白銀の怪物(ニ)
「!!」
目の前の守護者を消し去り、他の二体の守護者を見た。何とか持ち堪えているが、そう長くはなさそうだ。
「accelerer 」
ユラは目に見えぬ早さまで加速し、マルシたちの元へ向かった。
「負傷したものは後退しろ!回復魔法を施し前戦に戻れ!命を第一に考えろ!」
マルシの号令が辺りに響いた。
「了解!」
周りにいたものたちもマルシの号令に従いながら、守護者との戦闘を続けていた。
(何だ?あの黒い姿は。装甲が剥がれたのはいいが、さっきまでよりも速くなってる。このままの状態が続くのはまずいな。)
守護者が一人のフロルゴ団員目掛けて攻撃を放った。強烈な右ストレート。フロルゴ団員程度の実力じゃ避けきれない。
「《舞鞭》」
寸前のところでマルシが攻撃の軌道をずらし、ギリギリ避けた。
「劣勢…だな。」
守護者をどう倒すか頭を抱えていたマルシ達フロルゴ団の元へ閃光の如くユラが現れた。
「ユラ…?」
「下がってて。みんな私が倒すから。」
そう言って、ユラは深く踏み込んだ。
「 intercepter」
踏み込むと同時に身体中の闘気を練り上げ、極限まで高めた闘気を一気に解放した。一振りで一体、方向をかけ突き技で一体守護者を仕留めた。
「強…」
ユラはそのまま振り返ることなくバルトルの方へ向かっていった。
「accelerer」
ユラは再度剣技を唱えた。
「『神の加護を信ずる我に光の導きがあらんことを…』 死ね、バルトル。《光輝貫撃》」
(まずい間に合わない!)
バルトル目掛けて放たれた魔法。一目見ればわかる。受ければ即死すると。しかし、今のユラは師匠を救うことしか考えていなかった。
「《混》!」
(あれは…ユラか?どうやら力に目覚めた様だな…ん?あの手の形…《混》か!バカか?来たらダメだ。お前まで巻き込まれてしまう…)
瞬時に頭をフル回転させ、バルトルは考えた。そして気付いた。ユラに何を言っても止まらないことに。そこでバルトルは、クイルに言葉を残すことにした。
「クイル、この勝負、俺の、俺たちの勝ちだ。」
「負け犬の遠吠えか?」
「今にわかるさ。」
「《混》!」
辺り一面が光に包まれた。その中から一振りの剣がクイル目掛けて振り下ろされた。
「危ないな…」
咄嗟に張った防御魔法でユラの攻撃は防がれた。しかし、ユラは止まるどころか、更に攻撃を重ねた。
「intercepter」
「くっ、」
防御魔法を多重に複数展開し、クイルはユラの四連続攻撃を全て防いだ。連続攻撃が終わり、攻撃が止んだ一瞬の隙を見計らって、クイルは魔法を唱えた。
「《 》」
クイルは詠唱することなく魔法を放った。威力は落ちるが、発動速度が速く、熟練者でも使えるものが少ない、無詠唱魔法と呼ばれるものだ。ユラを囲む様に六つの直径1m程の炎の玉が生成された。
「流るる水よ大河となれ《ウォーターボール》」
そこに追い打ちをかける様に炎の玉同様六つの水の玉が生成された。
「converge」
ユラ目掛けて全ての魔法が放たれた。360°全方向からの魔法攻撃。初見では対応不可能とされるクイルのとっておきの隠し玉だ。
「détruire」
しかし、ユラが剣技を唱えた途端、辺りの魔法は一瞬で消え去った。
(魔法が離散した…?いや、魔素そのものが消えた…)
「消滅攻撃、か。」
クイルが冷静に状況を分析している中、ユラは一呼吸おき、再度剣技を放った。
「accelerer」
ユラは即座にクイルとの距離を詰めた。しかし、クイルも負けず劣らず速度を上げ、距離を取る。クイルは防御魔法を全面に展開しながらユラに正面を向け、後ろ向きに飛行していた。一進一退の攻防が続く中、クイルはあることに気付いた。
「あと多くて6回…だろ?」
「…」
クイルの言葉にユラの攻撃の手が止まった。
「闘気の残り具合を考えて、あと6回しか剣技を発動できない。違うか?」
「…当たり。」
「お前のその姿【超越者】だろ?その姿は確かに強いが闘気の減りが尋常じゃないはずた。何故勝負を決めに来ない?まだ本気じゃないんだろ?」
【超越者】
人類の更に一歩先を歩く神に近い存在。その力は圧倒的で、対面したものはほぼ確定で敗北する。
超越者には二つの特徴がある。
【その①】
髪が白銀に染まっていること。
【その②】
異次元の強さを有していること。
現在超越者は二名のみ観測されていた。一人はアルガ帝国初代王。もう一人は、フランを牢獄から助け出したエルフ、アタラ•クライシスの二名だけである。そして、今日、この瞬間にユラが仲間入りしたのである。
「…私はあなたを殺したくない。あなたに対して深い情があるわけではないけれど、少なくとも今まで一緒に戦ってきた仲間ではあると思っている。」
「つまり、情けをかけていると?」
「逆よ。私があなたを殺す覚悟を決めるための時間を作っているだけ。私の覚悟が決まれば、すぐに終わらせる。」
「ふっ、殺すまでの時間が欲しかったわけか。いやー良かったよ。まだ人間らしい感情は残っていたんだな。てっきりその力に飲まれたのかと思ったよ。」
「でも安心して。もう覚悟は決まったから。」
「じゃあ、続きを始めようか。」
ユラは深く息を吸い込み、全身の闘気を足と腕の二点に集中させ、一気に放つ準備をした。
「attaquer」
ユラが剣技を放つと同時にクイルは…
「神の加護を信ずる我に、光の導きがあらんことを【光輝貫撃】」
右手に持った杖で詠唱しながら魔法を作り、左手では魔法陣を通し無詠唱魔法を発動した。
(【氷槍】)
前回のエピソード、少し内容に変更が入ってます。
次回【魔法界の若き天才:クイル•ミッリューテ】




