入学式
「今日ここに25人の新入生を迎えられることを嬉しく思います。さて皆さん、今日から学校生活が始まります。ここ魔導師高専は魔法について学びます。学びの中ではもちろん困難な壁にぶつかり、挫折することもあるかと思います。そこで私が大切にして欲しいのは、「仲間」です。ここには25人の同級生がいます。悩んだり、辛い時は「仲間」を頼ってください。お互いを頼ることで信頼が生まれ、学校生活は更に良いものへと変わります。この2年間。信頼できる「仲間」を見つけて欲しいと思います。最後に、今日からの2年間、皆さんに将来を開く有意義な時間になることをお祈り申し上げるとともに、新たな環境で皆さんが楽しい学校生活が送れるよう、職員一同全力を尽くすつもりです。なので、今日からここにいる25人の新入生と6人の教師で楽しく有意義な学校生活を送りましょう。私からは以上です。」
「校長先生ありがとうございました。次に入学生代表挨拶です。」
縦5人横5人でパイプ椅子に腰を掛けていた。この25人の生徒の中から一人の生徒が立ち上がり、登壇した。
「今日、私達はこの学校に入学しました。私たちの学校生活は今、ここから始まります。この学校で沢山のことを知り、学んでいきたいと思います。また、ここまで私たちが来られたのは、家族や友人、恩人に支えられてきたからです。私達はまだ未熟です。心配や迷惑をかけることがあると思いますが、卒業まで見守ってください。入学生代表ハターシャ・グラハント。」
(…?)
フランはハターシャの顔を見ていた。
(何だろう…あの子、何かが…)
ハターシャは終始笑顔だった。ハターシャの挨拶は心のこもった素晴らしい物だったと誰もが思うだろう。しかし、フランはそこに少しの違和感を覚えた。
(ま、気のせいか。)
「ありがとうございました。続いて、担任の紹介に移ります。先生方、前へ。」
3人の教師が生徒25名の前に並んだ。
「皆さんから見て右から闇魔法専攻のグラス先生、氷・光・音魔法専攻のフィアス先生、魔術・魔導史専攻サタスガーラ先生です。他にも授業担任など沢山の先生がいますが、新入生の担任、副担任になった先生達を先に紹介しました。それでは、担任、一言どうぞ。」
一人の先生が一歩踏み出した。容姿を端的に言うと、『白髪イケメン』だ。髪は長く、ポニーテールの様にしている。
(あの髪型はあの人だから似合うんだろうな…)
「皆さんおはようございます。えー、まずは入学おめでとう。これから楽しい学校生活が始まります。これからの2年間、皆んなで明るい学年を作っていきましょう!」
その後も式典は順調に進み、クラスルームを行うため、教室に移動した。
「ねね、君名前は?」
「!?」
フランに隣の席の女子が話しかけてきた。急に話しかけられ、フランは少し驚いてしまった。
「フランです…あなたは?」
「チュトリア・ナリス。チュナって呼んで。」
「チュナ?」
「うん!よろしく、フラン!」
チュナはフランの手を握り、勢いよく上下に振った。おそらくチュナなりの握手だろう。
「よろしく…」
【チュトリア・ナリス】
魔術師の名家、ナリス家の三女。見た目はの茶髪の横ポニーで、瞳の色も茶色だ。外交的な性格で、一人の人を見つけると話しかける癖がある。
フランは周りを見渡した。25人に対して少し大きい教室。もう全員がそれぞれの場所でグループを作っている。チュナがいなかったら確実に孤立していたな。とフランは安堵のため息を漏らした。
「ね、君も一緒に話そうよ!」
チュナは誰かに声をかけた。
(誰だろう…)
チュナの目線を追うと、そこにはハターシャがいた。
(あ、生徒代表で挨拶してた子だ…)
ハターシャはチュナの呼びかけに気付き振り返った。ハターシャも突然話しかけられ、驚いた表情を浮かべながらこちらへ歩いてきた。
「何か用事?」
「ちょっと話したいなーって思って。」
「そ、私はハターシャ・グラハント。よろしく。」
【ハターシャ・グラハント】
はるか昔の古の時代に、初代勇者と共に初代魔王を倒し世界に平和をもたらした大魔法使いクロス・グラハントの子孫。代々強力な魔法と膨大な魔力量を持って子供が生まれる、稀有な一族の長女ハターシャは、金色に近い茶髪で、髪は結んでおらず、肩ぐらいまである。瞳は淡いオレンジ色だ。
「ハターシャか…じゃあ、『ハタ』か、『タシャ』のどっちかで呼んでいい?」
チュナは提案した。名前を短くして呼びやすくする。「あだ名」と呼ばれるやつだ。
「え…じゃあ『タシャ』で…」
「分かった!私はチュナ。よろしく、タシャ!」
フランの時同様、チュナはタシャの手を握り、激しく上下に振った。二人が仲良くなるのを見守るしか出来ないフランに気付き、チュナはフランとタシャの仲介に入った。
「ほら、フランも。」
「フランです…よろしく…」
「ハターシャ・グラハントです。よろしく。」
「タシャって呼んでいい?」
「ええ。どうぞ。」
二人の会話がある程度始まったところで、チュナが入ってきた。
「ねね、フランに一つ聞きたいことがあるんだけどさ」
「ん?なに?」
「フランって…何歳?」
(…うーん…何歳だろう、考えたことなかったな…)
「わかんない。ちょっと前まで牢獄で生きていたから…」
「え…なんかごめん。」
「ううん、大丈夫。気にしてないから。」
「めっちゃ気にしてない!?」
少し気まずくなった空気を変えるため、タシャが話題を変えた。
「フランは外見だけ見ると完全に少女よね…」
「タシャはお姉さんに見えるよ!」
「私は?」
「「チュナは…」」
「子供かな…」「子供じゃない?」
「フランには言われたくないわw」
そんな話をしていると、教室の扉から白髪イケメンこと、サタスガーラ先生が入ってきた。
「はい、じゃあ各々空いてる席に座って。」
立って雑談していた男子やタシャなどが席に座るのを確認したのち、サタスガーラ先生は話し始めた。
「早速だけど、明日から授業が始まります。細かい説明は明日の授業中に言われると思う。寮じゃない生徒は明日もしっかり登校するように。じゃ、前置きはこのくらいにして、帰りのHRを始めます。」
フラン初めての学校生活。生徒の友情と明かされる魔王の陰謀、そして、再び現れるクイルの面影。フランはこの魔導師高専で何を学び、何を知るのか。そして、自分は何者かを知ることはできるのか。「魔導師高専編」スタートです。
次回「寮生活」




