魔法界の女王(クイーン)
「ママ、久しぶり」
「あんたが帰ってきたってことは、また面倒ごと持ってきたわね…」
校長とティラは魔導師高専の校舎、校長室で対面した。
「実はさ、魔術を学ばせたい人がいるんだよね。」
ティラはフランのことを話した。魔術を学ぶに至った経緯を。
「なるほどね、だから校長である私の権限で入れて欲しいと。」
「そうゆうこと。」
校長は少しの間考え込んだ。
「うーん…そうねぇ…その子と会って話したい。連れてきてもらえない?才能があると判断したら入学を認めるわ。」
「…分かった。でもアルガ帝国まで行って往復するのは時間がかかるから…2、3日はかかると思う。」
「ええ。構わないわ。」
「じゃあ、失礼します。」
そう言ってティラは校長室を後にした。
「本当に大丈夫だよね…」
校長室の扉の前でフランはティラに聞いた。
「うん。少し話すだけだから、そんな緊張しなくていいよ。」
「ふぅ…」
フランは深呼吸し、拳を少し握り、扉を2回ノックした。
「どうぞ。」
扉の向こうから声が聞こえる。若い。若いがおばあちゃんの様な優しく包み込んでくれる様な優しい声。そんな声に呼ばれ、フランは扉を開けた。
「失礼します。」
お辞儀をして室内に入った。顔を上げた先には小豆色の髪をしたティラと同い年くらいの女性がいた。
「!?」
(あれがティラのお母さん!?全然若く見える…)
「どうぞ、前へ。」
そんなことを考えていると、校長は前へ進む様促した。右手でジェスチャーしながら、顔色一つ変えずに。
「?」
フランは何も考えずに一歩踏み出した。踏み出した右足が地面についた瞬間、足元から魔法を感じ、フランは咄嗟に防御魔法を全面に展開した。次の瞬間、
バンッ
激しい爆発音と共に、地面が爆発した。フランは今になって気付いた。
「魔法陣…」
床には薄く魔法陣が書かれていた。どうやら校長に試されている様だ。
「これは、どうゆうことですか?」
「ちょっとした試験よ。今から私は貴方に質問しながら攻撃魔法を放ちます。貴方は全ての攻撃を防ぎながら質問に答えなさい。全て答え切れたら入学を認めます。」
フランは杖を召喚し、両手で強く握った。
「分かりました。受けて立ちます!」
「よろしい。では一問目。『貴方は何故本校へ?』」
校長は質問しながら30㎝ほどの小さな杖を取り出し、無詠唱で攻撃魔法を放った。数は五つ。ボール型のこの攻撃魔法は相手を追尾し、何かに衝突するまで止まらない性質を持っている。
「…っ、」
フランは防御魔法を前方に展開し、攻撃を防ぎながら答えた。
「私は、『白き旅団』という冒険者グループで冒険者をしていました。でも、冒険を続けるうちに、少しずつ自分の実力不足がわかってきて、みんなに追いつくためにこの学校に来ました。」
「…」
校長は驚いていた。目の前にいるのは明らかに少女。しかし、受け答えはしっかりしており、何より、防御魔法を展開しながらの思考だ。脳を並列に動かしている、または、防御魔法を無意識下でコントロールしている。どちらにしても彼女の年齢でやってのけるのは神業に等しい。そう、フランの技術は『白き旅団』の冒険を通して、一流の魔法使いに匹敵するほどに成長していた。
「なるほど。では次に、『この学校では何をしたいですか?』」
校長は更に攻撃の数を増やした。数は十二。先ほどと同様フランは防御魔法を前方に展開し、返答を考えていた。
「私は一流の魔法使いになる為にこの学校に来ました。なので私はこの学校で魔術を学びたいと…」
放たれた十二個の攻撃魔法。十一個の攻撃魔法に身を潜め、一個の攻撃魔法が防御魔法を展開していない背後へ回り込んでいた。
「!」
フランは咄嗟に背後にも防御魔法を展開し、攻撃を防いだ。
「…思います。」
校長は深く頷き、次の質問を問いかけた。
「最後の質問です。『貴方の得意な魔法属性は何ですか?』」
攻撃魔法の数が更に増えた。数は二十。だが、数が増えても防御すればいい。フランは再度防御魔法を前方に展開した。
「あ、そうそう言い忘れてた、その魔法、防御魔法を貫通するから気を付けてね。」
「!?」
校長の言葉を聞いた時にはもう遅かった。防御魔法をまるで何もないかの様に通り抜け、フランに迫っていた。
「クッ、」
フランはギリギリで転がり、何とか攻撃を回避した。しかし、攻撃魔法は方向を変え、フランを追尾する。
(どうすれば…防御で防げない…攻撃を当てて相殺する?いや、早すぎて当てられない…)
フランは室内を低空飛行しながら考えた。フランを追いかけ宙を飛び回る攻撃魔法。フランはあることを閃いた。
(あれならいける!)
「【サガーズフロート】!」
【サガーズフロート】
《サガーズ》というティラの使っていた雷の魔法を真似して、魔法をまだ上手く扱えないフランが使用した結果、氷のマントを作り出す能力になった物。まだイメージが詳しく確立してないので冷たくはない。が、校長の攻撃魔法を誘爆させるには十分だろう。
(ほう…これはなかなか…)
フランの作り出した氷のマントに触れた瞬間、重なった三個の攻撃魔法が爆発した。そのまま流れる様に次々と誘爆させていき、二十個全てを防ぎ切ってから言った。
「私の得意な魔法属性は『氷』です。」
「分かりました。質問は以上です。それでは来週の月曜。この校舎で会いましょう。」
「え…それって…」
「合格おめでとうフランさん。」
「!!ありがとうございます!」
校長は優しく微笑み、退出を促した。
「失礼します!」
扉を開けて外へ出ると、ティラが待っていた。
「どうだった?」
「合格だった!」
ティラの質問にフランは無邪気な笑みを浮かべ答えた。
「よかったね。あ、じゃあ合格したってシェンラー達に手紙書きに行こうか。」
「うん!」
フランとティラは魔導師高専を後にした。
「サタスガーラ主任〜。フランについてどう思う〜?」
校長は机に顔をつけてだらけた様子で隣に資料を運んできたサタスガーラ先生に聞いた。
「どう思うって…年齢についてですか?」
「そう〜明らかに高校生じゃないよね〜。また【魔導師連盟】に怒られちゃうかな〜。」
【魔導師連盟】
魔術師、魔法使い、魔剣士、その全ての魔法を扱う者を取り締まる組織。
「どうでしょうね。それにしてもおかしな話ですよね。魔法界の頂点【魔法界の女王】は校長先生なのに、校長先生より上がいるなんて。」
【魔法界の女王】
校長こと、サラ・アナラスの表舞台に立っていた前盛期についた異名。圧倒的な強さで、人間界の魔導師の頂点に君臨していた。しかし、それは100年近く前の話であり、今は表舞台から姿を消し、魔導師高専で校長をしている。
「前代未聞よ。あの若さであそこまで魔法を極めている人間は。」
「今後、どう成長するか、楽しみですね。」
「ええ、そうね。」
「では、失礼しますね。」
そう言ってサタスガーラ先生は校長室を後にした。
「くぅ〜」
校長は背伸びをして気合を入れ直し、机に置かれた書類に手を伸ばした。
「本当は年齢以外にもフランの問題点はあるんだけどね…」
校長は初めてフランと対峙し、フランが何者なのかを一目で見抜いていた。しかし、校長は考えた。フランの正体はおそらく隠している。いや、本人も知らない様だ。ならば、自分で真実に辿り着くまで黙っておくほうが良いだろう、と。
校長先生は実は転生者です。転生した際、転生特典で『不老』のスキルを得ており、いつから生きてるかは誰も知りません。が、100年以上生きているのは確かです。
次回【入学式】




