新生フロルゴ団
数日前〜
「師匠、手合わせしてもらえませんか?」
バルトル邸にて、書斎で一人資料に目を通していたバルトルの元に一人の少女がやって来た。
「ユラ、ノックぐらいはしてくれ。」
「はい!分かりました。で、師匠!今日こそ手合わせしてください!」
「何でそんな手合わせしたがるんだ?部下がいるだろ?」
「だって…相手にならないんだもん…」
「…まぁ、お前もこの前の遠征で活躍したみたいだし、ちょっとだけなら付き合ってやるよ。」
「やったーっ!師匠との手合わせだぁー!」
彼女はシェンラーの姉、名はユラ。フロルゴ団の計画に巻き込まれ、家族を失い、途方に暮れていたところをバルトルに救われ、アルガ帝国の騎士になることを条件にバルトルの養子となった。今はアルガ帝国軍の1〜5部隊ではない、新しく出来た精鋭部隊に所属している。未完成ながらも5つの剣技を使い、アルガ帝国内で5本の指に入る実力となった。
「ここら辺でいいな。」
「はい!」
二人がやって来たのはバルトル邸から少し離れた場所にある広場だった。ここはアルガ帝国の中でもかなりの辺境で、空き地が多い。ここでは 多少暴れても問題ない。バルトルは剣を抜き、構えた。
「さぁ、来い!」
バルトルの言葉聞き、ユラは戦闘態勢に入った。剣に少量の魔力を込め、剣技を放つための準備を整えた。
「いきます!」
ユラは勢いよき地面を蹴り、突進しているかの様な姿勢でバルトルとの距離を詰め、剣技を放った。
「《炎竜》」
バルトルは剣でユラの攻撃を防ぎ、バックステップで距離をとった。すると、ユラは剣に強く力を込め、勢いよく剣を振り下ろし、追撃した。
「《水月》」
【剣技:水月の基本の使い方】
基本は相手の攻撃を受け流すために使われる。《炎竜》は後隙が大きく、カウンターを防ぐために作られた。しかし、威力もある程度はあるため、攻撃手段として使うこともできる。
バルトルはユラの剣技を完璧に見切り、受け流した。
「剣技の応用もできるようになったんだな。」
「はい!めっちゃ練習しました。」
【剣技の応用】
初代アルガ帝国王が編み出した最強の戦闘スタイル。対人戦ではほぼ負けなしで、ある程度の魔物とも戦える、アルガ帝国の歴史上最も強い人物の技である。そんな彼の戦い方を真似て作られたのが、《五晩朝華》と呼ばれる、《炎竜》《水月》《電円》《風刃》《土楽》からなる剣技の合技である。だが、使えるものは少なく、大体の者は基本を元に形を変えて使用することが多い。一番多い使われた方は、槍の一突きに《風刃》を乗せて、攻撃の範囲を広くする使い方だ。
「《電円》」
ユラ電気属性の剣を振り下ろした。すると、今までユラの攻撃を受け流してきたバルトルは剣技を放ち、ユラの攻撃を受け止めた。
「《電円》」
(早い…剣技を使うまでの溜めが全くなかった。それに、剣に魔力を込める瞬間が見えなかった…。)
【剣技とは】
剣技とは、魔法で例えると魔法の名前のような物なのだ。剣技は魔法とは違い、三種類存在する。
【剣技の種類:一つ目】
闘気のみを使った剣技。物理攻撃しかできない代わりに、圧倒的に火力が高い。
【剣技の種類:二つ目】
魔力のみを使った剣技。魔法に近い技が使えて、使いこなせば魔法使いと大差ない戦い方が可能になる。
【剣技の種類:三つ目】
魔力と闘気の両方を使った剣技。1番の特徴は、技の種類が豊富で、多種多様な戦況に適応することができるところだ。《五晩朝華》もこの中に入る。
「《風刃》」
「!?」
剣技を放ったのはバルトルだった。
(剣技を使いながら違う剣技の同時発動!?)
バルトルは《電円》を使いながら《風刃》を放った。
「ありえない…」
《風刃》を寸前で避けたユラは距離をとり言った。
「あり得ない話では無い。剣技を無意識に発動するんだ。そうすれば二つの剣技の同時発動も可能になる。」
【イメージを具現化する力】
この世界では魔法•剣技の両方とも共通してイメージで創られている。イメージできない魔法は実行できないし、イメージできない剣技も実行できない。今の場合は、《五晩朝華》に含まれる五つの剣技はどれも繊細な魔力調整が必要となるため、一つの剣技を放つのにもかなりの集中力がいる。そんな剣技を二つ同時に放つイメージが出来るわけがない。しかし、バルトルは《電円》を無意識下で使用することにより、《風刃》に意識を回すことが可能になり、二つの剣技の同時発動を成し遂げた。
(理屈は分かるし言ってることもわかるんだけど…)
ユラは心の中で思った。
(無意識で剣技使えるわけないだろ!)
ユラは目の前のバルトルを凝視した。よく見ると細身のように見えてしっかりと筋肉がついており、体を流れる闘気や魔力は常人とはかけ離れた滑らかな流れをしていた。
「やっぱ師匠って…化け物だわ。」
ユラは上には上がいることを体感すると同時に、自分にも伸び代があるのでは無いかと思い、笑みを浮かべた。
「どうする?もう終わるか?」
バルトルの問いかけにユラは力強く答えた。
「まだまだこれからでしょ!」
〜現在
協会で行われている儀式。その内容は、シェンラーの魔力をシェンラー自身の支配下にするというものである。ティラを含む6人の聖職者たちによって張られた魔導障壁の中でシェンラーは…
「獣王ギラドア…?まさか、勇者ゴーリャのパーティーを壊滅寸前まで追い込んだと言われている?」
「ああ。あと少しだったんだがな。」
「父親ってどう言うこと?」
「…お前の力を解き放つにはやはり話すべきか…よし、分かった。教えよう、お前は何者かを。」
協会の外にて…
クイルは一人協会の向かいの建物の屋根に登り、協会を眺めていた。
「どうしたんだ?そんな怖い顔して。」
クイルは突然誰もいない空間に問いかけた。すると、その問いに答えるように声が聞こえ、バルトルが姿を現した。
「お前こそ、普段制御している魔力を解放して、何をするつもりだ?」
お互い目を合わせるだけだ。まだ、剣は抜いていない。が、いつ、どちらが攻撃を仕掛けてもおかしく無い緊迫した空気が漂っていた。
「国王に支配の魔法がかけられていた。魔力の残影からしてクイル、お前だということは分かっている。それと、俺の書斎から魔法陣を取り出したな?何をするつもりだ。」
「…まぁ、せっかくだから教えてやるよ。簡潔に言えば、国王に支配の魔法をかけたのは俺の盟約を解除するため。お前の書斎から魔法陣を盗ったのは俺がこの国を支配するために必要だったからだ。」
「魔法陣だけでも返せ。」
「ふっ…何か勘違いしてるみたいだから言っとくけど、この魔法陣は元々、俺たち宮廷魔法使いが代々受け継いできた物だ。たまたま部下に幻惑魔法をかけて俺と入れ替わっていた時にマラン一向に襲撃され、盗まれた。つまりだ。これは俺のものなんだよ。」
「…なぁ、クイル…。俺たち、闘うことでしかお互いの意見を通せないのか?」
「ああ。どちらかが力尽きるまで自らの正義をぶつけ続ける。それがアルガ帝国軍だろ。」
「分かった。…最後の警告だ!クイル、お前が今しているのは国家への反逆…帝国軍を敵に回すことになる。」
「あぁ、構わない。」
「…クイルを国家反逆の罪で罪人とする!配置につけ!」
「配置?」
「今だ!」
バルトルの声と同時に、物陰から黒い人影が飛び出した。その影は紐状の何かをクイルに向けて飛ばしてきた。クイルは咄嗟に腕で防ごうとしたが、その紐のようなものはクイルの腕に巻き付いた。
「何だこれ…鞭…か?」
クイルが呟いた疑問にバルトルが答えた。
「正解」
続けて鞭の放たれた方から声がした。
「《粘着鞭》」
鞭が勢いよく引っ張られ、屋根の上にいたクイルは地面に叩き落とされた。
「ぐっ、」
「総員行動開始!」
「!!」
バルトルの掛け声と共に、20人程度が一斉に動き出した。
「潜んでいるのは分かっていたが…まさか、こんなにいたとはな…。」
「ずっとお前は宮廷魔法使いという肩書きに守られ、犯してきた罪を問われることはなかった。が、それも今日で終わりだ。ここにいる全員でお前を倒す!」
バルトル達に剣を向けられ、逃げ道を絶たれたクイルは、バルトルに向けて不適な笑みを浮かべた。
次回「守護者」




