチューとパン、スプーンをリサの前に置く。するとリサはルクスの席にあった食事もどきをずらし、ルクスが持って来た皿達を並べ出す。


「これがこのギルドのルールだ。雑用も私達と同じ卓で同じ食事をする。次に破ったら追い出す」

「待ってくださいリサさん!僕がこんな物を食べたら、他の皆さんに怒られてしまいます!」


リサはもう話す事は無いとした顔で、自分のシチューを食べ始める。ルクスは同意を求めるようにアリアを見る。アリアはギリギリのとこで涙を堪え、ルクスのそばにしゃがみ目線を合わせ諭す。


「あのね、ルクス君。ここはルクス君がいた場所と違うの。ここではリサさんの言う通りみんなで同じテーブルについて同じ物を食べるんだよ」

「誰に怒られるの?ここにそんな人いないよ?」


ルルカも賛同し他のメンバーを頷く。ルクスが席に座ると、アリアがさりげなく距離を詰めた。何かあれば庇えるそんな位置取りだ。ルクスは恐る恐る皆の反応を見ながらシチューを1口2口と口にする。すると皆を見て、


「美味しい。美味しいです!味見以外で初めて食べました!ありがとうございます!」


ルクス本人は喜んでいるが、皆の表情は固い。今日までまともな料理を、口にした事がないと言っているのだ。アリアは笑顔を保てなくなるがルクスに見られないよう、ルクスを背中から抱きしめて「良かったね」と呟く。


「…明日から朝昼晩きっちり食べさせてやるから、覚悟しなさい下僕」

「え…朝と昼も食事して良かったんですか⁉︎」


ルクスはまるで神に出会ったかのように、赤髪の『聖女』フレアを見る。ギルドメンバー達は目配せをして、ルクスの食事を必ず見張ることを誓い合った。


その日全ての業務を終えたルクスが、自室に戻る。任務は進行する所か、キスしてもらう方法の目星も無くなった最悪の状況だった。今日は報告用にメモ出来ることは無い。


しかし何故かみんなで囲う食卓が頭を何度もよぎり、ルクスの心に謎の充足感が広がる。ルクスはまだこの心の名前を知らない。


「おやすみなさい」


誰に聞かせるでも無く眠りに落ちた。その様子を『追跡者』フィルが窓を覗ける近くの木の上から、紫眼を光らせ()()()見ていた。



いかがでしたか?(^ω^)

少しでも楽しんで頂けたなら幸いです。

評価が励みになりますので、評価して頂けたら嬉しいです。

2日に一度の更新を目指しています。またお会いしましょう

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