守護者
バルトル達に剣を向けられ、逃げ道を絶たれたクイルは、バルトルに向けて不適な笑みを浮かべた。
「地を守りし我らの主よ、我の名の下に来れ守護者!」
「!?」
クイルの周囲から突如として突風が吹き荒れた。周りにいた者たちは吹き飛ばされ、起き上がりながらソレが君臨する様を見届けた。
「守護者…それも三体、か…。」
バルトルは冷静に状況を考えた。今、クイルが召喚したのは《守護者》と呼ばれる魔法生物で、《守護者》は召喚者によって多少変化するが、自ら攻撃しない代わりに高い防御力と、A級冒険者程度の実力を持っている。体は甲殻類の様な硬い装甲で覆われており、ほとんどの物理攻撃を防ぐことができる。その《守護者》が3体も召喚された。2体はマルシ率いる脱獄囚改め、新生フロルゴ団で相手をするとしても、どうしても1体余ってしまう。新生フロルゴ団に3体とも任せたいところだが、マルシ以外ほぼC級程度の実力しかない。戦力的に考えると2体任せるのが最適だった。
(あいつは間に合うかどうか…。)
バルトルはマルシに向かって言った。
「マルシ、そっちの守護者2体を足止めしてくれないか。俺はこの1体を倒してクイルを追いかける。」
「分かった。こっちは自力で何とかする。」
マルシの返答を聞き、バルトルは振り返り目の前の《守護者》を見た。
(硬そうな装甲だな…多分俺の力じゃ簡単には割れないな。時間は掛かるがダメージを蓄積させて壊すしか無いか。守護者を無視して先に行きたいけど…この守護者が他の守護者と合流したら面倒なことになるからな…。ここでやるしか無いか。)
バルトルがそんなことを考えていると、協会から二人出て来た。
「!…悪いな、呼び出して。」
バルトルは二人に向かって言った。
「急に師匠がテレパシー飛ばしてくるからびっくりしたじゃ無いですか。」
「すまんすまん。緊急だったんでな。それより、儀式は順調か?」
「はい。今のところは。」
協会から姿を現したのはユラとキューラだった。
「ユラ、キューラ、二人でこの守護者を倒してくれないか?」
「…師匠、一人でクイルを止められるんですか?クイルは盟約で能力が向上してるんでしょ?師匠一人は流石にきついんじゃ…」
「これ以上人員は割けない。なるべく早く決着をつけて召喚を解いてみせる。」
「…わかりました。ここは私たちに任せて先に行ってください。こちらも守護者を倒したら加勢に向かいます。」
「じゃあ、頼んだぞ。」
バルトルは守護者の陰に紛れ戦場から姿を消したクイルを追いかけた。その姿を見送った二人は、目の前の守護者をみた。
「…師匠には任せてって言ったけど…力の差は歴然。最悪の場合全滅するかも。」
ユラの言葉を聞き、キューラは問いた。
「ユラ、お前の剣は守護者の装甲を貫けるか?」
「…多分、《連打》を重ねていったらいつかはいけると思うけど…」
【スキル:連打】
ユラが所持する固有スキルで、能力は攻撃を与え続けるたびに威力と速度が増す。限界値は無く、理論上は無限に近い力を生み出すことができる。
「分かった。あの装甲を破れるのは多分ユラしかいない。俺はサポートに専念する。ユラはひたすら攻撃を加え続けろ。」
「分かった。任せて!」
ユラは剣に魔力を込め、剣技を唱えた。
「炎竜」
ユラは守護者に重い一撃を叩き込んだ。しかし、守護者の装甲には傷一つ付かなかった。
「水月」
「電円」
続けて2回連続の攻撃。《連打》のスキルが溜まり、少しずつ火力と速度が上がり始めた。が…
「装甲が硬すぎる…!」
その時、守護者が反撃に出た。
ドンッ
重く鈍い衝突音が響き渡った。守護者は武器は持っておらず、基本は“殴る”しかしてこない。だが、一撃は重く、最悪一撃で致命傷になり得る。その攻撃をユラは正面から受けた。
「グッ…」
(危なかった…咄嗟に防がなかったら確実に意識飛ばされてた…。)
「大丈夫か!?ユラ!」
キューラが走って来た。
「えぇ、大丈夫。何とかね。」
もう一度気合いを入れ直し、守護者に立ち向かおうとすると、キューラが自身の剣を差し出した。
「雷属性の付呪の魔法を加えている。少しだが無いよりはマシだと思う。」
「うん、ありがとう。」
ユラは剣を受け取り、再度守護者へ攻撃を仕掛けた。
「炎竜《電》!」
雷と炎二つの属性を宿した一撃を叩き込んだが装甲はまだ硬い。だが、ユラは気にすることなく、さらに速度を上げ、剣技を続けて叩き込んだ。
「水月《雷》!」
「雷鳴豪円!」
「風雷万華!」
「土楽《雷》」
【雷鳴豪円•風雷万華】
それぞれが電円と風刃の雷を宿し変化した剣技。大元は変わっていない。
再び守護者は反撃に出た。先ほどと同様に繰り出される強力な一撃。しかし、ユラは《連打》のスキルで加速しており、難なく攻撃を避け、カウンターを叩き込んだ。
「炎竜!」
《連打》で威力の増したユラの一撃でも、まだ、守護者の装甲に傷を与えることはできなかった。
次回「守護者」




