3話〜叔父〜
旧友からの宗教勧誘からしばらく経った。
両親の四十九日だ。
この前の1件で新興宗教への拒否反応はあるが、仏教などの昔からの宗教にはある程度信頼はある。
四十九日の法要は私と母親の弟だけでおこなわれた。
母親の弟、つまり叔父さんが四十九日の読経が始まると同時に耳栓をして踊り始めた。
ボソッと私は『また奇人か……』とつぶやいた。
四十九日がすべて終わり叔父がとんでもない発言をした。
「いやー、仏教の教えはダメですね。やはり、今の時代は……」
母親の弟と言っても母親の両親がハッスルして母親の20歳年下の弟だ。私同様働き盛りだ。と言っても私はフリーターではあるが……。
これは多分、無名な新興宗教の匂いがする。
「ここで提案なのですが、あなたの母、まぁ、俺から見たら姉さんの遺産を全額、教 太郎様にお預けして世界を救ってもらいましょう。手始めに……」
とんでもないことを叔父は提案してきた。
「あぁ、もちろん、こんな怪しい宗教の僧侶による読経を俺に聞かせた罰として、あなたには罰金刑は課されるでしょう。その半額はその遺産から出すのを認めます」
ダメだ、これはダメだな信者だ。目を覚ませることなどできない。私はこの間の旧友の宗教勧誘で1つ学んだ。胡散臭い現場では『言質』を撮っておくべきだ。もっとも有効的なのは録音よりも現場の声を聞かせるかもしれない。
「失礼、いったんトイレに行ってくるんでお茶でも飲んでてください」
トイレにはほんとに行ったし、用こそ足してないが流す音も出した。スマートフォンを取り出し1つの電話を繋げたままにした。
「亡くなったおふくろが聞いたらどう思う? 弟が自分の財産を宗教法人に全額遺贈すると聞いたら」
「甘いですねぇ、姉さんとその愚かな旦那を殺したのは俺なんですから。教様は全知全能の生きている神だ。いずれ日本国の大統領となるのだ。その方に死んだ後にも財産を遺贈してご奉公できると知れば姉さんも大喜びだ」
「……」
「沈黙は肯定とみなし、姉さんの遺産は教様に遺贈する。これで文句はないですね? まぁ、文句を言ったら言ったで教様の代理で俺が正義の鉄槌としてお前を教様のもとに行かせましょう」
ニマッと私はした。
「そうか、そうか、甥よ、お前も教様が正しいとわかってくれるか。信仰料は毎月10万円だ。もちろん、信仰者を増やせば特典として1人あたり1万円が返ってくる。あぁ、今月は9万円の赤字で済むのです、ありがとうございます、教様」
「叔父さん、叔父さんはもう私とは関係がない。血縁関係は残ってしまう。それだけが欠点だが、仕方ない。愚かな叔父さんよ、正義の鉄槌をくらうのは私ではない。叔父さんだ!」
「なに?」
私はスマートフォンを胸ポケットから取り出した。
「これ、なーんだ?」
「俗物が好んで使うというスマートフォンではないか! 俺は教様の教えを忠実に守るため解約した。ふはは、賊軍だ。宗教警察に連れて行かれるがいい」
「はぁ」
私は大きなため息をついた。パトカーの音が近づいてくる。そう、先ほど繋げた電話は親友でこの間の宗教勧誘の後、話をしたら『あたしは専業主婦だからいつでもそういう危険な目にあいそうになったら電話をつなげて、それで判断して警察にあたしが連絡するから』と助けてくれる宣言をした。
インターホンがピンポーンと鳴り来客を知らせた。
「はい、どうぞ、あがってください」
――容疑者、確認、車両にて事情をききます
叔父さんは警察に連れて行かれた。
しばらくしてスマートフォンを立ち上げてニュースアプリを立ち上げると『信者を用いて多額の……』と聞いた事のあるニュースがいくつもあった。
そのニュースを3件ほど読んだか、やはり、叔父さんきっかけで、事が明るみになり、関連施設や教祖の『教様』こと白輪が捜査され様々な罪で刑事告訴されていた。
――もう新興宗教とは関わりたくない
次回
4話〜親友〜




