2話〜旧友〜
葬儀も終えてアルバイトもこれまでどおりにしている。
「おふくろも親父もいないし、遺産が800万円入ってくると言っても永代供養とかその他諸々で数百万円くらい消えるし……」
いかに私が両親に甘えて生活していたかわかった。今の自身の貯蓄は1万円だ。この前の10万円も両親の葬儀費用などの支払いでからっぽだ。遺産や保険があるので完全なマイナスにはならない。
「……両親が他界したことが1番のマイナス……か」
かつて同世代が皆使っていたSNSを経由して中学の頃の同級生から連絡が来た。
『久しぶり、会わないか? お前と会わなくなって色々あったから話したくてさ』
かつての友人からの誘いだ。断る理由がない。むしろ、気分転換になりそうだ。
時間は経ち約束の日になった。
それまで綿密に細かすぎるほどに旧友とスケジュールをたてた。
旧友の指定した場所は地下鉄の有名なオフィス街の一等地の神社の並びのカフェだ。
「ここのカフェのコーヒーがうまいんだよなー」
「コーヒー苦手なんだよなぁ、特にホット」
カフェには紅茶やオレンジジュースなど様々なメニューがあった。本来、コーヒーを頼むべきだろうが、私はロイヤルミルクティーを注文した。そこで私はホットコーヒーを苦手な理由を話した。普通の人であれば、笑い転げる話だ。ただ、旧友は真剣に話を聞いてくれた。簡潔に言えば、幼少期に麵つゆと間違えてそうめんをアイスコーヒーで食べて激的に不味かったのだ。
「おっ、それなら試してほしい、商品があるんだ」
「商品?」
「そう、カフェインが少なめで甘さ重視のコーヒー豆で、色もかなりコーヒー感なくて……」
すごく真剣に丁寧に旧友は話してくれる。ただ、どこか何か違和感がする。
「そうかー。そんなに勧めてくれるなら1度試してみようかな? どこで買えるの?」
「それはここから少し歩いたところにあるビルの1階にあるんだ、今から行こう」
旧友に言われるがまま歩きビルについた。
「カフェが併設されているんだな」
「ここの直営だから先に味がどれが合うか試したりできるんだ」
豆の名前を見ても聞いたこともない。名前は『ハッピーサンダー』や『ラッキーマシーン』とふざけている感じがする。
カフェの店員に豆の種類を聞いて聞いたことのない豆で淹れてもらった。
旧友は中の店舗で雑貨を買うから後で合流するとカフェが入ってる階の上に行っている。
「試飲としてホットをオススメするよ」
私は旧友の勧め通りホットコーヒーと杏仁豆腐を頼んでカフェのイートインスペースで飲食していた。
ホットコーヒーの苦味と杏仁豆腐の独特の味がマッチして苦うまい。
「さて……」
旧友が上層階から降りて来てカフェで注文している。
「抹茶ラテを、あと……」
トッピングを頼んでいるようだ。私を見つけて抹茶ラテを持ってくる。チラッとカフェのポップアップを見れば『教祖直伝!!』と書いている。
「教祖……?」
「あぁ、ここはとある宗教法人が運営してる会社で……」
旧友はこの会社のことを説明してくれた。どうにも全て真実ならば内部事情に詳しすぎる。
「……ここの社員でここの製品を買わせるために……?」
「あぁ、いや、社員じゃないし、カフェ以外の製品買うには一定額以上のご祝儀が必要で……」
当然のように私も入会するだろうとでも言いたげに勧誘してきた。
「こういうの制限する法律あったような……」
「あぁ、それは特商法だね。でも、大丈夫。僕はキミを誘うときに『会社名』と『勧誘目的』だと伝えてるから」
この旧友が胡散臭すぎる。そもそも、そんなこと言われただろうか?
「それに僕たちはここでコーヒーを飲み、キミはさらに杏仁豆腐も食べるというご縁ができたんだ。逃げることはできない」
カフェのマスターがこちらに向かってきた。このマスターも先程の旧友同様に言葉巧みな手法で勧誘してくるのか……?
「お客様、会員ナンバーを見してください」
旧友の方に用事があったようだ。マスターによって旧友は裏に呼ばれていった。
この時、逃げることはできた。
それでも事の顛末を知りたくて残って杏仁豆腐をモグモグ食べていた。
「これ、毒とか洗脳薬とか入ってない……よな?」
1時間経っても戻ってこないのでカフェを後にした。
――訴えてやる!!
旧友がSNSのメッセージで送ってきた文言だ。
意味がわからない。訴えられることなんてしていない。それでも旧友は永遠とメッセージを送ってくる。要約すれば、『特商法のことを話したり、強引な勧誘や【縁】という言葉を施設内で出すのはご法度』らしく永久除名になったとのことだ。
「まぁ、あいつの自己責任だし、訴えられることもないからブロックするか」
次回
3話〜叔父〜




