戦力不足
「【乱れ咲:乱喰】」
アルガ平原にて、シェンラー率いる「白き旅団」は魔物達と交戦中だった。
「【サガーズ】」
フランの放つ稲妻が、周りの魔物達に直撃した。魔物の数は10体。どの魔物もかなり強い。想像以上の強敵を前に、シェンラー達は苦戦を強いられていた。
「お、フラン使えるようになったんだ《サガーズ》。」
「はい、いつの間にか使えるようになってました!」
初めは氷を宿していた魔法が、具体的なイメージを元に正確な魔法へと進化していた。
「【霊闇撃】!」
「【乱れ回雲:広】」
ティラとフランがそんな会話をしている間にも、戦闘は続いていた。
「よし、フラン。アレをやってみようか。」
「アレ使ってもいいの?」
「うん。そのために覚えたんだから。」
「じゃあ、いきます!」
フランはゆっくり目を閉じ、深い深呼吸ののち、詠唱した。
「一雫の水よ、温度を消し去り、我の元へ氷となりて現れん《アイスショット》」
フランが作り出したのは三角錐の形をした氷だった。その氷はフランの魔力を吸収し、凄まじい速度で放たれた。
「ぐぎゃぁ!」
フランにより放たれた一撃は、魔物の群れの一体に直撃した。魔法が触れた部分は削り取られ、致命傷を負わせた。フラン自身かなりの手応えを感じて、自信満々でティラの方を見たが…
「うん…魔法が形としては成り立ってきたけど…まだ、出力も弱く、発動までの時間も長い。まだ練習が必要だね。」
「そうですよね…」
《アイスショット》についてティラとフランが改善点を話し合う中、群れの中にいたゴブリンアーチャーがフランの背後に回り込んでいた。
「危ない!」
ティラが声をあげると同時にクラストの盾がゴブリンアーチャーの攻撃を防いだ。
「お前達への攻撃は俺が受け負う。」
「ありがとうクラスト。」
フランは再度集中し、詠唱を始めた。
「一雫の水よ、温度を消し去り、我の元へ氷となりて現れん《アイスショット》」
今度はゴブリンアーチャー目掛けて放った。しかし、ゴブリンアーチャーは咄嗟に転がり、ギリギリで回避した。
「避けられた…!」
【詠唱のメリット:デメリット】
①メリット
•普通の魔法と比べ威力が上がる。
•正確にイメージすることができる。
•無詠唱と比べ、魔力の消費量が比較的少ない。
②デメリット
•詠唱に時間がかかる。
この世界では魔法は強力だが、やはり短い詠唱で放てる剣技の方が圧倒的に攻撃速度が速く、魔法使いや魔術師よりも剣士の方が圧倒的に強い。そのため、盾役が攻撃を防ぎ、その後ろで詠唱する。これが基本の魔法使いの戦い方だ。
「【乱れ咲:風刀】」
「【壊】!」
シェンラー、キューラは剣技を持ち入りながらなんとか8体の魔物を相手に持ち堪えてきた。しかし…
「くっ…」
一瞬の隙をつかれ、シェンラーは一撃を受けてしまった。そこまで深くないが、左手が上がらなくなっていた。
「シェンラー!」
慌てて助けに入ろうとしたキューラに、魔物の攻撃が叩き込まれた。
「ぐぁっ…」
キューラはその場に倒れ込み、シェンラーは左腕を押さえながら立ち上がった。
「シェンラー、分かった?私たちじゃ魔王どころか魔物の群れさえ倒せない。」
シェンラーの前にティラが舞い降りた。ティラは現実を伝えた。
「ああ。俺たちは…弱すぎる…」
「【回復】」
「!?」
ティラはキューラとシェンラーに回復魔法をかけた。致命傷ではないため、詠唱を省略しても効果は十分にあるだろう。
「二人はそのまま休んでて。あとは私がやるから。」
そう言ってティラは手を魔物の群れに向けてかざした。
「《罠》:『凍結』」
ティラが唱えると、魔物8体それぞれの足元に魔法陣が生成された。
「《発動》」
ティラの言葉と同時に魔法陣の魔法は放たれ、魔物の群れ全てが凍結された。
「流石だな…ティラ。」
「当たり前でしょ。」
後方でゴブリンアーチャーを倒し終わったフランがティラに問いかけた。
「今のって、何て言う魔法?」
「《罠》のこと?うーん、これはね…【魔法術式】なんだよね…。」
「【魔法術式】?」
「うん。魔法よりも比較的簡単に扱えて、魔力効率が魔法の比にならないくらい良いのがこの【魔法術式】略して【魔術】だ。」
「それって私にもできる?」
「うーんとね…魔術は基礎がいるから魔導師高専に通わないといけないけど…」
「そうなんだ…」
「通ってみるのもありかもね。」
「トロス、大丈夫か?」
クラストが声をかけた。
「ああ。大丈夫だ。それよりシェンラーは?」
「あいつは今は寝てる。闘気を使い過ぎた。」
「あいつ、結構強くなってたのにな…まだまだ、A級冒険者にすら程遠いとは…」
「これからどうすると思う?」
「シェンラーのことだ。みんなで鍛えながら旅をするとか言いそうだな。」
「かもな。」
「お疲れ様でした。こちら報酬になります。」
「ありがとう。」
ティラはギルドの受付で報酬を受け取った。
「シェンラーは?」
「宿に着いた途端に寝ちゃった。」
「闘気の使い過ぎだね…動き自体は悪くなかったけど。」
ティラは戦闘を思い出しながら言った。
「シェンラー、落ち込んでたね。」
「まだまだ伸び代がある。そう前向きに捉えるさ。あいつなら。」
シェンラーが眠る部屋の前で、フラン、ティラ、キューラ、クラストの四人は話していた。
ー翌日ー
「みんな、聞いて欲しいことがある。」
朝、シェンラーにより、宿の一階に『白き旅団』が集められた。睡眠を得て、シェンラーの闘気はある程度回復したようだ。
「『白き旅団』の活動を一時中断しようと思う。」
「?」
「前から考えてたんだ。ティラとクラスト以外の三人は冒険者としての戦闘スキルが低い。だから俺は、アルガ帝国騎士団で剣技を学ぼうと思う。」
「なるほどね…今のまま旅を続けても危険なだけだし…良いと思うよ。」
ティラが賛同した。
「そう言うことなら俺も剣技を習いに行くよ。」
続いてキューラも賛同した。
「じゃあ俺は、故郷に帰るよ。」
クラストも賛同した。
「私もいいとは思うけど…」
フランは悩んでいた。フラン自身、剣技とか闘気とかはよく分かっていない。
「じゃあさ、シェンラーとトロスが剣技を習っている間、フランは魔導師高専に通ってみたら?」
「え?入れるの?」
「うん。多分入れると思う。フランが入りたいなら入れさせてもらうけど…」
「…入りたい!魔術とかについて学びたい!」
「分かった。じゃあ来週ぐらいからになると思うから準備しといてね。」
「え、来週…」
こうして『白き旅団』は、クラストは帰郷、シェンラー、キューラはアルガ帝国騎士団で剣技を習いに、フランは魔導師高専に通うことになった。
圧倒的に剣士が優位の世界で近距離戦で覚醒後のユラと渡り合ったクイルは、まさに天才だった。
次章【魔導師高専編】
次回【魔法界の女王】




